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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第二章 三年目の下ごしらえ

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慌ただしい後始末

 翌日、俺とエドガーは山猫亭に移った。


 夜中にドアを控えめに叩く音がして、クランで働いている女性たちが代わる代わる、猫なで声で「開けて」と言うのだ。

 合鍵を持っていたら怖いので、荷物をドアの前に置いて、耳栓をして寝た。


 なんだよ、夜這いか。ハニートラップか。

 クランが解体されたら行き場所がないから、寄生するつもりか。

 冗談じゃないぞ。



 だから、エドガーが「出されたものを口にするな」と言いだしたんだな。

 媚薬とか睡眠薬とか?


 そんなこと俺にしかけて、村長の息子のエドガーにバレれたら、村に帰りにくくなるだけだぞ。

 というか、エドガーの部屋に先に行っているかも……。

 あの人なら、誰が来たか記録を取ってるぞ。




 もう、失恋して恥ずかしいとか、いっている場合じゃない。

 夜が明けてすぐに、山猫亭に移動した。


 朝食の準備を手伝うことで、まかないの朝食をいただく交渉をした。

 安心して食べられるのって、大事だな。

 数日分の宿泊を予約して、俺とエドガーはクランハウスに戻った。




 アーデンは寝不足のひどい顔をしていた。

 信用していた……というか、何とかなると思っていたクランが、めちゃくちゃになっていると知ったからだろう。


 今回、クランをたたむ事態に陥ったから判明したけれど、冒険者を続けられる状態だったら気がつかなかったのだ。

 ちょっとは反省した方がいいかもな。


 それから、村に戻ったら、元片腕に平謝りだろ。



「モンスター相手の方が、楽だ……」

 アーデンが弱音を吐いた。



「はい、はい、はい。

 じゃあ、僕が采配を振るっちゃうね」

 エドガーがテキパキと動き出す。


 みんな村の出身なので、エドガーの指示に抵抗なく従う。



 まず、ワイバーンの現場に向かう冒険者たちを指名した。

 俺は彼らと計画を立てる。

 予算を確認して、行きがけに購入するもの、連れ帰るか現地での生活支援をするかの判断基準、妬まれないように多少現地にも寄付をして……考えることは山ほどある。


 彼らと一緒にホテルのある街まで行き、俺はホテルに戻る予定だ。




 エドガーは、アーデンのクラン仕舞いを手伝う。


 横領していた奴らは、冒険者ギルドに突き出すことに決まった。

 横領するために、クランの経営をしていた冒険者を害したことも許されない。


 アーデンの管理能力を問われるが、帳簿が何ヶ月分も白紙なのを今更ごまかせないので、それを込みで報告した。




 奴らは冒険者の資格を剥奪された。

 故意に冒険者仲間を傷つけた分は、一日、訓練場に磔にされる。その間、奴らに何をしても不問にされる刑が科された。

 ただし、労働刑が待っているので、作業できなくなるような暴行は禁止。暴言とか、ゴミを投げつけられるくらいかな。

 磔の間はトイレに行けないので、それだけでもプライドは粉々になるだろう。



 奴らの財産を没収して、横領の穴埋めをするのは当然のことだが、もちろん足りない。

 残りは労働刑で工面するため、どこかに移送されるらしい。行く先は、誰にも知らされない。

 冒険者に奪還を計画されたら面倒だからだ。




 クランハウスは、別のクランから購入希望が来たので、エドガーが商談に入った。

 家具をどうするかとか、犯罪が発覚してイメージが悪くなったとか、お互いに交渉材料を使って有利な条件を勝ち取りたい。

 腕っ節ではない、経理担当のガチンコ勝負。これも、そうとう迫力があった。




 そんな中で、アーデンは松葉杖で歩く練習を始めた。

 それを支えたり、献身的に面倒をみたりしている女性がいた。


 エドガーは、彼女にだけアーデンと村に帰ってくるかと訊いていた。

 どうやら、二人はいい雰囲気になっているらしい。

 村に一緒に帰ったら、所帯を持つ流れになるだろう。



 俺たちに夜這いをかけて依存先を探している間に、真面目に仕事をしていた人が幸せを掴む。これが王道というものだ。



 クランハウスに残された、そこそこの冒険者たちに構う余裕はなかった。

 普通に、他の村の出身者みたいに、自分の力でやっていけばいいんだから。

 もしくは、他のクランに自分たちをアピールしに行ったり、な。



 こうして、ワイバーンの登場によって、多くの人の人生が変わっていった。


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