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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第九章 ダンジョン

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そんなこと聞いてない

 俺たちは寂れた鉱山に出現した鉱山ダンジョンに向かった。

 上層階には、元々の坑道にモンスターが湧いている。

 初心者や初級者が訓練がてら魔石を採取できる、理想的な環境なのだ。


 夕方に鉱山ダンジョンの麓に辿り着き、寝る場所を探した。

 宿に泊まってもいいが、ここでは従業員に荷物をあさられることもある。

 廃屋で野宿した方が安全かもしれない。


 二階建ての建物を見つけ、ギシギシ音が鳴る階段を上った。


「ここなら近づく人がいたら、気がつきそうね」

 フォンが屋内を見回しながら言った。


「屋根が崩れてないから、床も大丈夫そうだ」

 ルナが軽くブーツの踵で床を確かめる。


「ダンジョンの入り口には冒険者ギルドの受付があるのに、なんで街を整備しないにゃ」

 サァラが不思議そうに、首をかしげた。

 鉱山で働いていた人や家族が去って、空き家が残っている。

 そのいくつかを使用可能な状態にしておいてもらえるだけで、冒険者としてはありがたいのに。このままでは、何年か経ったらこの家も使えなくなるだろう。


「ここはファルガン共和国とレスタール王国の国境だから、難しいのよ」

 フォンがさらりと言った。


「鉱石が出てた頃は奪い合って、閉山したら放置だ。どっちの国も様子見で、金を出したがらないんだ」

 ルナが荷物を降ろしながら言う。

「整備したら、完成した時点で相手国に奪われるかもしれない。新たな火種になりかねないんだよ」


「だから、住み着くのはロクでもない連中ばかり、と……」

 サァラの耳がピクリと動いた。

「そのぶん、ここで起きたことは自己責任。

 事故も犯罪も、深く追及されないわ」

 フォンが淡々と告げた。


「それじゃあ、俺たちが襲われても……」

「冒険者ギルドを出たところから尾行がついてるわよ」

 フォンが微笑んだ。

「私たちをどうにかしたい人がいたら、捕まえるためにね」


「それ、囮っていわないか?」

 あれ、サァラも驚いていない。気づいてないの俺だけ?



 ルナが腰につけた小物入れから何かを取り出した。

「冒険者ギルドと連絡が取れる共鳴石と、一瞬で移動できる帰還石でぇす」


「ええ? 聞いてないけど!」

 思わず大きな声を出してしまい、慌てて自分の口を押さえた。


「ごめんね。トーマとフォンは盗聴されてるかもしれないから。

 代表であたしだけ聞いてたのさ」


「このまま、妙な膠着状態というのも辛いものね」


 フォンはさらりと受け入れている。

 こういうところで、経験の差を感じてしまうな。俺はさっきから驚いてばかりだ。


「この鉱山ダンジョンを選んだのは、浅い階層ならモンスターが弱いからかにゃ?」

「うん。襲われた場合に、敵に対処できるだけの余裕が欲しいからって。ギルドマスターのおすすめ」


 あのオッサン、意外と策士なのか。


「だから、離れずに一緒に行動するように」

 ルナがピシッと指令を出した。


 なんかもう、いろいろ初耳なんですが。


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