依頼A
冒険者として、次に依頼を受けたのは、一角ウサギだ。
普通のウサギに角がついている。
だが肉食で、養鶏場の近くに巣を作ってしまったらしい。すでに何羽か鶏を盗られたそうだ。
繁殖力が強いので、一網打尽にしないといけない。
準備としては、火傷を治すポーションと討伐後のモンスターを入れる袋を二つ、ブルーノの盾と鎧に防火剤を塗ること。
ブルーノが面倒くさそうに雑に防火剤を塗っている。
「隙間があると、火傷するぞ」
と注意したら、
「お前、オカンかよ」とすごまれた。
翌日、養鶏場から迎えの馬車が来た。
普段、出荷に使っているものに防水シートがかけられて、その上の俺たちは乗り込んだ。
ヴェリーが「なんか養鶏場の臭いが染みついてる。気を使ってシートを敷いてくれたんだろうけどさ」とぶつくさ文句を言っている。
いや、逆に、俺たちが雑菌を持ち込まないよう、警戒されているんだと思うが。
村に着く前に、俺から作戦をもう一度説明しておいた。
一角ウサギは小さいが、角で刺されたら体に穴が空くからな。
まず盾役のブルーノが、「ヘイト管理」で、一角ウサギの集中を集める。
穴からもゾロゾロと出てきた。いいぞ。
剣士のガルドが側面から、なぎ払う。
キューキュー、キイキイと悲鳴が上がり、バタバタと倒れていった。
気にしないぞ、と心の中で繰り返す。
可愛いもふもふだが、モンスターだ。人に危害を与える。肉になって市場に並んだら、可哀想なんて考えないだろ。
ヴェリーがブルーノの正面に回る。間にいる一角ウサギを範囲魔法で殲滅。
ブルーノは防火剤を塗った盾で、自分の身を守った。
セリアが遠くへ逃げようとする一角ウサギを矢で仕留める。
俺は火に包まれながらも動いている一角ウサギを、仕留めていく。火がくすぶっている中、布で口元を覆い、煙で涙目になりながら動き続ける。
焦げた毛と血の匂いが混じって、息をするたび喉が焼けるようだった。
もう、動いている一角ウサギはいない。
念のためにヴェリーに巣穴に火魔法を撃ってもらったが、出てくるものはいなかった。
「ブルーノのヘイトのおかげだな」と素直に感心した。
モンスターを一カ所に集められるのは、討伐をとても楽にしてくれる。
「まあな」と誇らしげに胸を張るブルーノ。
こういうところは可愛げがあると思う。
作戦が当たってよかった。
連携もできていたし、怪我人もなし。素晴らしい成果だと言っていいだろう。
討伐証明には角があればいいのだが、焼けたものと弓で仕留めたものに分けて、回収していく。
それぞれ、宿に肉を下ろしたら小遣い稼ぎになるんだ。焼いた肉も生の肉も需要がある。
それに、弓で仕留めたものは毛皮が取れるしな。
養鶏場の主に討伐報告をして、依頼完了のサインをもらった。
一角ウサギを要るか聞いたら、焼けているのがほしいというので、角を取ってからあげた。
ちょっとしたサービスだ。
「『鮮血の深淵』というパーティーです。また、何かあったら声をかけてください」
と、宣伝するのも忘れない。
ガルドに「お前、商人みたいだな」と言われた。
俺は商業ギルドにも加入しているから、冒険者かつ商人でもある。
強ければ名前が売れて指名依頼が来るなんて、甘い世界じゃないだろう。
こつこつと名を売っていかないと。




