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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第三章 冒険者になる

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依頼A

 冒険者として、次に依頼を受けたのは、一角ウサギだ。

 普通のウサギに角がついている。

 だが肉食で、養鶏場の近くに巣を作ってしまったらしい。すでに何羽か鶏を盗られたそうだ。

 繁殖力が強いので、一網打尽にしないといけない。



 準備としては、火傷を治すポーションと討伐後のモンスターを入れる袋を二つ、ブルーノの盾と鎧に防火剤を塗ること。



 ブルーノが面倒くさそうに雑に防火剤を塗っている。


「隙間があると、火傷するぞ」

 と注意したら、

「お前、オカンかよ」とすごまれた。




 翌日、養鶏場から迎えの馬車が来た。

 普段、出荷に使っているものに防水シートがかけられて、その上の俺たちは乗り込んだ。


 ヴェリーが「なんか養鶏場の臭いが染みついてる。気を使ってシートを敷いてくれたんだろうけどさ」とぶつくさ文句を言っている。


 いや、逆に、俺たちが雑菌を持ち込まないよう、警戒されているんだと思うが。




 村に着く前に、俺から作戦をもう一度説明しておいた。

 一角ウサギは小さいが、角で刺されたら体に穴が空くからな。



 まず盾役のブルーノが、「ヘイト管理」で、一角ウサギの集中を集める。

 穴からもゾロゾロと出てきた。いいぞ。


 剣士のガルドが側面から、なぎ払う。

 キューキュー、キイキイと悲鳴が上がり、バタバタと倒れていった。


 気にしないぞ、と心の中で繰り返す。

 可愛いもふもふだが、モンスターだ。人に危害を与える。肉になって市場に並んだら、可哀想なんて考えないだろ。



 ヴェリーがブルーノの正面に回る。間にいる一角ウサギを範囲魔法で殲滅。

 ブルーノは防火剤を塗った盾で、自分の身を守った。


 セリアが遠くへ逃げようとする一角ウサギを矢で仕留める。

 俺は火に包まれながらも動いている一角ウサギを、仕留めていく。火がくすぶっている中、布で口元を覆い、煙で涙目になりながら動き続ける。

 焦げた毛と血の匂いが混じって、息をするたび喉が焼けるようだった。



 もう、動いている一角ウサギはいない。

 念のためにヴェリーに巣穴に火魔法を撃ってもらったが、出てくるものはいなかった。


「ブルーノのヘイトのおかげだな」と素直に感心した。

 モンスターを一カ所に集められるのは、討伐をとても楽にしてくれる。


「まあな」と誇らしげに胸を張るブルーノ。

 こういうところは可愛げがあると思う。



 作戦が当たってよかった。

 連携もできていたし、怪我人もなし。素晴らしい成果だと言っていいだろう。



 討伐証明には角があればいいのだが、焼けたものと弓で仕留めたものに分けて、回収していく。

 それぞれ、宿に肉を下ろしたら小遣い稼ぎになるんだ。焼いた肉も生の肉も需要がある。

 それに、弓で仕留めたものは毛皮が取れるしな。




 養鶏場の主に討伐報告をして、依頼完了のサインをもらった。

 一角ウサギを要るか聞いたら、焼けているのがほしいというので、角を取ってからあげた。

 ちょっとしたサービスだ。

「『鮮血の深淵』というパーティーです。また、何かあったら声をかけてください」

 と、宣伝するのも忘れない。



 ガルドに「お前、商人みたいだな」と言われた。


 俺は商業ギルドにも加入しているから、冒険者かつ商人でもある。

 強ければ名前が売れて指名依頼が来るなんて、甘い世界じゃないだろう。

 こつこつと名を売っていかないと。


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