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宿屋の一日

 この街では教会の鐘で時間を計る。

 まず、日の出と日の入り、そしてその真ん中に鳴る。

 日の出と昼の間に鳴るのを「朝中」と言い、昼と日の入りの間を「昼中」と呼ぶ。

 つまり、五回鳴るわけだ。


 街の門は日の出に開いて、日の入りに閉じる。



 宿屋の朝は、日の出前から始まった。

 オヤジさんがパンを仕込んでから、玄関の掃除。

 オカミさんがかまどに火を入れ、スープや肉を準備する。

 娘さんが食堂をさっと掃除して、日の出と共に門を出たい客に朝食を出す。この場合は、昨日焼いたパンになる。

 俺は風呂とトイレの掃除。


 日の出の鐘がなったら、隙を見て、自分の食事をかき込む。


 弁当用の料理を、携帯しやすいように包んでいくのをオヤジさんが見本を見せてくれた。慣れたら、俺の仕事になるらしい。


 通いの従業員が来て、食堂の給仕と片付けの手伝いに入った。

 焼きたてのパンとスープに盛り合わせの皿を出す。

 量が多いの、少ないのと賑やかだ。

 オヤジさんが会計を担当する。値切ってくる客もいるので要注意とのこと。


 チェックアウトした客がいたら、部屋の掃除、シーツ回収、忘れ物チェック。

 厩舎に預かっている動物がいたら、その世話。


 朝中の鐘が鳴ったら、洗濯、買い出し、修繕。

 老朽化もあるけれど、宿泊客が壊したりして、ほぼ毎日修繕している気がする。


 昼食用の具を挟んだパンとお茶で、短い休憩を取る。

 業務連絡とか相談とかも、この時間にする。


 昼の鐘が鳴ったら、食堂は大忙しだ。


 常連客には街の職人や、旅商人もいる。

 いい依頼が見つからなかった冒険者には、麦酒を飲む人もいる。


 客が少なくなったら、オカミさんが夕食の下ごしらえを始める。

 オヤジさんは宿泊台帳や仕入れ帳の整理。


 ここで休憩の時間をもらった。

 ちょっと座ったら、意識がとんだ。居眠りしていたらしい。



 昼中の鐘が鳴ったら、到着予定の客の部屋を整える。

 薪を割って、風呂を沸かし、ランプやろうそくの用意をする。


 日没の鐘が鳴るころには、新規の客の受付や帰ってきた冒険者たちで一階は大騒ぎだ。

 冒険者たちが泥だらけ、血まみれで戻ってくることもある。

 大きな怪我は神殿に行くが、そこまでの怪我ではない場合、傷の手当てを手伝う。


 それが一段落したころに、夕食の時間となる。

 希望した宿泊客だけなので、最大でも十六名。

 比較的穏やかな余裕がある時間で、通いの従業員はこの前に帰る。


 以前は酒場として営業していたそうだが、娘さんが年頃になったので止めたそうだ。

 酔っ払いに何かされたら大変だと、オカミさんが猛反対したらしい。


 俺たちも夕食を取り、食器やテーブルを片付ける。

 順番に風呂に入り、オカミさんがかまどの火を落とす。

 オヤジさんが戸締まりを確認して、一日が終わる。


 そのころにはもうヘトヘトで、泥のように眠る。



 ……これ、冒険者になる準備をする時間、作れるかなぁ?


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