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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第九章 ダンジョン

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ダンジョン二日目

 夜番用の線香が燃え尽き、四番目の当番だったルナが俺たちを起こした。

 ダンジョン専門の泥棒もいるから、夜番は欠かせない。


 しっかり寝ているはずだが、あくびしながら火をおこした。


 お湯が湧く間に身支度を整え、準備運動をして体をほぐす。

 パンにチーズ、ドライフルーツとナッツを手早く並べた。

 目覚めがいいように、紅茶は濃いめに淹れた。


 さっと食べて、二層に向かうことにしよう。

 朝食を片付け、焚き火の始末をする。


 ふと見ると、子どもたちは毛布を畳んでいる。ふざけて怒られる光景は、ありがちで平和な日常だ。

 荷造りするのにも時間がかかっていた。慣れだからな。頑張れ。



 肩慣らしにラグラットを討伐しながら、二層への階段に辿り着いた。


 ここを降りたら、鉱石スライムが出る。

 鉱石を食べて増殖したスライムは硬く、斬撃が通りにくい。

 無理に切ろうとすると武器の方が負ける。刃が滑って手首を痛める冒険者もいるらしい。


 ルナは半月刀を鞘に収め、手斧に持ち替えた。

「三日月ちゃんが刃こぼれするのを気にしないですむ」


「荷物が増えるけど、モンスターに合わせてグローブを換えると効率がいいにゃ」

 サァラはグローブをトゲトゲつきのものから、第一関節まで強化されたタイプに換えた。



 ダンジョンのいいところは、出てくるモンスターがわかっているから対策が立てやすいことだよな。


 さて、俺自身はどうしよう。

 鉤のついた長い棒で鉱石スライムの動きを邪魔するか、ボウガンで射てみるか……。

 どちらも今回初めて使ってみる武器だ。

 訓練場で練習したときは、どちらもなんとか使えるようになったレベルだ。


「両方準備しておけばいいじゃない。使わない方は私が持っていてあげるわよ」

 フォンがにこやかに提案してくれた。


「失敗してもすぐにフォローに入ってやるよ」

 ルナが男前な発言をした。


「実践で使ってみないと、どっちが向いているかわからないにゃ」

 サァラが拳を軽く打ち合わせた。付け替えたばかりのグローブから、ガツンと硬質な音がする。



「私だけ、チェンジするものがないわ」

 フォンがそう言って、拗ねる真似をした。


「取り替える必要がないのが、一番強いにゃ。獣人でも、道具を使うのは弱いって考える猛獣系がいるん」


「猫と虎が勝負するなら、道具を使う方がフェアってもんだろ」

 ルナがばっさり切り捨てる。


 そうだ。生まれつきで勝負できなければ、努力と知恵で補えばいい。

 それは、恥ずかしいことじゃないんだ。


「じゃあ、まず鉤棒を試してみたい。フォン、ボウガンを持っててもらえるか?」


「了解です。あ、私が射てもいいかもしれないわね」

 いたずらっ子のような表情をして、フォンが受け取った。


「よし。じゃあ、階段を降りよう」

 ルナのかけ声に、俺たちは「おう」と応えた。


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