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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第九章 ダンジョン

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ラグラット比べ 一匹目

 討伐比べは、ルナ、フォン、サァラ、俺という順番になった。


 順番は「ヒト・スラ・ユニコ」という、一斉に手を出すゲームで決めた。


 俺は知らなかったので、ルナが説明してくれた。

「ヒトはスライムを狩る。

 スライムはユニコーンの寝込みを襲う。

 ユニコーンは人を翻弄する。

 ヒトは指二本、スライムは握りこぶし、ユニコーンは一本指」


 なるほど。平和的に素早く決められるな、と感心した。



 さぁ、ダンジョンに入ろう。


 いつもなら先頭はサァラだが、今日は腕比べの日だから先頭をルナが歩く。

 前方からラグラットが飛び出してきたら、競技開始。もし後方から出てきたら、いつもどおり協力して討伐する。


「先頭って、緊張するな」

 ルナは「肩に妙な力が入る」と言って、肩を回してほぐした。



 この一層では、トロッコの線路に沿って歩く。

 線路自体が迷路のようになっていて、そこから外れなければ初心者でも安全だと言われている。

 線路の先は、行き止まり、ラグラットの巣、二層への入り口と様々だ。


「師匠が初心者の教場訓練を嫌がるのは、いきがってる奴が線路のない道に入りたがるってのがあるんだ」

 ルナは線路が敷かれていない道からモンスターが出てこないか、目線で確認する。


 ああ、ルナのビキニアーマーの師匠か。

 ぬいぐるみを作るために一角ウサギの毛皮が必要になって、初心者向けの狩り場で大暴れした人ね。

 やりすぎだと叱られ、教場訓練のペナルティを課せられたと聞いている。


「教場訓練って、普通の討伐依頼に初心者がついて行くんじゃないのか?」

 俺がいた隣国のエレッサ支部には、教場訓練なんてものはなかった。


「その方が多いけれど、ダンジョンの方が空振りがないと考える子たちもいるのよ」

 そうフォンが教えてくれた。


「探さなくても、あっちから来てくれるもんな」

 そういえば、討伐対象を探せなくて依頼失敗ってケースもあるんだったな。



 サッと斜め前方から飛び出してくる気配があり、ルナが素早く上段から切り下ろした。

 カキーンと鋭い金属音と火花が飛んだ。


「くそっ。スライムかよ」

 ルナが刀を鞘に戻し、手首を痛そうに振った。


 雑魚すぎて忘れていたが、ここにはスライムも出るのだ。

 ラグラットのつもりで力を入れたから、スライムを突き破った後、線路のレールを刀で叩いてしまったようだ。


「魔石も指でつまめないくらい小さいじゃん」

 ルナは拾う素振りも見せずに、愚痴った。


 自然界では大物からしか採れない魔石が、ダンジョンではほぼ全てのモンスターからドロップする。

「小さいのを集めて、瓶に入れて飾ったらキレイだと思うけどな」

 窓辺に置いたら、キラキラして心が躍るんじゃないか。ちょっとした戦利品みたいで。


「そ、そういうことは、もっと早く言うにゃ」

「何か、空いている瓶か袋はないかしら」

 サァラとフォンが騒ぎだした。賑やかだな。


「また、今度でいいじゃん」

 と軽く言ったら、睨まれた。



 反論しようと口を開きかけたとき、タタタッと足音が聞こえた。


 ルナが半月刀を構える。

「今度は間違わねぇ」


 突進してくるラグラットの鼻先に、切っ先を向けて待ち構える。

 当然、ラグラットは避けようと進路を変える。

 その背中を切り下ろした。


 痛がっているが致命傷ではなく、ラグラットは鋭い爪を繰り出す。

 さっと一歩下がってかわし、金属のブーツでラグラットの顔を蹴る。

 ピギャーっと悲鳴があがり、最後の一閃で息の根を止めた。



 さすが、このパーティーのエースだけある。楽勝だ。

 パチパチと拍手で讃える。


 ラグラットの体が揺らぎ、地面に吸収されるように消えた。そこに小指の先ほどもないくらい小さな魔石が残されている。


 ルナはそれを拾うと、悔しそうに呟いた。

「これくらい、一撃で倒せないと……」


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