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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十一章 王都へ

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出発

「おう、すごい荷物だな」

 重戦士のダルグが、俺たちを見て声をかけてくれた。


「王都滞在がどれくらいになるか、わからないので」

 ルナが代表して答える。今回は冒険者ギルドに荷物の一部を預けず、全てを持ってきている。いわゆる全財産だ。


「ああ、俺たちもランクが上がって拠点を構えるまでは、そうだったな」

 先日、酒を浴びるように飲んでいたベルーフが、思い出すように言った。


「拠点は家を買うというだけじゃなく、長期で不在にする間も任せられる人が必要だからね」

「信用できる人を確保するのも重要だ。それが難しいんだけど」

 Aランクパーティーの面々が、拠点を持つことについておしゃべりしだした。結構、重要な話だと思う。覚えておこう。



「大きな荷物は商業ギルドの職員に預けるか、領主軍のマジックバッグに入れていいぞ」

 騎士のトゥラン・マーロウが提案してくれた。


「商業ギルドもマジックバッグですか?」

 どちらがいいか考えながら質問する。


「いや、商業ギルドは収納魔法だそうだ。あっちにいる、荷物係の女性の――」

 指差された方を見ると、荷物係はグレタばあさんと何かやり取りをしていた。


 荷物係の女性は朗らかに説明してくれた。


「私が魔力切れを起こさない限り、収納しておけます。死亡時は吐き出されるのか、取り出せなくなるのか不明です。

 マジックバッグはそのような心配はありませんが、盗まれる可能性があります。

 どちらを選びますか?」


 どっちも長短あるわけか……どうしよう。

 俺たちは話し合って、リスクを半分にすることにした。

 それぞれに、荷物を二人分ずつ預ける。片方が駄目になったら、残った方の荷物でなんとかしよう。


 ちなみに、馬用の飼料はマジックバッグに入れないらしい。運ぶのには便利だけど、すぐに食べさせたいときは出し入れが面倒ということか。



 商隊長のロイが、今日の布陣を発表する。


 領主軍は、エリオット様の馬車を中心に配置された。

 ぬいぐるみを積んだ荷馬車は、槍術のエルフと索敵のドワーフが警護する。

 旅用の荷物を積んだ商隊用の馬車は、重戦士の獣人が警護。

 護送車は、元王宮護衛の雪豹獣人が手綱を取る。


 Aランクパーティーの魔法使いは、自前の馬で遊軍のように動き回る。


 俺は雪豹獣人のラティーアの横で参加することになった。警護をしながら、護衛のやり方と自衛の講義を受ける。


 他の三人も、それぞれAランクの冒険者からいろいろ教わる予定だ。

 俺たちだけ、研修旅行みたいな感じだが、いいのかねぇ。まあ、ギルドマスターの采配だからいいんだろうけど。



 俺がラティーアに挨拶をしているのを、サァラが羨ましそうに見ていた。憧れの豹獣人らしいが、別の日に組めるはずだから、その日を待ってくれ。


 護送車の御者台に並んで座った。

「トーマは御者ができるのかい?」

「小さめの荷馬車なら練習しました。こんな大きいのは経験がないです」

「では、街を出て平坦な道になったら、短時間だけ手綱を握っていいよ」


 俺たちはトゥルメルの中心街を列になって進む。

 騎士が先導し、領主の家紋が入った立派な馬車が進んでいく。その後ろを商業ギルドの頑丈そうな作りの馬車、厳めしい護送車と続いていく。

 早朝から動いている人たちは目を丸くした。


「ありゃ、何のご一行様だい?」

「さてね」

「あ、ぬいぐるみの納品じゃない? 王都に行くのよ、きっと」

「領主様がいるのはわかるけど、護送車がついてくのはおかしくねぇか」

「じゃあ、違うか」


 そんなささやきが交わされていた。


 多くの人々は立ち働くうちに、今朝見た馬車のことなど記憶の片隅に追いやってしまう。

 一部の人間は、それを合図に動き出した。


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