第八話 「忠告」
「なっ!?」
「……えっ?」
優駿は驚いた、下手をすると最悪殺される可能性があると思っていたからだ。
……例え義賊と名高い朧の団と言えど、まさか自分達を襲った犯人を何のお咎めも無く簡単に解き放つ事など有り得ないと。優駿は、その様な事は考えてもみなかったのである。
まあ傷の手当てをしてくれる連中なのだ、普通に考えて殺される可能性は低いだろう。
しかし、刹那的の考えは優駿のそれとは全く別の物だった。
……村の仇は、自分の手で討ちたいのだ。
「奴等は俺の村を襲ったんだ。……奴等は俺が殺る、お前らは手を出すんじゃねぇ!」
折角何もせずに解放してくれると言ってるのだから、無用な争いは勘弁してよと刹那の言葉に肝を冷やす優駿。
……あわあわ。
「はっきり言おう、お前は弱い。」
盗賊の男は冷ややかな目で、そう刹那に告げる。
「何だと!?」
刹那は盗賊の男を睨み付ける。
「俺は別に、朧の団で一番強いと言う訳では無い。この団には俺より強い奴が居る、それも一人では無い。」
「……なっ!?」
優駿はその言葉に驚いていた、この盗賊の男は刹那に打ち勝つ程の実力者だ。この盗賊団には刹那より強い人が最低でも三人は居ると言う事になる。それも、刹那に打ち勝った男より更に強い人が二人以上居ると言うのである。
……その言葉に優駿も又、刹那も驚きが隠せないでいた。
「領主が雇っている兵の数は、およそ千数百と見ている。俺達朧の団、総勢二百五十六人総出で掛かっても苦戦は免れないだろう。お前一人で勝てる相手では無い、特に俺にすら勝てないお前ではな……。」
「なん……だとっ!?」
その言葉に怒りを覚える刹那だったが、一度自分を負かした男のその言葉に。
……刹那は、これ以上何も言う事が出来なかった。
二人はこの後、何事も無く無事解放された。
「……あの、刹那。」
優駿は先程解放される時、あの盗賊の男に言われた言葉を思い出していた。
『領主は俺達が殺る、お前達は何もするな。……いいな、くれぐれも早まった真似はするなよ。』
……うーん。
優駿は先程から、刹那の進行方向が気になって刹那に話しかていた。
刹那が進んでいる方向。それは村へと続く帰路では無く、明らかに領主の居る町へと向かう方角なのだ。
「無茶だよ刹那、幾ら何でも千もの相手にたった一人でなんて……。それに、あの盗賊の人達も言ってたじゃないか。」
「だったらお前は、このまま指を加えて黙って見てろって言うのか!!」
刹那は急に立ち止まり、いかりに震えながら優駿に怒鳴り付ける。
…………。
優駿はそれに臆する事無く、平然と話を続ける。
「何を言ってるんだい刹那、そうは言って無いよ。僕は別に、刹那を止める気なんてこれっぽっちも無いよ?」
──?
「あ?じゃあ、一体何だってんだ?」
そっと目を閉じ、少し思考を巡らせる。そして優駿は領主の居る町の方角を、じっと見詰め何かを考える。
「……うん、うん。そうだね刹那、ちょっとだけ時間をくれないかな?僕に、少し考えがあるんだ。」
「考え?」
町に着くなり優駿は何処かへ急いで駆け出し、風の様に消えて行ってしまった。
「……お、おい優駿。」
刹那はやれやれと言った具合に肩を落とし、その場に座り込んだ。優駿がいつ戻って来るか分からず、暫くの間その辺りをぶらぶらしようかとも考えたのだが。特に行く宛も無い為、大人しく優駿の帰りを待つ事にした。
日が落ち辺りが薄暗くなる頃、優駿は息を切らしながら走り刹那の元に戻って来た。
「……はぁ、はぁ。」
…………。
「刹那、明日の昼に領主を襲おう。」
武将紹介
「優駿」
武力 ?? かなり低い
知力 ?? 意外とある?
主人公オーラ 50 あまり無い。
一応これでも主人公。
亡き国、優国の王子。
生き別れの妹を探している。
祖国の復讐の為、蛇国と戦う決意をすが。諦めて物乞いや盗みを働いている。
頭は悪く無いのだが、使い方を知らない。
こんな治安の悪い、しかも圧政に苦しむ翔国に来た事を少し後悔している。
「刹那」
武力 89 かなり強い。
知力 54 ちょっと低め。
髪型 95 かなり気合い入れてる。
村の自警団の一員。
剣の腕は相当な物で、盗賊百人を平気で蹴散らす実力を持つ。この大陸でも屈指の実力を誇ると言えるだろう……。
でも頭の方は、お察し。
綺麗な長髪の黒髪が特徴。毎朝一体何時間掛けているんだ?って位に気合いが入っている。




