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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第四章 ハーレム

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パーティー参加

 俺の死亡手続きは撤回され、生きているということが普通の冒険者たちにも周知された。


 三年ほど働いていた山猫亭のオヤジさんからは、「無事ならすぐに連絡をしてこい」とお怒りの手紙が届いた。


 出身の村からも手紙が来た。

 村長が「優秀でなにより。誇りに思う」、村長の息子エドガーは「今後の冒険者活動をどうするか、迷っているなら相談に乗る」、引退した冒険者アーデンからは「俺のクランの下っ端どもが、すまん」



 緊急の連絡ではないので、ギルドの通信用の魔道具は使えない。

 こちらの国に来る予定がある冒険者や商人に、手数料を払って送ってくれたものだ。


 パーティーメンバーに殺されかけた時は、世界中に嫌われているような気がして、絶望した。

 だが、あいつらに嫌われていたって、こうやって俺を気にかけてくれる人たちがいる。

 大丈夫だ。俺は「殺されて当然」なんていう人間じゃない。


 俺は、宿の部屋でこっそりと泣いた。なぜか涙が熱いと感じて、頭がのぼせたような状態になった。



 この手紙を大切にしよう。心から、そう思う。


「手紙をしっかりと収納できるバッグを買いに行きたい」


 いいバッグを買えるお店を相談したら、ルナに突っ込まれた。

「その前に、返事を書く方がいいんじゃないか?」


 その通りだ! うっかりした自分が情けない。顔が赤くなる。


「トーマが浮かれるの、珍しいにゃん」

 からかいながら、サァラは自分のことのように喜んでくれる。


「ふふ、まずは、封筒や文具が揃っているお店にご案内するわ」

 フォンが微笑んで、案内してくれた。



 そのあと、食器や水筒、毛布など、借りて凌いでいた物を買い揃えた。

 それから、遠出するときのための修理セット、ランタン、手ぬぐい、縄も購入。

 プレゼントされた火打ち石や、使い込んだ包丁、あれこれ書き込んだ手帳だけは返してほしいんだが、俺が死んだと思って売り払ったりしてたらしい。


 そういう被害も自己責任で、保証されないのが辛いな。

 盗まれた自分が悪いって……冒険者は弱肉強食の世界だ。




 そろそろ新しい生活をどうするか考えて、三人とは別行動すべきだろう。

 こちらの国に移るか、元の国に戻るか。戻ったとしても、「鮮血の深淵」が拠点にしている街はなしだ。


 悩んでいたら、三人に木に擬態するモンスター「トレント」の討伐に一緒に行かないかと誘われた。

 パーティーに臨時加入という形で、依頼を受けられるから、と。


 トレントはCランクのモンスターなので、討伐したことがない。

 それは、参加してみたいぞ。

 問題は一旦置いておき、初めてのモンスターに心が弾む。




 冒険者ギルドの受付で「『花猫風月』に、ようやく『花』が入ったんですね」と言われた。


「あら、言われて見れば、そうですね」

 フォンがにっこり微笑んで、答えた。


 きょとんとする俺に説明してくれる。

「東方には『花鳥風月』という美しい物を意味する言葉がありますの。

 ネコ獣人のサァラ、風の魔法使いの私、ルナが月で、「花猫風月」です」


「それは、素敵なパーティー名ですね。でも、俺が『花』はないでしょう」


「いいと思うけど。正式に加入しちゃえよ」

 ルナがすごく気軽に言う。


「いえいえ、とりあえず臨時参加で」

 はっきりと言っておく。


 受付嬢は、「いつでも加入手続きしますんで」と、こちらも気軽に言ってくる。



「あれ、俺は『鮮血の深淵』を脱退したことになってます?」

 俺からは手続きしていないが、死亡扱いなら自動的になってるか。


 ちょっと待ってと言われ、しばし待つ。

 受付嬢は「情報閲覧禁止になってます」としょぼんとした顔で教えてくれた。


「まだ殺人未遂の捜査中なんだろうね。臨時で参加できるなら問題ないし」

 俺は他人事のように言い、他のメンバーと受付を離れた。



 トレントの情報を調べると言って、三人とは別行動にしてもらった。



 実は、パーティーを組むのが怖いと思ってしまったんだ。

 近くにいて憎まれていることに気付かなかった。そんな自分が信用できない。



 それに、背後から嫉妬の視線がビシバシ飛んできて、痛いくらいだった。

 別の意味でも怖いぞ……。


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