ラグラット比べ 一匹目
討伐比べは、ルナ、フォン、サァラ、俺という順番になった。
順番は「ヒト・スラ・ユニコ」という、一斉に手を出すゲームで決めた。
俺は知らなかったので、ルナが説明してくれた。
「ヒトはスライムを狩る。
スライムはユニコーンの寝込みを襲う。
ユニコーンは人を翻弄する。
ヒトは指二本、スライムは握りこぶし、ユニコーンは一本指」
なるほど。平和的に素早く決められるな、と感心した。
さぁ、ダンジョンに入ろう。
いつもなら先頭はサァラだが、今日は腕比べの日だから先頭をルナが歩く。
前方からラグラットが飛び出してきたら、競技開始。もし後方から出てきたら、いつもどおり協力して討伐する。
「先頭って、緊張するな」
ルナは「肩に妙な力が入る」と言って、肩を回してほぐした。
この一層では、トロッコの線路に沿って歩く。
線路自体が迷路のようになっていて、そこから外れなければ初心者でも安全だと言われている。
線路の先は、行き止まり、ラグラットの巣、二層への入り口と様々だ。
「師匠が初心者の教場訓練を嫌がるのは、いきがってる奴が線路のない道に入りたがるってのがあるんだ」
ルナは線路が敷かれていない道からモンスターが出てこないか、目線で確認する。
ああ、ルナのビキニアーマーの師匠か。
ぬいぐるみを作るために一角ウサギの毛皮が必要になって、初心者向けの狩り場で大暴れした人ね。
やりすぎだと叱られ、教場訓練のペナルティを課せられたと聞いている。
「教場訓練って、普通の討伐依頼に初心者がついて行くんじゃないのか?」
俺がいた隣国のエレッサ支部には、教場訓練なんてものはなかった。
「その方が多いけれど、ダンジョンの方が空振りがないと考える子たちもいるのよ」
そうフォンが教えてくれた。
「探さなくても、あっちから来てくれるもんな」
そういえば、討伐対象を探せなくて依頼失敗ってケースもあるんだったな。
サッと斜め前方から飛び出してくる気配があり、ルナが素早く上段から切り下ろした。
カキーンと鋭い金属音と火花が飛んだ。
「くそっ。スライムかよ」
ルナが刀を鞘に戻し、手首を痛そうに振った。
雑魚すぎて忘れていたが、ここにはスライムも出るのだ。
ラグラットのつもりで力を入れたから、スライムを突き破った後、線路のレールを刀で叩いてしまったようだ。
「魔石も指でつまめないくらい小さいじゃん」
ルナは拾う素振りも見せずに、愚痴った。
自然界では大物からしか採れない魔石が、ダンジョンではほぼ全てのモンスターからドロップする。
「小さいのを集めて、瓶に入れて飾ったらキレイだと思うけどな」
窓辺に置いたら、キラキラして心が躍るんじゃないか。ちょっとした戦利品みたいで。
「そ、そういうことは、もっと早く言うにゃ」
「何か、空いている瓶か袋はないかしら」
サァラとフォンが騒ぎだした。賑やかだな。
「また、今度でいいじゃん」
と軽く言ったら、睨まれた。
反論しようと口を開きかけたとき、タタタッと足音が聞こえた。
ルナが半月刀を構える。
「今度は間違わねぇ」
突進してくるラグラットの鼻先に、切っ先を向けて待ち構える。
当然、ラグラットは避けようと進路を変える。
その背中を切り下ろした。
痛がっているが致命傷ではなく、ラグラットは鋭い爪を繰り出す。
さっと一歩下がってかわし、金属のブーツでラグラットの顔を蹴る。
ピギャーっと悲鳴があがり、最後の一閃で息の根を止めた。
さすが、このパーティーのエースだけある。楽勝だ。
パチパチと拍手で讃える。
ラグラットの体が揺らぎ、地面に吸収されるように消えた。そこに小指の先ほどもないくらい小さな魔石が残されている。
ルナはそれを拾うと、悔しそうに呟いた。
「これくらい、一撃で倒せないと……」




