パーティーの始まり
冒険者のパーティーを組もうと同郷のガルドに誘われた。
ガルドはスキルが「剣士」で、D級。
同郷でスキル「盾役」のブルーノもD級。
俺はE級で、戦闘系のスキルなし。
短剣と罠を主に使っている。
ガルドとブルーノが前衛だから、後衛が欲しいところだな。
冒険者ギルドの近くの食堂で、話し合うことにした。
定食を頼んで、まずは腹ごしらえだ。
他のメンバーの当てや候補、どんなメンバーを想定しているのかを訊いてみた。
「ギルドの掲示板で、見繕えばいいんじゃね」
ブルーノが言う。たぶん、こいつは何も考えていない。
スキルをもらう前はひょろひょろの泣き虫で、誰かにひっついていた。そのまま、自分で考える習慣がついていないのか?
「ああ、うん。だから、その掲示板から、どういう人たちを選びたいかという話をしたいんだ」
否定せず、説明してみた。
想定もせずに行って、掲示板の前で品評していると本人たちの耳に入りかねない。人間関係が悪化して、冒険者活動に影響が出ることもある。
決めておけば、目線で「今日はお目当てがいないから帰ろう」とか、意思疎通ができるだろう。
「難しく考えるなよ。気が合えばいいじゃないか」
ガルドは楽天的すぎる。でも、そういう人間じゃなければ、俺を誘ってくれなかったよな。
「前衛だけ集まっても、バランスが悪いだろう」
ちょっと勢いよく肉をフォークで刺してしまった。興奮してはいけない、落ち着け、俺。
「後ろについたヤツが、そっちを向けば後衛になるだろうが」
んんん~、何を言っているのかな、ブルーノ君?
遠距離攻撃が使える魔法使いとか弓矢とか、そういう話をしているんだが。
まさか、そういう知識がないのか?
クランで教育を受けていなかったとか?
「これまで、どんなパーティーを組んでいたのか、教えてくれ」
俺は仕切り直すように、質問を変えた。
二人が目を見合わせる。
「え~、依頼に合わせて、指名されてたな」ブルーノは言ってから、がぶりと肉に食いついた。
「そうだな。それで相性を見ながら、C級以上になってパーティーを組む感じだった」
ガルドが野菜を俺の皿にさりげなく乗せた。
まだ、こいつは野菜が苦手とか言っているのか。
「つまり、二人ともどんなパーティーにしたいか、考えたことがない?」
「そうゆうこと」
ガルドが悪びれもなく、答えた。
それって、戦闘力はD級でも、闘いを組み立てる能力がないってことじゃねぇか。
俺は冒険者の適性がない。
経験の浅い俺が、二人を引っ張っていくなんて無理だ。
……考え直したほうがいいかもしれない。
俺は子どもの頃、冒険者にすごく憧れた。
絶対にかっこいいスキルをもらうんだと、村の自警団の訓練を見学して、自主練に励んだ。
モンスターを倒した大人たちの頼もしさに、シビれたっけ。
だが、実力を上回るモンスターに対峙したとき、命の危険にさらされる。
場合によっては、仲間の足を引っ張る。
頼りない三人が寄せ集まったら、とても危険な集団になるだけだ。
最初の予定どおりに、冒険者関連の仕事をしながら経験を積んで、大所帯のパーティーに加えてもらう方がいい。
こいつらも、しばらくは既存のパーティーで勉強させてもらった方がよさそうだ。
――お互いのために。
頭の中で、断る理由を並べ立てる。どう説明しようか。
そのとき、女の子二人組が声をかけてきた。
「ねぇ、そこの三人、今パーティー募集中?」
え、ナンパ? いや、逆ナンってやつ……!




