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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第七章 どんな冒険者になりたいか

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次の討伐

 冒険者ギルドでは、ぬいぐるみ騒動が起きている。


 急ぎの件以外は放置せざるを得ない、とギルドマスターは詫びた。

「すまねえな。トーマ絡みのあれこれは、後日にさせてくれ。

 フォンの件に関しては、冒険者ギルドの本部に頼んだ。大陸の冒険者ギルドへ、妖精の国に事情を問い合わせもらってる。返事が来るまで時間がかかるだろう」


 大陸ごとに冒険者ギルドが別組織になると、初めて知った。

 別組織のため、支部から気軽に問い合わせを出せないという。


「私はあまり気にしていませんので……」

 フォンがそう言った。何か吹っ切れたようだ。


「いや、あいつらがただの人さらいという可能性もあるし。

 言ってることが本当だとしたら、粗暴な奴らを寄越したことについて苦情を言いたいしな」

 その辺りは、組織同士の話し合いになってくるのか。


「んじゃ、その辺はギルドマスターに任せよう」

 ルナがフォンの肩を抱いた。

「待っている間に、ワイルドベアでも狩りに行くか」


「ああ、それもいいな。遠い場所の依頼を受けてくれると助かるよ」

 ルナの提案に、ギルドマスターが口添えした。

 これで、次の予定は決定だ。




 お昼に近い時間だったので、冒険者ギルドの食堂に行くことにした。

 ここでも一角ウサギのブームが起きていた。

 今日は、紫蘇とチーズを肉で挟み、くるくる巻いて片栗粉をまぶして焼いた肉巻きだ。



 多分、冒険者パーティー「花猫風月」はワイルドベアと相性がいい。

 サァラの拳が決まるだろうし、ルナの剣が冴えるだろう。

 それなら、毒になる薬をフォンの風魔法でワイルドベアの周囲にだけ撒くという実験ができるか。


 ――そんな話をしながら、舌鼓を打つ。

 肉巻きの表面はカリッとして、中でとろっとしたチーズの塩気と紫蘇の香りが混じり合う。



「じゃあ、『便利』君は何をするの?」

 突然、会話に割り込まれた。小柄な、鼠獣人だ。


 便利君って、「下ごしらえ」というスキルを指して言っているんだろうか。多分、そうだよな。ちょっと嫌な語感だ。


「……見ない顔ね」

 フォンは警戒を隠さずに言った。

「隣の国でダンジョン攻略をメインに活動してるから。相棒が産休なんで、どっかのパーティーに臨時で入れてもらおうと思ってさ」

 隣のテーブルから椅子を持ってきて、勝手に座る。


「図々しいにゃ」

 サァラが毛を逆立てた。


「今、あたしたちは他のメンバーを入れるつもりはないんだ。掲示板で募集しているパーティーを探してくれ」

 ルナがリーダーらしい威厳を持って、きっぱりと断った。


「ん~、でもさ。女性陣は便利君が向上プランを考えてくれるけど、彼自身のことは置き去りなんでしょ?

 筋力や瞬発力がスキル補正されてない、普通の人族。私のスキル「斥候」の戦い方が合ってると思うけど。

 パーティーに入れてくれたら、教えたげるよ」

 鼠獣人の目が光った。


 それは、俺も気にしている点だ。

 かなり心惹かれるが、時期が悪い。レスタール王国や妖精の国からの刺客を気にしている状況で、知らない人間と行動を共にすることなど論外だ。


「貴重な意見をありがとう。だが、こちらにも事情があるので、お断りする」

 俺の口から伝える。


「ふうん。そぉ?」

 それでいいのかと、問うように語尾をあげる。挑発されているような……。


「お断りにゃ!」

 サァラが威嚇するように、牙を見せた。

 猫獣人と鼠獣人は仲が悪いのか?


 鼠獣人はじーっとサァラを見つめ、ふっと笑った。

「気が向いたら、声をかけてね」

 俺の顔を見ながらそう言い、席を立った。



「やな感じ!」

 とサァラはプリプリ怒りながら、皿の肉をフォークで刺した。


「ダンジョン専門……ねぇ」

 フォンは考え込む。


「引っかき回されそうだから、ワイルドベアで遠出しようぜ」

 どこか取って付けたような明るい声で、ルナが話題を変えた。


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