表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第四章 ハーレム状態

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/64

もう、死にたい俺

 体が熱い。いや、寒い?

 背中が痛い。腕も、腹も。

 喉が熱くて、呼吸をするのもシンドイ。


「にょ。目が覚めた?」


 ……猫耳が見える。

 俺、ベッドの中にいるな。

 えーと、夢か?

 夢ならこの激痛はなんだ。

 ああ、殺されかけたんだっけ。

 なら、ここは?


「ばあちゃーん、起きたよぉ」

 猫耳は、扉の外に向かって呼びかけている。



 ゆっくりと近づく足音がした。


 現れたのは、背中に鳥の羽を生やした獣人だ。


 ぐったりと動けない俺の腕を取ったり、目の下側の皮膚を引っ張ったりしていく。

 爪が鋭くて、ちょっとチクチクした。


「傷口から、良くないものが入っちまってるね。獣人ならこの薬で治療できるんだが、人族だとたまに悪化する者がいるんだ。

 どうするね?」


 熱があるのか、頭がぼーっとする。

 それ、人間でいうエリクサーみたいな万能薬のことじゃないか?


「……そ、んな金……ない……」


「あとねぇ、体にどんな影響が出るかわからないのさ」

 俺の言葉が聞こえていないのか、鳥人は話し続ける。


「うまく利いたとしても、数日は高熱で苦しいかもしれないけどね。ケロリと治る人間もいるから、それも不思議だよ」


 俺の目の前で瓶を振る。

「さて、どうするね?」


 どう、と言われても。

 体がシンドイ。ものを考えようとすると頭まで痛くなる。

 治ってどうする。

 殺されるほど憎まれていた。武器を向けられ、魔法で攻撃される。

 敵を見るような目。獲物を狩るような視線。

 ……恐怖と絶望を思い出した。


 もう、どこにも帰る場所がない。

 俺なんか、生きてても意味がない……。


 涙がこぼれた。

 もう、どうでもいい。

「……生きて、いたく……ない」



 べしりと頭をはたかれた。

「ふざけんなよ。

 獲物を両手に、背中にあんたを背負って、山を越えたんだ。あたいの苦労を無にすんなっつーの」

 猫耳娘は、俺がいなかったら背中にもう三匹背負えたとプンスコ怒っている。


 ここで「俺が頼んだわけじゃない」と言ったら、ガルドたちと同類になってしまう。


「……それ、は、申し訳ない……」

 しゃべるだけで疲れる。息が切れる。


 猫耳娘は顔を歪ませた。

「そういうこと言ってるんじゃないんにゃ!」


 猫耳娘は鳥人から瓶を奪うと、問答無用で俺の口に突っ込んだ。


「あの滝の裏の入り口はわかりにくいんにゃ。あそこに辿り着いたのは、死にたくなかったからだろが。

 あんたの心が絶望してても、体は生きたいって言ってた。素直になるんにゃ」

 猫耳娘は……たぶん、いいことを言っていたんだと思う。


 だが、おれはそれどころではなかった。



 苦い、エグい、喉が焼ける。妙な生臭さが、口から鼻にあがってくる。


 鳥人間は、俺が吐き出さないように顔を押さえた。いわゆるアイアンクローだ。

 ちょ、絶対に、人間の手のアイアンクローより、すごいぞ。

 爪が後頭部までがっちりホールド……逃げられない。


 苦しくて暴れようとしたら、猫耳娘に押さえつけられた。あ、ふわふわで気持ちいいぃ。


 一拍おいて、ぐわーっと体中が発火するように熱くなった。

 死ぬ、死ぬ、死ぬ。これ、駄目だろ。逆に、死ぬ。


 ――また、俺の意識が飛んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ