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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第六章 ハーレム生活

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重要事項は何か

 俺は、宿泊代代わりに一角ウサギの他の料理を作る。

 淡泊な肉だから、何にでも合うんだよな。パサパサになるのだけ、気をつければいい。


 普段食事を作っている人たちが、助手のように手伝ってくれる。

 わいわい料理するのも楽しいな。

 ホテルの厨房のように、殺伐とした空気じゃないのがいい。



 肉に小麦粉をまぶし、溶き卵にくぐらせて焼いた黄金焼き。

 焼いている横からつまみ食いをする人が続出で、防御するために頭を使った。子どもたちも油断ならない。こうやって、逞しく育つんだな。


 こんなにたくさん卵を使えるのは、養鶏場ならではの贅沢だ。

 甘いトマトのソースかピリッとした辛子のソース、蜂蜜をかけるのもいい。



 廃業の危機が去っただけでなく、大儲けのできる未来がちらついている。浮かれた空気に満たされていた。


 街に行くのは、養鶏場の主人の母親、グレタばあさんに決まったそうだ。

「養鶏場の本業に影響が出ないよう、それでいて、富を横取りされないよう、がっちり契約を結んでくるからね」

 本業を忘れるなと釘を刺されて、数名がハッとした表情になった。


「こういう時は、抜け駆けしようとする貴族や冒険者が接触を図ってくるもんだ。

 うまいこと言って、利用するだけして、ポイ捨てされるからね。

 お前たち、気ぃ引き締めるんだよ!」


 挨拶というより、演説だ。聞いている皆の顔が引き締まってきて、子どもたちまで真面目に聞いている。


「おう!」

 養鶏場の人たち全員が拳を突き上げた。

 その迫力に、思わず圧倒される。


「うわ~。かっこいいにゃ」

「ほんとだな」

 モンスターが出る環境で生き抜いてきた人たちの、芯の強さを感じた。



 翌朝、ぬいぐるみを渡された。

 フォンはそっと壊れ物のように受け取り、サァラはぎゅっと抱きしめた。



 そこに、グレタばあさんが現れた。その後ろで、養鶏場の主人が大きな荷物を抱えている。

「野宿できるように、毛布と食料だ。母ちゃんをよろしくな」

 と、息子の顔で荷物を馬車に積み込んだ。


「急げば今日中に着きますけど?」

 俺たちでも半日はかからないし、養鶏場の従業員なら日帰りする道のりだ。


「あんなスピードで飛ばされたら、腰をいわすわ(痛める)」

 とグレタばあさんが言う。

 今回の最重要人物がそう言うので、途中で野宿することに決定した。


「がたがた揺れなきゃ、縫い物をするんだけどね。久しぶりに里を出たから景色でも楽しむか」

 傍若無人というか、実にマイペースだ。




「そっちのベッピンさんは、どうしたね。なんか悩み事かい」


 フォンは少しためらって、膝の上のぬいぐるみをなでた。

 そして、子どものころに両親が捕まり、乳母が逃がしてくれた話をした。

 だが、先日、父親は権力者に不都合な真実を掴んで消されたのではなく、過激な主張で人を害したから罰を受けたと聞いた。

 どちらを信じていいのか、わからない……そんなことをぽつりぽつりと話す。


 ばあちゃんはフォンの両手を握って、向き合った。

「開拓団はいろんな経歴の人間がいたよ。それこそ、すねに傷を持つ人間もね。

 過去は過去って、割り切ってもいいんだよ。親と子どもは別の人間だ」


 フォンは黙って聞いている。

「どっちかわかったら、あんたの人生が変わるんかい?

 今の生活に影響がないんなら、好きにしたらええ」


「……そう、ですね」

 フォンはびっくりした顔で、なんとか相槌を打った。

 そして、静かに笑い出した。

「くく、ふふ、そうですね」

 目尻を指先で拭くと、久しぶりに晴れ晴れとした笑顔を見せた。




「トレントの小さいのがいる。どうする?」

 御者台のサァラが、慎重に小声で訊いてくる。

「急ぎだから、やり過ごしましょう」

 フォンが風魔法で遠くに飛ばした。

 ちらっと、ルナがいないから仕留められないな、と思った。俺たち三人では、決定打に欠けるのだ。


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