ダンジョン遊戯
ダンジョンの入り口には、もう職員が待機していた。
冒険者タグを見せ、ダンジョンに入るための手続きをする。
前回より職員が多い。しかも事務系だけじゃなく、第一線を退いた冒険者っぽい職員が増員されている。
俺かフォンに何かあったときに、すぐ動けるようにしているのかな。いや、それは自意識過剰か?
「強制じゃないけど、できたら六層以下には行かないでほしいかな」
と、さりげなく言われた。気のせいじゃなかった。
六層以下は、Cランク以上の冒険者向けと言われている。
護衛をすることを考えたら、その手前で遊んでいてほしいということか。
「ん~、考えておくよ」
ルナは即答を避けた。
前回は俺の実験に付き合って二層までしか行っていないから、欲求不満になってるのかもしれない。
「今日、初心者はどれくらいいる?」
深く潜れないなら、潜れないなりの楽しみ方はある。後で、ルナも納得できるような案を提案してみよう。
「一層にどれくらい人がいるかって話?
今のところはそんなにいないかな。
歩いて来る初心者が着くのは昼前だろうし。初級者は腕試しがしたくて、すぐ二層を目指して足早に通り抜ける奴が多い」
職員は俺が要求を呑みそうな雰囲気を察して、安堵の表情を浮かべた。
こういうところは持ちつ持たれつ、お互い様だからな。
ダンジョンの入り口で、それぞれが体をほぐす。
怪我をしないための準備運動だ。
脇腹を伸ばすように上半身を傾けながら、提案する。
「一層はラグラットだろ。Dランクなら四人以上、Cランクなら一人で一匹」
だから、Cランク四人となると過剰戦力とも言える。
「一人ずつ討伐して、その技を競い合わないか? 早さとか怪我の少なさとかでさ」
「それ、面白いにゃ。やるやる」
サァラが乗ってくれた。
足の腱を伸ばしながら、フォンも賛成する。
「ウィンドボールの練習になるわね」
風魔法は補助的な技が多いので、ウィンドボールが気に入ったらしい。
実際は、俺が一番不利な気がする。
冒険者向きのスキルを持っていないし、経験も三人には全然追いつけない。
それでも、何ができるかを考えたいんだ。
少なくとも一人で一匹討伐できたら、ラグラットを五人がかりで倒した「鮮血の深淵」時代より強くなったと思えるし。
……嘘です。あれは地上で、群れているラグラット。
ダンジョンの一層では、初級者向けと言わんばかりに一匹ずつ出てくる。
だから条件が違う。けど、成長してる実感がほしいじゃん。
誰に対する言い訳をしているのか、自分でもわからん。
背中を丸めてから、今度は反対に背筋を反らす。
これやると、呼吸がしやすくなるんだよな。
「じゃあ、ラグラットを倒す順番を決めようか」
体操が終わったところで、ルナが言う。
自分の提案が採用されて、俺は笑顔になった。




