そんなこと聞いてない
俺たちは寂れた鉱山に出現した鉱山ダンジョンに向かった。
上層階には、元々の坑道にモンスターが湧いている。
初心者や初級者が訓練がてら魔石を採取できる、理想的な環境なのだ。
夕方に鉱山ダンジョンの麓に辿り着き、寝る場所を探した。
宿に泊まってもいいが、ここでは従業員に荷物をあさられることもある。
廃屋で野宿した方が安全かもしれない。
二階建ての建物を見つけ、ギシギシ音が鳴る階段を上った。
「ここなら近づく人がいたら、気がつきそうね」
フォンが屋内を見回しながら言った。
「屋根が崩れてないから、床も大丈夫そうだ」
ルナが軽くブーツの踵で床を確かめる。
「ダンジョンの入り口には冒険者ギルドの受付があるのに、なんで街を整備しないにゃ」
サァラが不思議そうに、首をかしげた。
鉱山で働いていた人や家族が去って、空き家が残っている。
そのいくつかを使用可能な状態にしておいてもらえるだけで、冒険者としてはありがたいのに。このままでは、何年か経ったらこの家も使えなくなるだろう。
「ここはファルガン共和国とレスタール王国の国境だから、難しいのよ」
フォンがさらりと言った。
「鉱石が出てた頃は奪い合って、閉山したら放置だ。どっちの国も様子見で、金を出したがらないんだ」
ルナが荷物を降ろしながら言う。
「整備したら、完成した時点で相手国に奪われるかもしれない。新たな火種になりかねないんだよ」
「だから、住み着くのはロクでもない連中ばかり、と……」
サァラの耳がピクリと動いた。
「そのぶん、ここで起きたことは自己責任。
事故も犯罪も、深く追及されないわ」
フォンが淡々と告げた。
「それじゃあ、俺たちが襲われても……」
「冒険者ギルドを出たところから尾行がついてるわよ」
フォンが微笑んだ。
「私たちをどうにかしたい人がいたら、捕まえるためにね」
「それ、囮っていわないか?」
あれ、サァラも驚いていない。気づいてないの俺だけ?
ルナが腰につけた小物入れから何かを取り出した。
「冒険者ギルドと連絡が取れる共鳴石と、一瞬で移動できる帰還石でぇす」
「ええ? 聞いてないけど!」
思わず大きな声を出してしまい、慌てて自分の口を押さえた。
「ごめんね。トーマとフォンは盗聴されてるかもしれないから。
代表であたしだけ聞いてたのさ」
「このまま、妙な膠着状態というのも辛いものね」
フォンはさらりと受け入れている。
こういうところで、経験の差を感じてしまうな。俺はさっきから驚いてばかりだ。
「この鉱山ダンジョンを選んだのは、浅い階層ならモンスターが弱いからかにゃ?」
「うん。襲われた場合に、敵に対処できるだけの余裕が欲しいからって。ギルドマスターのおすすめ」
あのオッサン、意外と策士なのか。
「だから、離れずに一緒に行動するように」
ルナがピシッと指令を出した。
なんかもう、いろいろ初耳なんですが。




