表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第九章 ダンジョン

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

107/115

ラグラット 三匹目

 いじけたダンゴムシ状態のフォンを横目に、俺は昼飯の用意を始めた。


 何か食べたら気持ちがリセットされるかもしれない。

 それに、ダンジョンの中では時間の経過がわからないので、意識的に生活リズムを整える必要がある。

 そのために食事の時間を目安にするといい……と、本に書いてあった。


 だって元いたレスタール王国にはダンジョンがなかったし。前回の初ダンジョン探索は「ダンジョンの謎」が気になって、日帰りで実験を繰り替えした。

 だから、長時間潜るのは初めてなんだ。


 内心、ドキドキしっぱなしだぞ。



 保存が利く硬めのパンの上に、チーズと燻製肉の薄切りを乗せた。

 本当なら温かいスープでもつけたいところだが、安全なセーブポイントではなく坑道の途中だ。ゆっくり火をおこしたりしていられないからな。


 喉に詰まらないよう、コップに乾燥したハーブを入れて水を注いだ。口の中がスッキリするハーブで、余裕があったらお湯で煎れたいところだ。


「おーい。お昼にしませんか」

 ちょっとおどけて声をかけた。


「わー、美味しそう!」

 サァラも、誰かに聞かせるように明るく言う。それでもダンゴムシは動かない。


「早い者勝ちな」

 ルナが本当に食べてしまいそうな勢いで言うと、もぞもぞと動き出した。


 うつむき加減で「いただくわ」と小声で言うフォン。

 俺とサァラとルナは目を合わせ、これ以上はからかうのをやめようと誓い合った。




「さて、次はあたいの番ね」

 簡単な昼食を終え、サァラは手をパンパンと叩いてパン屑を落とした。


「歩きながらラグラットに遭遇するのを待つにゃ。右と左、どっちに進む?」


 ダンジョンの入り口で借りた地図を全員でのぞき込んだ。

 ダンジョンに入る際に入場料を払い、引き換えに簡単な地図を渡される。


 深い階層なら迷っても助けに行けないが、浅い階層の場合は温情で捜索隊を出さざるを得ないこともある。その予防策として、簡単な地図を渡すようになったらしい。


「二層へ最短で降りるか、一層で『当たり』を期待するか……」

 ルナがメンバーに問いかけた。

 ダンジョンのラグラットからは、たまに「当たり」と呼ばれる珍しい種類の魔石がドロップすることがある。


「……まず、全員がラグラットと闘わないといけないわよね?」

 フォンから、何やら迫力のある圧を感じる。


「んじゃ、最短コースはなしね」

 サァラが荷物を背負った。


「戦闘するんだから、荷物は持つよ」

 俺は荷物を受け取った。


「あ、あ……そっか。ありがとにゃ」

 サァラの頬が赤くなり、ニッと顔全体で笑った。

「あたいの勇姿を見せるん。期待して」


 俺は自分の荷物を背中に、サァラの荷物を左手に持つ。


「とっさに短剣が抜けないこともあるから、右手に短剣を用意した方がいいかもしれないわ」

 フォンが助言をくれた。


「なるほど。午前中もそうしておけばよかったな」

「なにごとも、経験して改善していくものよ」

 フォンは素っ気なく言った。



「――来る。壁にひっついて」

 先頭を歩くサァラが俺たちに指示を出した。


 言われたとおりに壁際に退避する。



 突進してくるラグラット。

 サァラはジャンプして、ラグラットの背中に飛び乗った。

 ラグラットの首のあたりの毛を掴んだまま、ラグラットの背中を軽く蹴って、反動で自分の体を一瞬宙に浮かせる。

 体が落下する勢いに合わせ、ラグラットの背中を膝で強打した。


 グボッとラグラットが声を漏らし、地面に叩きつけられる。


 サァラは倒れたラグラットの首に腕を絡めた。

 太い首筋が締め上げられ、ラグラットが暴れる。鋭い爪がサァラの腕にかすった。

 だがサァラは離れない。


 狂ったように手足をばたつかせたあと、けいれんして、動かなくなった。


 その背中で、サァラは荒い息をしながら座りこんでいる。

「はぁ、はぁ。……仕留めたにゃ」

 ラグラットの体の輪郭が揺らぎ、消えると同時にサァラが地面に落ちた。

「痛っ。すぐに降りなきゃだった」


「それより、傷ができているじゃない」

 フォンが毒消しの瓶を持ってサァラに駆け寄った。


「接近しないと戦えないからにゃ~」

 サァラは大人しく、治療を受けていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ