第七話 「真犯人」
──ガキィン!
しかし刹那の放った渾身の一撃を、盗賊の男は難なく剣で防ぐ。
「なっ!?」
──ドスッ。
気が付いた時には既に、刹那の脇の辺りに盗賊の男が放った剣が突き刺さっていた。
「ぐはっ。」
「えっ!?」
それを見て驚き優駿は直ぐ様崖を滑り降り、刹那の元に駆け寄る。
「刹那ー!」
刺された刹那は、叫ぶ優駿の声を聞きながらゆっくりと意識を失っていった。
────────。
「気が付いたか?」
──!?
「つっ。」
左脇に激しい痛みが走り、刹那は自分の左脇を確認する。
……!?
刹那の体には包帯が巻かれ、傷の手当てがされていた。
「気が付いたかい?刹那。」
優駿が発する声に気が付き、刹那は急いで辺りを見回し状況を確認する。優駿と刹那は縄で手を縛られ、目の前には先程の盗賊の男を含め、約三十人程の盗賊達が刹那を見ていた。
「では話を聞かせて貰おうか、何故朧の団を襲った?」
別に襲ってはいないような?と、少し思ったのだが、似た様な物なので黙っている事にした。
「……俺達の村を襲ったのは、お前らじゃないのか?」
刹那は先程の盗賊の男を睨み付けながら、そう答える。
「それで?何故、お前はその村を襲った犯人を俺達朧の団だと思ったんだ?」
「…………。」
「この国の兵隊達が言っていたんだ、村を襲った犯人は朧の団だってな。」
…………。
「なるほどな。……つまり、お前らは領主に一杯食わされたって訳だ。」
──!?
「なっ!?一体どういう事だよ?何で、そこにこの国の領主が出てくるんだ!」
刹那は怒り、立ち上がる。それに近付き話しかける優駿。
「落ち着いてよ、刹那。……そう考えると、この話の全てに辻褄が合うんだ。」
…………。
「どういうこった?」
その言葉に刹那は、怪訝そうに優駿の顔を見る。
…………。
優駿は俯き、少し考えて話始めた。
「……うん、刹那よく聞いて。村に来たあの騎兵達、少しおかしくなかったかい?たまたま刹那達が留守の時を狙って村が襲われ、そこに騎兵達が現れて犯人は朧の団だと告げる。やっぱり僕には、話が巧く出来過ぎている気がするよ。それに、あの騎兵達の鎧。……血が付いていた、それもまだ新しい血がね。勿論、たまたま偶然の可能性も考えられるよ?でも、やはりこれはどう考えてもおかしいんだよ……。」
…………。
──?
何だろう?と、優駿は少し違和感を覚える。いや、それは違和感と言うよりも正確に言えば視線を感じているのである。先程から盗賊達の中心にいる人物、刹那を倒した盗賊の男に何かこうずっと見られている気がする。
「……へぇ。」
優駿と目が合っても尚、視線を反らさずその男は興味深そうにじっと優駿を見つめていた。
「あ、あの……。何ですか?」
優駿は、視線に耐えられず溜まらずに話しかけてしまう。
「ああ、俺の事は気にせず話を続けてくれ。」
……な、何なんだこの人は?その男は、全てを見透かした様に優駿を眺めていた。その鋭い眼光から逃げるように、話を反らし目を伏せた。
「い、いえ以上です。」
「そうか、残念だ。」
……一体何が残念なんだろうか?と、不思議に思う優駿。
…………。
「……まあ、いい。」
そう、盗賊達の中心にいる男が何やら話始めた。
「俺達は後日、領主邸を襲い領主を捕らえる予定だ。」
「えっ!?領主を?」
「以前からこの国の領主は、俺達の事が気に入らないらしく、ちょくちょくちょっかいを掛けられていてな。ま、大方お前らはそれにまんまと利用された訳だ。」
「なっ!?それじゃ、俺達の村を襲った連中の正体はこの国の領主だったって事か?」
「そうなるな。」
「くそっ!」
刹那は騙された事に、そして村を襲った真犯人に激しい怒りを覚える。
…………。
「だがお前達は運がいい、俺達朧の団は二日後に領主邸を襲う。だから何もしなくても、お前達の復讐は遂げられる。良かったな、おい誰かこいつらの縄を解いてやれ。」
武将紹介
「優駿」
武力 ?? かなり低い
知力 ?? 今の所ぽんこつ
運 ?? かなり悪い。
一応これでも主人公。
亡き国、優国の王子。
生き別れの妹を探している。
祖国の復讐の為、蛇国と戦う決意をすが。諦めて物乞いや盗みを働いている。
頭は悪く無いのだが、使い方を知らない。
こんな治安の悪い、しかも圧政に苦しむ翔国に来た事を少し後悔している。
「刹那」
武力 89 かなり強い。
知力 54 ちょっと低め。
髪型 95 かなり気合い入れてる。
村の自警団の一員。
剣の腕は相当な物で、盗賊百人を平気で蹴散らす実力を持つ。この大陸でも屈指の実力を誇ると言えるだろう……。
でも頭の方は、お察し。
綺麗な長髪の黒髪が特徴。毎朝一体何時間掛けているんだ?って位に気合いが入っている。




