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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第九章 ダンジョン

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ラグラット比べ 講評

 俺が肩で息をしていると、わっと歓声が沸いた。

 距離を取って見守ってくれた三人が、近づきながら賞賛の声をくれた。

「成功だにゃ」

「直接攻撃しなくても、仕留められるのね。勉強になったわ」

「おお、立派立派。自信持ってCランクを名乗れよ」


 あ。俺が「戦闘力でCランクに達してないかも」と悩んでたの、知ってるんだな。



 一緒に歩いてきた子どもたちもすごいと褒めてくれた。

 怪我をせずに討伐できる方法は、初心者たちにも参考になるだろう。


「あの、あたしたちも真似していいですか?」

「いいけど。金具が何日か経っても使えるのか、強度は保証できないぞ」

 なんせ、今日初めてやった方法だからな。


「ロープの結び方を覚えないとな。

 ちょうどよく締められて、ほどけない結び方は冒険者ギルドの資料室で調べられるよ」


 うなずく女の子の横で、元気のいい男の子がべぇっと舌を出した。



 彼らと別れて、俺たちは奥に進む。

 初心者の彼らは日帰りなので、もう少し狩ったら帰るそうだ。


「慎重さと臆病の区別がつかない若者は多いにゃ」

 サァラが誰に言うともなく、口にした。


 さっきの子どもたちの話かな。あの男の子は、俺のことを臆病者だと思ってそうだった。


「失敗して学ぶとは言うけど、冒険者は失敗したら死ぬかもしれないからなぁ。無謀に突き進んで、十三歳になれない子も多い」

 ルナがすごいことをさらっと言った。


「トーマが専業の冒険者になったのは十五歳くらい? 同世代は、すでに『生き残れた子たち』だったのよ」

 フォンが微笑んだ。



「来るにゃ」

 サァラの耳がピクリと反応した。


「フォンがウィンドボール、サァラが蹴って方向誘導、あたしが威嚇して、トーマが背中に乗って短剣」

 ルナが矢継ぎ早に指示を出す。


 フォンがラグラットを受け止めるように立つ。それを受けたあとに着地しそうな地点へ、サァラが移動する。

 サァラに蹴られたラグラットが脇道に逸れることを想定して、ルナが立ち塞がる。俺はその対面にある木箱に乗った。



 あとは作戦どおりだ。ラグラットは翻弄されるがまま、俺たちは危なげなく討伐する。

 俺のやることも、力任せじゃなく、モンスターの急所を狙ってざくりとやるだけだ。

 体力を使い切っていないから、すぐもう一体来たとしても対処できるぞ。


「連携すると楽だな」

 心の底からの言葉だ。


「そりゃ、そうにゃ。そのためのパーティーなんだから」

 サァラが笑った。



 このときの俺は、知らない。

 後日、ギルドマスターにため息を吐かれることを。

「モンスター討伐で腕比べをして遊ぶ奴が出てきた。無茶するから怪我人が増えた。

 鍛冶屋が一斉にダンジョンに押しかけて、冒険者登録しないとダンジョンに入れないと制止する職員とトラブルになった。現地見学は諦めたがそれっぽい金具を作って売り出した。

 それを買って罠を仕掛けまくる冒険者が出てきた。足元に金具を埋めるバカがいるから、定期的に職員が見回って回収しなきゃいけなくなった。

 お前は大人しくしていられないのか」


 それって、俺のせい……ですかね? 説教されるの、納得いかないなぁ。


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