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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十一章 王都へ

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三日目 人間関係

 宿の朝食は、なんというか……素材を活かしたものだった。

 肉、野菜があまり手をかけない状態で、どーんと皿に載っている。


「獣人はこういう傾向があるにゃ」

 猫獣人のサァラは、申し訳なさそうにしょぼんとした。

 別にサァラのせいじゃない。


「逆に、変なものを混入される心配がないかもしれないぞ」

 一昨日、腹下しのハーブを入れた料理を出されたからな。それに比べたら、シンプルでいい。


「共和国というだけあって、領ごとに特色が違うんだな」

 俺の出身地、レスタール王国は人族中心だ。隣り合う領で違いがあるという話は、聞かなかった。

 といっても、自分の目で見たわけじゃなく、宿に泊まる冒険者や商人から聞いた話だ。


「そうね。このファルガン共和国は五つの国に囲まれているし、海を隔てて二つの国が近いの。

 それぞれの国から来る人が、住みやすい領を選ぶとどんどん特色が強くなっていくわ」

 フォンが地理を教えてくれた。




 今日は、槍術士のメルティナと組むことになった。ダークエルフで、浅黒い肌と長い耳をした女性だ。

 護衛するのは、昨日と同じぬいぐるみを積んだ荷馬車。


 ベルーフも同じ馬車だが、花猫風月の他のメンバーは違う馬車に乗っている。

 俺は御者台に座り、メルティナは屋根の上で警戒を担当していた。


 少し大きめの声で話しかけられた。

「ねえ、トーマ君。ブロンズタートルの討伐方法は、どうやって思いついたの?」


 ええ? 前の冒険者パーティーで、その討伐中に「要らない」と言われて殺されかけた。

 いわゆるトラウマ案件なんですけど。


 大きなため息が出た。


「あれは……」

 しかたなく話し出したが、続く言葉が出なくなった。

 あれ?


「うん。聞いてるよ?」

 メルティナが、黙ってしまった俺に先を促す。


 俺は喉に手を当て、しばらく考えた。あの時の恐怖が、体に染みついているのかもしれない。

 以前、冒険者ギルドのギルドマスターの部屋で証言したときは、ルナかサァラかフォンの誰かが、温かく励ましてくれた。


 まだ普通に話すのは無理なんだな。

 と、自分のことなのに他人事のように分析して、この場をどうするか考えた。


「冒険者ギルドの資料室で調べただけですよ。

 ちょっと、御者に集中したいので、すみません」

 嘘ではない。

 周囲の状況を観察しなければいけないのだ。


「あ、そうだね。ごめん」

 メルティナは大人しく引き下がった。


 ホッとして、御者に専念する。

 事情を知らないのだから彼女のせいではない。けれど、苦手意識が芽生えてしまった。

 ちゃんと話したくない理由を説明した方がいいかと一瞬悩んだが、五日間だけの付き合いだ。休憩時間に近づかないようにして、やりすごそう。




 日の出と真昼の中間である「朝中」の休憩時間に、会議が開かれた。

 この先の二股で、右に行くか左に行くかということだ。

 どちらを選んでも、王都の前で再び合流する。


 どちらがより平和に進むことができるか?


 右側の道の途中にはこの土地の領主の屋敷があるので、左側の道より整備されている。

 また「寄っていけ」と屋敷に招かれる可能性がある。

 一昨日の娘は人族だったが、獣人に同じように理不尽なことをされたら、怪我人が出てしまうだろう。


 左側の道も、商人の馬車が往来するのなら充分満足できる状態だ。

 ただ、途中で別の領地から伸びてくる道と合流している。

 その「別の領地」には、今回のぬいぐるみに関して、かなり強引に出てきた貴族がいる。


 領主の孫エリオットと領主軍の騎士トゥラン、それから商隊長のロイが話し合うのを、俺は少し遠くから眺めていた。


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