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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十一章 王都へ

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四日目 増員

 今日は商隊用の馬車で、犬獣人のダルグと組む。

 突発的なことが起こったらダルグが真っ先に動くから、何事もなく一日一緒にいられるといいのだが。


 この宿場町の冒険者を、領境までの警備として雇ったと、商隊長ロイが発表した。


「今日の午後までの付き合いになるが、よろしく」

 獣人ばかりのパーティーだ。

 トカゲのような爬虫類も「獣人」と呼んでいいのかな? 肩幅が広くて強そうだ。太い尻尾で攻撃されたら痛いんだろうな。


 現地での情報をもらって、ロイと騎士のトゥランが打ち合わせをしている。商隊の前方と後方の警戒をしてくれるそうだ。

 四台の馬車が分断されたときのために、各馬車にポーションの箱が配られた。周囲を警戒している兵士や冒険者は、怪我をしたら近くの馬車に退避すればいい。


 獣人のパーティーは、Aランクパーティー「光牙の道標」とも顔見知りらしい。

 この状況で安心できる護衛が増えるのはありがたい。



 昨日の戦闘でひどい怪我をした場合はポーションで治療したが、軽い怪我は普通の手当をされている。包帯を巻き、薬草の匂いをさせた兵士が横を通った。


「あの、ポーションで治さないんですか?」

 何度か食事を一緒にとって顔見知りになっているので、訊いてみた。


「ああ、ポーションを頻繁に使うと、自然に治癒する力が衰えるからな。それと、筋トレの効果が減る」

 筋肉を痛めることで筋力をアップする方法があるそうだ。


「俺もやったら筋力アップできますかね?」

 ワクワクしながら訊いた。

「う~ん、体質もあるからな。効果がある奴もいるが、やり方を間違えて筋を痛める奴もいるぞ」

 兵士は、あまり嬉しくない情報をくれた。


「鍛える筋肉と戦闘スタイルの組み合わせは、ちゃんと考えないと駄目よ」

 槍術士のメルティナが通りかかって、教えてくれた。


「メルティナさんは、あんまり筋肉質じゃないですね」

「私は筋肉がつかない方ね。握力を補助する手袋と遠心力をうまく使っているの」

 なるほど。そういう工夫をしているのか。



 馬車に乗ったら、グレタばあさんがいた。養鶏場でぬいぐるみをささっと作り、流行の元になった人だ。


 膝の上に毛皮を広げて、ブラシで毛並みを整えている。

「縫い物はできないけど、素材の準備は進められるからね」

 昨日の襲撃に怯えていないのはありがたい。


「こっちの馬車は普通の木と布だろ? 昨日は大丈夫だったか?」

 強がっているだけじゃないといいなと思い、念のために訊いてみた。


「魔法使いのオルドが何やら保護をかけてくれたからね。ルナとサァラもいて、大活躍さ」

 グレタばあさんは、冒険活劇を見たかのように話してくれた。



 緩やかな登り坂で、馬車の速度が落ちている。

 午前中に狭い谷になっている部分を通る。

 襲われるとしたら、そこだろうか――朝から緊張感があった。


 午前中の休憩のあと、御者台にダルグと並んで座った。

「襲撃が来たら、お前は馬をなだめて、守れ。

 鎧を着た人間と戦ったことはあるか?」


「ありません」

 というか、人を殺したことはない。


「動く鎧の隙間を狙うのは難しい。ベルーフに小道具をもらったりしていないか?」

「いくつかお借りしています」


「体格に恵まれなかったら、知恵と道具で乗り切るんだ。

 道具は奪われて、こっちの攻撃に使われたらマズい。

 うちのパーティーは、オルドが使用者権限を付与している。だから渡す前にお前も使用者登録しているはずだ」


「あ、そういえば、その場にオルドさんもいました」

「もし、ランクアップを狙うなら、そういう作戦も立てられるようになれ」


「ありがとうございます。

 なんで、そこまで親切に教えてくださるんですか?」

 護衛の仕事をしながら、俺たちCランクのパーティーを育成してくれる。

 冒険者ギルドが口添えしてくれたとしても、ここまで丁寧に、自分たちの戦い方を開示してくれる人は珍しい。

 敵対した場合、その情報が命取りになるのだ。


「……英雄アーデンと同じ村出身なんだろ?

 あいつへの借りを返しているだけだ」


 懐かしい名前が出て来た。


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