ワイルドベア討伐へ
ワイルドベアの討伐では、冬眠し損ねた個体を狩ることになる。
適度に他のモンスターを狩ってくれるので、全滅は求められていないのだ。
腹が減って村に降りてきて、村民に被害が出るのが困るというわけ。
それから、ワイルドベアの肉は、冬の貴重な食料として期待されている。
つまり、現地で狩って売ってしまうので、帰りは身軽な状態だ。
この討伐では、自分たちの食料は持参する。村民の貴重な備蓄には手をつけない。
いや、多分、俺たちくらいなら食事を出してもらえるだろう。けど、冒険者パーティーによっては、すごい大食らいがいる。
過去に、備蓄を食い荒らした奴らがいたんだろうなぁ。
到着した日に歓迎の宴などもないだろう。
しっかりと食料を買い込み、四人で分担して背負うことにした。
以前のパーティー「鮮血の深淵」では、食料をほとんど俺が持っていたから、こんなことでもありがたいと感じる。
「今までは、食料持参って、堅い保存食ばっかりだったけど、今はトーマが美味しいの作ってくれるからいいねん」
「食事休憩が楽しみだな」
サァラとルナが嬉しいことを言ってくれる。
街にいるときのような食材は揃えられない。けれど、依頼を受けたときに、途中で採取できる草や実の情報をもらった。それを収穫しながら進む。
毎年ある依頼だから、情報を蓄積しているそうだ。
冒険者ギルドってそういうこともしてくれるのかと、驚いたし、感動した。
エレッサ支部ではこういうサービスなかったなと、ふと比べてしまう。
「同じ速度で走るのではなく、スピードを上げたり、歩いたりするのも面白いわ」
「三日くらいかかるから、次の日に疲労を残さないよう工夫しないとな。
しゃべる余裕があるくらいの速度の早足で、安全な区間は軽く走る。食事休憩だけじゃなく。時々休憩する」
資料で読んだんだけど、多分、これが一番効率がいい。
村に着くと、子どもたちが寄ってきた。
「村長さんの家、こっち」
と手を引っ張られる。
訪れる者が少ない集落では、外の人間は珍しい。好奇心旺盛な子どもたちに囲まれながら歩いた。
「尻尾に触っちゃ駄目!」
サァラが苦戦していたので、背後に回って尻尾をガードする役目をした。
「兄ちゃん、邪魔」ってクソガキに蹴られた。
滞在中は村長の家に泊まり、翌日から狩人に案内してもらうことになった。
ある程度、モンスターの行動範囲を把握しているそうだ。
こちらとしてもありがたいが、村も滞在日数が少ない方が予算的に助かるというところだろう。
台所を借りて自分たちの食事を作っていると、すごい視線を感じた。
村長の孫たちだ。
一角ウサギの燻製を一口だけあげたら、「おいしー」と叫んで家中を走り回っている。
大人たちも集まってきたので、一口だけ。
村長に、肉が不味くならない血抜きの方法を教えてあげた。
翌日。狩人がチラチラとルナを見ている。あ~、男として気持ちはわかる。
防寒のマントは羽織っているんだが、その下がビキニアーマーのままなのだ。
金属部分が冷たくなっているんじゃないかと心配だ。
本人は膝上までのブーツを履いているから問題ないと言っている。ホントかよ。
今年は二頭のオスがうろついているらしい。
「今までは、ワイルドベアをどう倒してた?」
予め聞いておいて、自分がどう動くか考えておきたい。
「フォンが枯れ葉とかで視界を遮って、サァラが胴体に拳を入れて、あたしが首か心臓を狙う感じかな」
「おお、さすが。きれいな連携だ」
三人が誇らしげに微笑む。
それを見た狩人が、頬を染めた。
「でも、せっかく加入したんだから、トーマが作戦を考えてくれてもいいのよ?」
フォンが期待していると言ってくれる。
そっかぁ、俺ならではの……ね。
嬉しいな。何かいいのを思いつきたいぞ。




