ワイルドベア一頭目
駄目だ。
いい戦略が思い浮かばない。
元々三人のパーティーで、三人だけで討伐できたモンスターだ。
戦闘能力が高くない俺が参加したところで、大した違いがない。
自分で言っていて、落ち込む……。
そういえば、前のパーティーでは安全に討伐できることを優先していた。ガルドたちが全力を出す機会を潰していたかもと反省したんだよな。
二頭いるなら、一頭目は今まで通り三人で狩ってもらおうか。
糞の跡と抜け毛の状態から、待ち伏せの場所を狩人に決めてもらった。
半日ほど経った頃、鳥たちが一斉に羽ばたいた。
普通のクマよりも大きく、魔力で身体強化をするため、一般人には討伐が困難なワイルドベア。
「縄張り意識が強うて、同種同士で戦って潰し合うんだに。したっけ(だから)、人里に出てこなければ放っておくずら。」
狩人が森で遭遇してしまった場合は、丸い玉を投げつけて煙幕を張り、一目散に逃げると言う。
例外は、冬眠し損ねた……つまり、縄張りを持てず巣穴を確保できなかった個体だ。
フォンの風魔法はいいんだが、他の二人が……。
サァラはワイルドベアの懐に飛び込むから、背中を引っ掻かれた。
そのまま動ける、胆力がすごい。
どかっ、どごっ、と内臓を拳で叩き潰してる。あれじゃ、肉が不味くなるぞ。
ワイルドベアは「グオォ」と苦しそうな声を出すが、モンスターだけあって頑丈だ。
フォンが視界を奪っているので、ワイルドベアの爪は空振りすることが多い。とは言っても、腕を振り回せば、近距離にいるサァラに当たる。
ルナはサァラの援護で、ワイルドベアの腕を何度か切りつけた。
モンスターの血が枯れ草や乾燥した地面を濡らしていく。
こつこつとダメージを与えていき、動きが鈍くなってきたところに、最後は半月刀で袈裟懸け。
ワイルドベアはズシンと地面を揺らし、動かなくなった。
毛皮は使える部分を探して加工する感じだろうな。
「だって、ほら。討伐がメインで、素材はおまけでしょ」
言い訳っぽくルナが目を反らす。
いや、正論だから、怒らないよ。
昨日聞いた話で、毛皮がきれいに取れそうだと勝手に俺が勘違いしただけだから。
サァラは、フォンにポーションを背中にかけてもらっている。
「自分の傷はポーションで治せるけど、破れた服はそのまんまなのが痛いにゃ」
オマエハ、何ヲ言ッテイルンダ?
思わず、空を仰ぎ見てしまった。
ちょっと、説教していいですかね?
「ポーションが効く普通のモンスターだったからいいようなものの、毒を持っている特殊個体だったら効かないことだってあるんだ。
毒消しポーションだって万能じゃない。
自分を大事にしろよ!」
三人はきょとんとした。
え、俺が間違ってる?
ワイルドベアを運びやすく解体している狩人は、我関せずだ。
「あ~、そうだね。冒険者は傷があってナンボって、もう古いかも。お師匠がよく言ってるけど」
ルナが頭をかきながら言う。
「怪我に慣れて、気にしなくなっていたところはあるわね。少しの工夫で防げるなら、そうすべきだわ」
「にゃはは。怒らりちった」
なぜか嬉しそうに、サァラが抱きついてきた。
「俺、怒ってるんだけど」
暗に迫力ないって言われてるのか?
「んん? 心配してるってことでしょ」
「まあ……そうだけどさ」
なぜだか、恥ずかしくなってきた。
狩人が生ぬるい目で見てきて、口パクで「イチャつくな」と言っている……。




