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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第六章 ハーレム生活

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冒険者、商人もしくは定食屋

 養鶏場の従業員は、本当に強かった。


 道中、運悪くトレントが現れた。手綱を同行している老婆に預け、ひらりと馬車を降りる。

 俺たちの助けは要らないと一人で、だ。

 トレントの枝をかいくぐって幹に迫り、拳で吹っ飛ばす。

「ギキィーッ」と悲鳴をあげて飛んでいき、木にぶつかって沈黙した。幹が折れたので、再起不能だろう。

「これくらいできなきゃ、開拓して暮らせないさ」とばあちゃんが自慢げに笑った。


「卵が無事ならいいんで」と、討伐部位も取らずに先を急ぐ。

 逞しいなぁ。


 格闘家のサァラが興味津々だ。従業員を質問攻めにしている。

 特に、どうトレーニングしているかを根掘り葉掘り。

 口パクで「ばあちゃん、助けて」って言われてるぞ。



 街に着き、卵を納品したあと、フォンの案内で輸入食材店に向かう。

「干し椎茸かカツオブシで出汁を取ると、味わい深くなるわ」

 とフォンが説明を始めた。

 なんだと、それは俺も知りたいぞ。


「この『和食』の棚にあるのは、異世界人が教えてくれたものよ。この醤油もね」

 なるほど。

 見慣れない食材と、宿屋に泊まる客のリクエストで知った珍しい食材が並んでいる。


「妖精の中には、『チェンジリング』とか『神隠し』とか言って、異世界から人を連れてくる種族がいるのよ」

 と、少し気まずそうに言う。

 ああ、最近は異世界召喚に反対する人たちがいるもんな。



 従業員は大量の米と醤油、ミリンも買っていった。


 ばあちゃんは、これから金物屋と手芸用品の店に行くと張り切っていた。

「できあがったら、連絡するよ」とルナに言う。


 ぬいぐるみが欲しいと、馬車の中で相談済みだったらしい。

 フォンが「私も欲しいわ」と言いだし、当然のようにサァラも注文を出した。



 俺たちは冒険者ギルドに行き、依頼終了の報告をする。


 普通なら素材も引き取ってもらうが、その前に一仕事して、一角ウサギの値段を上げる作戦といこう。


 冒険者ギルドの食堂を借りて、卵とじ丼を作った。

 昼食が終わり、夕食の仕込みが始まる前の時間だ。

 まずは、美味しい肉だと知ってもらいたい。


 おやつ感覚になるように小さめの器によそって、ギルドマスターにも持っていく。



「あいつら、全然しゃべろうとしねぇ。『可愛い子に声をかけただけだ。何が悪い』とか言ってるぞ」

「拷問や自白剤は使いませんの?」

 フォンが物騒なことを訊いた。


「今のところ、酒場で騒いだだけだからな。

 妖精の国からはるばる来て怪しいって理由じゃ、使用許可は降りねぇよ。

 お、これ美味いな」


 フォンが少し考えてから提案した。

「彼らに、この丼を出したらどうでしょう?」

 ギルドマスターが器を抱えたまま、目線だけフォンに向けた。


「これは彼らにとって故郷の味です。

 匂いだけ嗅がせて、『洗いざらいしゃべったら食べさせてやる』と言えば、話し出すんじゃないでしょうか」


「じゃあ今すぐ行って、目の前で食ってやったら? その方がキツいぞ」

 ルナがニシシと笑った。


「ああ、じゃあ、尋問している人の分も運びましょうか。何人います?」

 なんだか楽しそうだ。俺も悪乗りする。



 そこに、サァラがぬいぐるみを出した。

「ギルドマスター。お子さんに、一角ウサギのお人形をどうぞ?」

 昨日、ばあちゃんたちが徹夜で作った見本品だ。


 昨日は食後に大騒ぎだった。

 一角ウサギの皮を剥ぎ、急いでなめす。薬品を使って時間をかけて乾燥する工程は、フォンの風魔法で時間短縮。

 その間にフォークのような金具を研いで、潰れた先を鋭くする。

 別のばあちゃんが、ぬいぐるみの型を作る。

 なめし終わった革を手早く切る。

 その縁にフォーク型を当て、持ち手の尻の部分を木槌で叩いて、縫うための穴を空けていく。

 その間に、ルナたちが抜け毛を拾って洗って、フォンが乾燥させる。


 戦場のような慌ただしさだった。

 ようやく二体完成させた頃には、朝日が昇っていた。


 起きてきた子どもたちが欲しいというのを、説得するのも一苦労だった。


 そんな力作をギルドマスターが認めてくれた。

「じゃあ、もう一体は受付に置いて良いですね?」フォンが微笑む。


 人目に触れさせて、評判を作り、価値を高める。

 評判になってから肉と素材を売るために、商業ギルドから特殊な袋をレンタルしていた。

 中に入れておくと時間が止まって、劣化しないアイテムボックス。


 二、三日後が楽しみだ。

 ――と思っていたら、冒険者ギルドの食堂が肉を全部買いたいと申し出てきた。


「急に人気が出て、しばらく品薄の状態ならこれくらいの値段で取引される」と、強気の売値で交渉した。

「それでも元が取れる」と即決でお買い上げ。

 こんなにすぐ売れるなら、アイテムボックスを借りる必要なかったな。結構高かったんだ。



 そんな取引が終わったころ、ギルドマスターがホクホク顔で食堂に顔を出した。


「あいつら、しゃべり出したぞ。一時間後に差し入れてやってくれ」と言ってきた。

 ちょうどいいから、食堂で作り方を教えながら作りましょうか。


 俺、定食屋じゃないんですけどね。


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