表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第三章 冒険者になる

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/64

準備完了

 翌日から、ヴェリーと二人で冒険者の掲示板を見るのが日課になった。

 依頼が貼ってある掲示板の横には、冒険者募集のものが並んでいる。


 依頼を受注するには、パーティーの人数が足りない場合。

 火力がほしい依頼。これはヴェリーだけのときも、俺と二人で入れてくれるときもある。

 商人の護衛の補助。……梱包の技術が必要って、ほぼ俺への指名じゃねぇか?


 護衛は高ランクにならないとできないから、現場を見られるだけでも勉強になる。

 でも、ちゃんと指名して、指名依頼料を払ってほしいぞ。

 まだ、下っ端過ぎて、そういうことを言えないんだけどな。




 当然、雑用も多く半人前扱いだ。


 厨房では先を読んで動けたし、頼られることもあった。


 だが、冒険者としては何もかもが手探りだ。

 単独で初心者の依頼をこなして経験は積んでいるが、パーティーで何が必要かわからない。

 予想がつかず、咄嗟に立ち回れない。失敗するたびに情けなくて、もどかしい。


 それでも、やりたいことに繋がっていると信じて進むしかない。


 村の宿屋で働き始めたころも、何もできなかった。

 山猫亭に後輩が入ってきて「できなくて悔しい」と言っていたのを、「すぐにできたら、一年間の俺の経験が泣くぜ」と励ました。


 そうだ。初めはできなくて当然だ。一つずつ身につけていくしかない。

 頑張れ、俺。ここで、へこたれている場合じゃないぞ。

 やりたい世界に入ったんだ。

 自分を信じて、進むしかない。




 そんな日々を重ね、少しずつ「お、助かるよ」と言ってもらえるようになった。


 血で汚れた物をさっと洗うと感謝される。

 食事が段違いに美味い。まあ、これは……当然ですね、ふふふん。一気に雰囲気が良くなる、食事って偉大だな。

 荷物がコンパクトだと移動しやすい。これも喜ばれた。体力を消耗しないですむから、戦闘が楽になるって。



 短剣を使う斥候や接近戦が得意な人から、コツを学ぶ。

 モンスターの返り血を浴びない戦い方を身につけろとも言われた。

 体液に毒を含むモンスターもいるし、なにより臭くなる。それから洗濯屋に出すときに、料金が高くなるそうだ。



 大丈夫だ。俺は前進している。




 ある日、ヴェリーが注意を受けていた。

「あんた、火力は充分だけど、火を吸収するのも覚えなさいよ。山火事を起こしたら、ランク降格だからね」


 この依頼は岩場での討伐だったから、モンスター以外に燃える心配はなかった。

 だから、純粋に将来を心配したアドバイスだったと思う。


「そんなことしない」

 ヴェリーはむくれていた。


 ん? そんなことって、「吸収する練習」と「山火事を起こさない」のどっちだ?


 こいつ、危機意識が薄いな。要注意だぞ。




 同じEランクといっても、上下がある。

 Dに近いEランクもいるし、Fから上がったばかりのEランクもいる。

 俺の方がヴェリーより下だから、ヴェリーが休む日にも細かい依頼を受けていた。



 そんな生活を始めて半年、俺はヴェリーとほぼ同時にDランクになれた。


 忘れていたが、俺はワイバーン討伐のときの貢献が評価されていたのだ。


「混乱の最中でとっさに判断し、適切な人を選んで指示を出せるのも、パーティーにとって大事な能力です。

 期待していますよ」

 と、顔なじみになった受付嬢に言われた。


 一時期、俺にベタベタすり寄って来た子は、裏方に異動させられたらしい。

 俺だけじゃなく、将来有望と思った男に付きまとい、複数の苦情が寄せられたとか。

 鼻の下を伸ばした男たちからではなく、その恋人たちから……さすがに露骨にやりすぎだったよな。

 懲りずに、奥の扉から手を振っている。……無視していいか?



 それはさておき、頑張りを評価されて嬉しいと喜んでいたら、横から水を差された。


「ええ~、あんたズルい。闘ってないのに加算されるって、なに?」

 今、受付嬢さんが説明してくれたの、聞いてなかったのかよ。


 これでパーティーが正式稼働するんだから、喜んでくれないかなぁ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ