過去にしがみつく者 sideブルーノ
冒険者パーティーから追い出したトーマが、隣国のファルガン共和国で生きていることがわかった。
てっきり死んだと思って、手続きをしちまった。
半殺しにして逃げられたなんて、言えるわけがねぇ。あんな森の奥に入っていったら、駄目だと思ったんだけどな。
持ち帰ったブロンズタートルが高く売れた。
あいつが試算していた額よりは安かったが、五等分じゃなく四等分になったから、まあいい。
すぐにCランクに上がった。これで一流の冒険者だ。
あいつを追い出してから、うまくいかないことが増えた。
雑用をする人間がいなくなって、いろいろと面倒くさいんだな。
依頼も失敗が続き、Dランクに下げられた。
活躍したらすぐにCランクに戻れると思っていたのに、そこでも失敗して、違約金を取られることすらあった。
Dランクの仕事を任せられないと判断され、屈辱のEランクに……。
納得がいかないと受付で粘ったが、
「実績を積めばDランクに戻れますよ」
と、受付の女に素っ気なく言われた。
そんな時にトーマが生きていると聞いたから、連れ戻しに行こうという話になった。
だが、旅費はどうする?
Eランクの報酬では、全て野宿することにしても、まとまった保存食を調達することすら厳しい。
焦っていたら盾の持ち手が壊れるし、ヴェリーに火球を当てられて大火傷するし……冒険者活動の継続も厳しくなってきた。
そんな状況の中で、弓使いのセリアが冒険者ギルドに呼ばれた。
それっきり、セリアは戻ってこなかった。
大昔の殺人事件で指名手配されているエルフだと言うのだ。
え、そんなババァだったのか。
まず浮かんだのは、そんなことだった。ちょっと、嫌な気持ちになった。
仲間の一人が犯罪者だってことで、俺たちへの風当たりが一段と厳しくなった。
弓使いがいなくなった穴をどうるすか話し合っていたら、俺たちもトーマへの殺人未遂で取り調べを受けるハメになった。
ギルド職員は面倒なことをしてくれたという感じの奴と、金づるを逃がしやがってという感じの奴がいる。
荒っぽく事情聴取された。火傷で火が怖くなっている俺の目の前に、火球を出して脅す奴もいる。
仲間同士の喧嘩だと言っているのに、聞く耳をもってくれない。
他の連中は殺意があったかもしれないが、俺は蹴っただけだし。
トーマをレスタール王国に連れ戻したら、俺たちの容疑をうまく誤魔化してくれるという話が来た。なんと、国王からの依頼だという。
隣国への旅はキツかった。ボロい馬車だと、すぐにケツが痛くなる。
火傷で肌が引きつってしまった所に、ズキリと痛みが走ることもあった。
目的の街に着きトーマの情報を集めると、なにやら美人のパーティーについて回っているらしい。
許せん。トーマのくせに。
冒険者ギルドの前で張り込んでいたら、美女に囲まれてやってきた。
くそ。なんだあれ。
ギルドに入ったきり、なかなか出てこない。
ようやく出てきたから、トーマを呼び止める。
ガルドが土下座した。
え、なんで?
仕方なく、俺も倣う。いてて、背中が引き攣れた。
「……お前が役に立つってことは、認めてやるから」
最大限の譲歩だ。これで、トーマも感激するだろう。
ところが、金の話を蒸し返された。
美女たちがあいつの肩を持つ。よろしくやっているのか。羨ま……許せん。
交渉は決裂。
トーマに火傷の心配をされた。
なんでこいつは、人の心配なんかするんだ。余裕を見せつけやがって。
俺は冒険者として、お前より上だ。
またすぐにCランクに駆け上がる。
実は、ガルドと離れてもいいかと考えて、他のパーティーに移籍を打診したことがある。
やたらトーマを評価するんで「あんな役立たず」って嗤ったら、話も聞いてくれなくなった。
今に見ていろ。
ガキの頃は、俺が虐められているとガルドとトーマがかばってくれた。
だが、十歳でスキルをもらって、トーマと俺は逆転したんだ。
トーマを好きだった女の子たちも、俺の方がカッコいいって。
十二歳で意気揚々とハロルの街に出たら、もっと強い人がいて俺は埋もれてしまった。
だが、「下ごしらえ」なんてしょぼいスキルのトーマよりは上なんだ。
絶対に。
スキルをもらった直後の栄光は、俺のモノだ。
その日の夜、奴がいるホテルで言い合いをした。こんな高級ホテルにと、腹が立つ。
もう、何を言ったか覚えてないけど、あんなヤツに馬鹿にされて、野次馬にも詰られて散々だ。
宿で寝込んでいたはずのヴェリーが引っ立てられて、俺たちも拘束された。
ギルド職員がいいって言ったら、通る世界のはずだろ。
その上、領主様のお墨付きで、トーマを引き取りに来ただけだ。
何も間違ったことは、していない。
なんで、俺たちが犯罪者扱いなんだよ。
トーマは生きてるだろうが。
馬鹿力の獣人が怖い。あいつは猫耳娘とイチャついてるのに、俺は猛獣とか爬虫類に取り調べを受けている。理不尽だ。
どうして、いつも、あいつばっかり。
素晴らしい戦闘系のスキルをもらって、体格も良くなって、活躍するのは俺のはずだ!




