鉱石スライム
カツンコツンと音がする。
普通のスライムが音もなく近づくのに比べて、鉱石スライムは初心者に優しいと言える。
このフロアは、モンスターが二匹同時に出ることもある。
ヒトスラユニで、二人ずつの二チームに組み分けした。
ルナとフォン、サァラと俺の組み合わせになった。
ルナとフォンの闘いの邪魔にならないよう、俺たちは少し距離を取った。二匹目が出てくる可能性があるので、警戒も怠らない。
フォンが、風魔法で鉱石スライムの周辺を取り囲む。
結界というほど強くはないが、鉱石スライムの動きは鈍くなった。
そこにルナが手斧を叩き込む。ガツンと硬質な音が響いた。
「も、いっちょう」
ルナが声で景気をつけるように、二打目を叩き込む。
鉱石スライムは破片になって飛び散った。
俺たちの方にもこぶし大の破片が飛んできた。
フォンが風魔法でそれを捕まえ、勢いを削いで落下させた。
「うわぉ。フォンありがと」
サァラは顔を防御しようと上げた腕を降ろした。
「昔はこの破片が直撃したにゃ」
サァラが俺の顔を見て、説明してくれた。
「私も日々進歩しているのよ」
フォンが微笑んだ。昨日いじけていたのが嘘みたいな、いい笑顔だ。
二層にもトロッコのレールが敷かれているので、それに沿って歩いた。
だが、一層がもともと敷かれていたものに対して、二層はそれを模倣したもののようで、所々不自然だ。
枕木とレールが一体化していたり、レールの幅が場所によって違う。
そんなことを観察していたら、二匹目の鉱石スライムが現れた。
動きは鈍いが、押しつぶされそうな迫力に、心が負けそうになる。
攻撃を外してのしかかられたら、骨折する。足をやられても、ダンジョンの外まで自力で戻らなければいけない。
俺は鉤棒を構えた。
何度か鉱石スライムを突く。手に重さが伝わってきた。
鉱石スライムのでこぼこした表面に引っかけられたので、上半身の勢いを乗せて一気に転がした。
一見、上下など関係ないように思うが、ひっくり返すとしばらくは前進できないようなのだ。モゴモゴと動く様子は、ひっくり返した亀のようだ。
そこにサァラが拳を叩き込む。
今度は飛び散らずに、ウゴウゴと蠢いたあと、シュンと消えた。また、カランと魔石が転がる。
チッとかすかに舌打ちが聞こえた気がした。
振り返るとサァラが眉をひそめている。
もっと遠くから聞こえたような気がしたが……。
俺の戦い方がお気に召さなかったか?
でも、サァラならちゃんと言ってくれるはずだ。だったら、別のことだろう。
「大丈夫か? 怪我とか、何か気になることがあるのか?」
硬くて重量のある鉱石スライムを叩いたのだから、手首を痛めてもおかしくない。
気軽に訊けるような関係が、俺は少し嬉しかった。
ちらっと、俺が勧めたグローブに不具合があったかと不安になる。
実家では、父の舌打ちひとつで背筋が縮んだことをふと思い出した。自分が何か悪いことをしたのかと……怯えていた日々。
もう、過去の話だ。
「今、舌打ちしたの、あたいじゃないにゃ」
忌々しげな答えが返ってきた。




