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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第三章 冒険者になる

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ワクワク冒険者

 ホテルの仕事が終了した。

 外国の視察団が別の街に行くことになり、送迎パーティーも無事に終わった。


 領主様がお見えになるということで、いつも以上にピリピリしていたし、ひたすら地下で野菜の皮を剥いていた気がする。

 パーティーの規模によっては給仕を手伝うのだが、粗相があってはいけないと、厨房に籠もっていた。

 料理の補充や温め直しだけになると暇なんだが……。

 副料理長がブツブツ言っていて、怖いんだが……。



 そんな日々から解放されたのだ。


 また大きな規模のパーティーがあったら、臨時で入ってくれと言われた。

 商業ギルドで募集してくれたら、都合が合ったときは来ますと答える。


 しばらく、調理関係から離れたい。




 そんな気持ちも後押しになって、冒険者ギルドで依頼を探すことにした。

 ワイバーン討伐の現場がどうなっているか、情報が入っていないかも気になるし。



 冒険者ギルドに、同じ村出身の冒険者たちがいた。

 拠点にしていたクランが解散になったので、違う街に散っていく途中らしい。


 その中に、同い年のガルドがいた。

「よお、トーマ。まだ冒険者になるの、諦めてないのかよ」


 久しぶりに会ったというのに、ずいぶんな言葉だ。

 ……いや、クラン解体をしているときに顔を合わせてはいたか。


 だが、俺はアーデンとエドガーといった主要メンバーと行動していたんだ。


 横領に手をつけたのは中堅でくすぶっていた連中だから、駆け出しのこいつは声をかけられなかったのだろう。

 もし、声をかけられていたら、誘惑をはねのけられたのか……そんなことを考えながら、顔をじっと見てしまう。



「この街で何ヶ月か働いてるんだろう? この街はどうよ?」

 ガルドに問われた。


「大きな街だけあって、活気があるよ。

 外壁があるから街の中は安全だが、外は危険だ。依頼の数も種類も多い。

 それから、資料室が充実してるな」

 同郷のよしみで、教えてやる。


 ガルドの後ろで聞いていた何人かが、感心したようにうなずいた。

 この街で冒険者をやる人も、他の街に行く人もいるみたいだ。



「入れてやってもいいぜ」

 と、ガルドに声をかけられた。


「お前、今、パーティー組んでるの?」

 確か、パーティーのリーダーがお縄についたはず。他のメンバーで継続できたんだろうか。


「いや、この街で作る。村の出身者以外とも組んでみたいしな」

 ああ、そういうこともできるか。

 同じ村出身ということで気心が知れて、保護してもらえた面もあったが、新鮮味はなかっただろう。


 まあ、いいか。パーティーを作っていくのも楽しそうだ。

「じゃあ、よろしく」


 なんとなく、握手を交わす。

 おう、冒険者っぽいな。これだけで少しワクワクしてしまった。



 宴会のパーティーから離れて、冒険者のパーティーに加入する……いかん。

 ダジャレを言うオッサンみたいだ。



 こほん、気を取り直して……。


 ついに、俺の冒険者生活が始まるのだ!


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