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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第三章 冒険者になる

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パーティーの始まり

 冒険者のパーティーを組もうと同郷のガルドに誘われた。


 ガルドはスキルが「剣士」で、D級。

 同郷でスキル「盾役」のブルーノもD級。


 俺はE級で、戦闘系のスキルなし。

 短剣と罠を主に使っている。


 ガルドとブルーノが前衛だから、後衛が欲しいところだな。



 冒険者ギルドの近くの食堂で、話し合うことにした。

 定食を頼んで、まずは腹ごしらえだ。


 他のメンバーの当てや候補、どんなメンバーを想定しているのかを訊いてみた。


「ギルドの掲示板で、見繕えばいいんじゃね」

 ブルーノが言う。たぶん、こいつは何も考えていない。

 スキルをもらう前はひょろひょろの泣き虫で、誰かにひっついていた。そのまま、自分で考える習慣がついていないのか?


「ああ、うん。だから、その掲示板から、どういう人たちを選びたいかという話をしたいんだ」

 否定せず、説明してみた。

 想定もせずに行って、掲示板の前で品評していると本人たちの耳に入りかねない。人間関係が悪化して、冒険者活動に影響が出ることもある。

 決めておけば、目線で「今日はお目当てがいないから帰ろう」とか、意思疎通ができるだろう。



「難しく考えるなよ。気が合えばいいじゃないか」

 ガルドは楽天的すぎる。でも、そういう人間じゃなければ、俺を誘ってくれなかったよな。


「前衛だけ集まっても、バランスが悪いだろう」

 ちょっと勢いよく肉をフォークで刺してしまった。興奮してはいけない、落ち着け、俺。


「後ろについたヤツが、そっちを向けば後衛になるだろうが」

 んんん~、何を言っているのかな、ブルーノ君?

 遠距離攻撃が使える魔法使いとか弓矢とか、そういう話をしているんだが。


 まさか、そういう知識がないのか?

 クランで教育を受けていなかったとか?


「これまで、どんなパーティーを組んでいたのか、教えてくれ」

 俺は仕切り直すように、質問を変えた。


 二人が目を見合わせる。

「え~、依頼に合わせて、指名されてたな」ブルーノは言ってから、がぶりと肉に食いついた。


「そうだな。それで相性を見ながら、C級以上になってパーティーを組む感じだった」

 ガルドが野菜を俺の皿にさりげなく乗せた。

 まだ、こいつは野菜が苦手とか言っているのか。


「つまり、二人ともどんなパーティーにしたいか、考えたことがない?」

「そうゆうこと」

 ガルドが悪びれもなく、答えた。


 それって、戦闘力はD級でも、闘いを組み立てる能力がないってことじゃねぇか。

 俺は冒険者の適性がない。

 経験の浅い俺が、二人を引っ張っていくなんて無理だ。


 ……考え直したほうがいいかもしれない。



 俺は子どもの頃、冒険者にすごく憧れた。

 絶対にかっこいいスキルをもらうんだと、村の自警団の訓練を見学して、自主練に励んだ。

 モンスターを倒した大人たちの頼もしさに、シビれたっけ。

 だが、実力を上回るモンスターに対峙したとき、命の危険にさらされる。

 場合によっては、仲間の足を引っ張る。


 頼りない三人が寄せ集まったら、とても危険な集団になるだけだ。



 最初の予定どおりに、冒険者関連の仕事をしながら経験を積んで、大所帯のパーティーに加えてもらう方がいい。

 こいつらも、しばらくは既存のパーティーで勉強させてもらった方がよさそうだ。


 ――お互いのために。


 頭の中で、断る理由を並べ立てる。どう説明しようか。



 そのとき、女の子二人組が声をかけてきた。

「ねぇ、そこの三人、今パーティー募集中?」


 え、ナンパ? いや、逆ナンってやつ……!


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