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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第九章 ダンジョン

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ラグラット 四匹目

 フォンには申し訳ないが、失敗してくれてありがとう。

「これで俺だけ討伐できなかったら……」というプレッシャーから解放された。

 こんな卑怯なことを考えていることは、絶対に知られたくない。



 俺は即席で罠を用意する。

 ダンジョンの壁を掘り、太い釘を刺す。しばらくすると削ったはずの部分が修復される。すると、釘がしっかり壁に固定されるのだ。

 それを通路の右壁と左の壁、それぞれ二点、合計四カ所に釘を打ちつけた。


 次はそれにロープを絡ませる。

 ラグラットが突進してきたら、ロープを引いて首か胴体を締めあげるのだ。


 締めるためにロープの端を持ち、おびき寄せるためのリンゴをハンカチの上に置いた。直に置いたらダンジョンに吸収されてしまうからな。



「兄ちゃん、何やってんだ。邪魔だよ」

 後ろから子どもの声がした。


 冒険者になりたてといった雰囲気だ。

 もう日帰りの冒険者たちが来る時間になっていたんだな。


 ルナたちは、少し離れたところからこちらを見ている。

 一応、刺客じゃないかと警戒はするが、「子どもを使う悪党」が敵じゃないことを願ってしまう。



「悪かったな。ロープをまたいで行ってくれるか?」

 通行の邪魔なのは確かだ。謝って、先に進んでもらおう。


 子どもといっても、十二歳のスキル判定は終わっているだろう。

 別の子どもが俺に話しかけた。

「これは、何をやっているんですか?」


「ああ、ラグラットを罠にかけようと思ってさ」


「……見ててもいいですか?」

 少し顔を赤くしながら、緊張した声で言う。


「いいよ。上手くいくかはわからないけど」


「ちょ、勝手に決めんなよ」

「あたし抜きで行っていいよ。これは、見ないと損する気がする」

「じゃあ、俺も見てく」

「お前らー!」

 子どもたちが坑道の中央で騒ぎ出す。


「そこの子たち。見学するならこっち来い」

 ルナが声をかけた。


「え、仲間? そんなに離れて……喧嘩してるんですか?」

 罠を見たいと言い出した女の子が俺とルナたちを見比べて、おろおろする。


「あ~、違う違う。一人で一匹倒すルールで競争してるだけ」

 改めて説明すると恥ずかしいな。ダンジョンでいい大人が遊んでるって。


「なんだそれ。カッコいいな!」

 最初に邪魔だと言い放った男の子が、興奮したようにはしゃぐ。


「だから、こっち来いって」

 ルナがもう一度手招きすると、子どもたちはまとめて移動した。いきなり素直になったな。


 ――で、改めて観客が増えたと。正直、恥ずかしいぞ。失敗したらどうすんだ、これ。



 待つことしばし。

 ラグラットが現れた。

 鼻をぴくぴくさせ、リンゴめがけて走ってくる。


 俺は放置された木箱の隅に隠れて、ラグラットが罠に差し掛かるのをジリジリと待つ。

 早すぎても駄目だ。


 よし、今!

 ロープを思いっきり引っ張る。

 地面に着いていた部分が浮き、ロープで作った輪が締まって、ラグラットは捕獲された。

 首に掛かったのでこのまま宙づりにしたいが、暴れるモンスターの力は強い。

 くそっ、筋力が足りねぇ。


 線路の枕木に踵を引っかけて、力比べをする。

 ここで、負けるわけには……逆に枕木が負けて折れ、俺は体勢を崩した。


 すぐ隣の枕木に足を引っかける。


 ラグラットはとにかく逃げようとして、首の輪が締まり……自滅した。

 こっち側に反転して来なくてよかった。


 その場合は短剣で闘うつもりだったけど。

 革の手袋が擦れて、手のひらから血が滲んでいる。


 カラン。

 魔石が転がる小さな音がして、ラグラットは消えていた。


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