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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第四章 ハーレム

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新しい仲間

 集合場所の食堂に行くのが、思ったより遅くなった。


 ちらっと、待っていてくれなかったらどうしようと思う。

 今までの「鮮血の深淵」だったら、俺に構わずいなくなっているだろう。


 しかも、今はお金を持っていない。

 彼女たちがいなかったら、すごすごと店を出るしかないのだ。


 緊張しながら、扉を開ける。



 ……奥の方にいた!


「遅かったな。どうだった?」と、ルナが手を振った。


 テーブルに突っ伏したサァラに「おーそーいー」と文句を言われる。

 なんだろう。文句を言われているのに、嬉しいぞ。


「すみません。お待たせしちゃって」

 すごくホッとしたのを隠して、何でもないふりをした。


「お昼を過ぎてしまって、お腹が空いたでしょう。まずは注文をしてしまって」

 フォンがメニューを見せてくれた。

 こういう気遣いも、前のパーティーでは受けたことがなかったな。



 食べたことのない料理があったので、それを頼んだ。

 どんな味か楽しみだ。



「商業ギルドは死亡手続きされちゃってて、お金が下ろせませんでした。

 もうしばらく、お世話になってもいいですか?」

 セリアが指名手配犯かもしれないのは、言っていいのかわからないので黙っておく。



「いいよ、いいよ。その方が楽しいし」

 ルナが軽く請け負ってくれた。


「じゃあ、一緒に依頼受ける?」

 サァラが猫耳をピコピコさせながら提案する。


 とても魅力的な話だが、気になる点もあるのだ。

「そういえば、みなさんのランクは?」

 そう、これ。

 サァラの体力やルナの半月刀を見ると、少なくともDランクではないだろう。


「三人ともCランクだ。

 だからワイバーン討伐に行ったし、箱の中味がわかるのに助けられた」

 ルナがニッと笑う。


「Cランク以上の人間の方が、トーマ君の価値を知ってると思うわ」

 なんだか、含みを持たせた言い方……。


 あ、セリアがCランクなのに、ワイバーン討伐での俺の功績を知らなさそうだと怪しんでいるのか? 価値を知らないから、殺そうとしたんじゃないかって。

 当時はまだセリアと知り合いじゃなかったから、討伐に行ったのか行っていないのかは知らない。

 だけど、一度も会話に出てこないんだから、行ってない可能性が高いな。


 セリアが指名手配犯かもって言っていないのに、なにか気付いているのか。

 鋭い人は怖いなぁ。



「ワイバーン討伐は二年くらい前ですか。懐かしいな。お役に立てたなら、嬉しいです。

 ただ、俺はDランクです。ついていけないかも」


 認めたくないが、戦闘職のスキルを持っている人より、伸びが悪いのだ。

「鮮血の深淵」がCランクに上がれそうだったときも、俺だけDランクのままだったらどうしようと、密かに悩んでいた。

 改めて他のDランクばかりのパーティーに加入し直したとして、また俺だけランクアップできない状況を繰り返すのかと後ろ向きになったり……それで、抜け時を見誤った。



「でも、上のランクの戦い方とか知りたくない? 上達の近道だと思うけど」

 ルナが挑戦的な目で、俺の顔をのぞき込む。


「あなたは頭脳派でしょう? 効率的な討伐方法を考えてくれたら嬉しいわ。

 苦手をカバーし合って得意なことを活かして戦うために、パーティーを組むのよ」

 フォンがクスっと笑う。

「馬鹿なことを言わないで」と励ましてくれている気がした。


「あ、はい。Cランクのモンスターを改めて勉強します」

 顔が赤くなって、声がうわずったかもしれない。

 よく考えたら、タイプの違う美女たちに囲まれてるわ、俺。



「はい、お待ち」と定食が運ばれてきた。


 おお、肉が葉っぱで包まれている。

 ナイフで切って、肉が出てくるのが楽しいな。わくわくする。


 俺は食事を優先して、しばらく女性たちの会話に耳を傾けることになった。



「風の魔法使いたちの会合で、新しい技を勉強してきたの。早く、実践で使ってみたいわ」

 フォンが、指先で空中に図形を書く仕草をした。


「今回の長期休暇の成果だよね。早く見たいにゃ~」

「そうなると、風魔法が使える依頼だな。

 近場の草原の依頼を受けるか、ダンジョンで広めの階に行くか……」

 ルナが腕を組んで候補を挙げる。


 俺は急いで飲み込んで、口を挟んだ。

「ダンジョンがあるんですか?」


「あるある。行ったことない?」

 ルナが一瞬ビックリして、それから楽しそうに答えた。


「資料で見ただけです。モンスターを倒すとその分強くなれて、素材がドロップするんですよね?」

 俺の出身地にはなかったのだ。憧れのダンジョンに、興奮してしまう。


「そうだよ。じゃあ、ダンジョンに行くか」

 ルナの声に、他の二人も賛成してくれた。


「あの、モンスターとかダンジョンの資料とかあったら見たいです」

 絶対に、豊富な資料があるよな。


「んじゃ、冒険者ギルドに逆戻りかな」とルナ。

「え~、勉強やだ~」とサァラが尻尾をびたんびたんと力強く振る。


「その前に、今日の宿どうしましょうか」

 フォンが片手を頬に添えて、首をかしげる。

「三人部屋と一人部屋? それとも、四人部屋がいいかしら?」


 ……突然の発言に、俺は思わずむせた。


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