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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第六章 ハーレム生活

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どうでもいいことと、大事なこと

 馬車を停められる空き地で、野営することにした。


 周囲にモンスター避けの薬草を炊いた。これは、ばあちゃんの養鶏場の自家製だ。

「これがあるなら、一角ウサギの被害を抑えられたんじゃないのか?」

 ふと疑問に思う。


「ニワトリも嫌うんだよ、この匂い」

「ルナの風魔法だったら、匂いの方向性を定められるか?」

「短時間ならできるけれど、常に展開するのは無理ね。魔力切れを起こすわ」

「なんか、送風の魔道具があればいいんにゃ?」


 ふと閃いた。

「風魔法で薬を撒くのは、モンスター討伐にも使えるかも」

「それ、いいわね! 冒険者ギルドでモンスターと毒の組み合わせを調べましょう」


 わいわいと話ながら、野営の準備を進める。

 馬も行きと違って余裕があるようで、ご機嫌で飼い葉を食べ始めた。



 昨日、養鶏場でいぶした一角ウサギの燻製肉を、表面だけ軽く焼く。

 乾燥させて長期保存がきくようにするといいと伝えてきた。

 だけど、その手前の半生っぽい状態も美味しいんだよな。

 うっかり食べ過ぎて、保存する分がなくなったりしないといいけど……あの様子だと、ちょっと怪しい。



 薪に小枝をくべながら、つい弱音が出た。……夜の闇は人を心細くさせると思う。

「俺は冒険者のくせに、一人じゃトレントも倒せないよ」

「養鶏場の筋肉マッチョと自分を比べてんのかい?

 トレントを倒せる者が運搬係をしているだけだ。全員が倒せるわけじゃないよ」

「そうなんにゃ」

 サァラが燻製肉にかぶりつく。


「そりゃ、向き不向きがあるさ。

 腕っ節が強い奴は、書類仕事が苦手だったりする。

 どっちも苦手な子は、黙々とニワトリの世話をする」

 三者三様だと言ってから、ネギの串焼きを手に取る。

「頭の回る子が効率を重視して、ニワトリにストレスを与えて卵の数が減ったこともあるよ。毎日変わらず手を抜かずにやれるのも、才能さ」


 厨房の下働きは、毎日同じことを繰り返せることが求められた。

「冒険者だって、波があって日によってはすごく強い奴もいるだろ。そこまで強くなくても、安定して実力を発揮できる奴もいる。

 どっちが良い悪いって話じゃないはずだ」


「魔法使いも、そういうところがあるわね」

 フォンが考えながら言う。



「トーマ、あんたは冒険者として生きるのが目的かい? 誰かを守りたくて、腕っ節を強くしたかったのかい?

 目的と手段は別だ。守るのが目的なら、他の方法を探してもいいんだ。

 目的を押さえていないと、間違うよ」


 一角ウサギの燻製をかじりながら、ばあちゃんは「美味いねぇ」と笑った。



 スキルが戦闘向きじゃなかったから、逆に「冒険者になってやる」と意地になった?

 誰かを見返してやりたかった?




 グレタばあさんを無事に冒険者ギルドに送り届けた。

 ばあちゃんの本名はマーガレットだって。可愛い名前でちょっと驚いた。



 数日かけて、ぬいぐるみの作り方を実演し、最後の仕上げとなった段階で、痛恨のミスが判明した。

 羽毛がない。

 縫ったあとに詰めるもの。

 布きれを細かく裂いて詰めたが、やはり仕上がりが違った。


 大急ぎで、俺たちはばあちゃんの養鶏場に走った。


「養鶏場から抜け羽を集めてこい!」

 冒険者ギルドだけでなく、商業ギルドの養鶏部門も走り回った。


「藁と糞の中から羽を拾え? 馬鹿言ってんじゃねぇ」と言う家もあった。

 子どもたちに選り分けさせた家では、思わぬ臨時収入に湧いたという。

 欲をかいて、ニワトリを潰して羽毛を供出した家は、数ヶ月の熱狂が落ち着いた頃に潰れた。


 グレタばあさんはのちに「何が大事かわかってないと、狂乱に飲み込まれて人生を棒に振る」と子どもたちに語ったという。


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