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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第五章 土下座されても戻らない

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二階の窓から

 冒険者にとって「逃げる」なんて、イメージ最悪だ。

 わかって言っているのか、少ない語彙の中からひねり出したのか……ブレーンがいて、言わされているのか。


 安っぽい挑発だ。それで、俺がムキになって出て行くのを狙っているんだろう。


「お前らが、俺を殺そうとしたんだろうが! もう、話し合う必要はない」

 一番言われたくないだろう。

 パーティーメンバーを殺すなんて、犯罪だし、ものすごく軽蔑される。

 この先、信用されることなんか一生ないぞ。



「お、俺たちがやったって、証拠でもあるのかよ」

 ブルーノが嘲るように吠えた。


 道行く人が、何事かと立ち止まり始めている。


「……しらばっくれるつもりか?」

 俺だって、脅すような太い声を出せるぞ。


 ガルドがニヤリと嗤った。

「証拠がないから、こうやって自由になったんだろ。

 セリアが一人でやって、俺たちは止めようとしたけど、Cランク冒険者に敵わなかった。

 悪かったって、言ってるだろ。降りて来いよ」


 ははあ、そういう理屈か。


「お前らDランク三人がかりで、Cランク一人に敵わないって? 

 そんな実力じゃ、Eランクまで降格されたのもお似合いじゃないか」

 ははは、と笑って返す。

 ブルーノが憤怒の形相になる。強さやランクに人一倍こだわってるからな。


「そういえば、ヴェリーはどうした」

「……宿で寝込んでる」ガルドが俺を睨みつける。

「ふ~ん、そういう神経あったのかよ」

 羞恥心があったのか、俺を懐柔する役に立たないから出すのを止めたのか……。



 まあ、やったやらないの水掛け論をしていても仕方ない。


「見ろ、この胸当ての傷! お前の剣が付けた傷だぞ」

 逃げることを許さない、物証を出してやる。


「なっ、まだ持っていたのかよ」ブルーノがおののく。

「お、お前が前に飛び出てくるから……。誤解なんだ。聞いてくれよ」

 ガルドが腕を上下させ、唾を飛ばしながら喚いている。


「前面に袈裟切りって、どんな状況だよ。殺意しかねぇだろ!」

 あの時のガルドの顔を思い出し、一瞬立ちくらみを起こした。

 サァラが背中を支えてくれる。

 手のぬくもりが、勇気を奮い立たせてくれた。


 胸当ての後ろを見せ、続ける。

「この背中の焼け焦げは、ヴェリーのファイアーボールだぞ」



「あれ本当に味方にやられたのか」「あいつら最低だな」そんな声が周囲から聞こえる。


「たまたま、当たっただけじゃないか。闘っている最中なら、仕方ないだろう」

「なんだと、ガルド? じゃあ、お前もこんな火傷を負ったことがあるって言うのか。

 剣士のお前が一番前にいるっていうのに、背中が無傷なのをどう説明する?」


「いや、俺だって蒸し焼きになったぞ」

 ブルーノはフォローのつもりで言っているんだろうか。同じ経験をした仲間みたいな雰囲気を出してくる。頭が悪すぎる。


「そんな味方が危険なパーティーに戻るとか、ありえねぇわ!」

 どう考えたって、そうだろ。

 火魔法は攻撃力が高いけれど、危険性も高い。その対策を提案しても、ヴェリーはうるさがって聞こうとしなかった。


 周りで聞いている人たちも「あちゃ~」という呆れた雰囲気になった。



「そうだにゃ!」

 斜め後ろから、突然声があがった。


「あんたたち言い訳ばっかで、謝ってない! 

 あたいがトーマを見つけなかったら、殺人未遂じゃなくて、殺人犯にゃ。

 生きる気力をなくすところまで傷つけたんだ」

 あ、そういうところ、見られてたな……。


「あんたたちは、人殺し!

 弓で足を射って、盾役が重量級の蹴りを入れて、魔法使いがファイアーボールをぶつけて、剣士が斬りかかる。

 見事な手際、立派な人殺しパーティーだにゃ」


 野次馬たちが、ざっと彼らから距離を取った。

 「荒くれ者の冒険者」は珍しくない。だが、その範疇を超えているのだ。



 サァラが、俺のために怒っている。

 こんな状況で嬉しいとか、俺、おかしいかな。


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フレンドリーファイト堂々と語るの頭悪すぎて笑う
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