第六十七話 「兵は詭道〈きどう〉なり」
「ぐぬぅ……。」
「何をしておるのか、貴様ら!!」
二千の蛇国兵を蹴散らし、司馬晋隊は尚も蛇国軍本陣へと斬り込んで行く。……徐々に追い込まれていく恐怖に、蛇国の将軍達は次第に怯え始めていた。
「たった五百程度に、何を苦戦している!……もう良い!こんなったら、俺様が直々に討ち取ってやる!!」
三人の将軍の内の一人の将軍が痺れを切らし、矛を構え迫る司馬晋を迎え撃つ。
「おお、蓋亞!お主が出てくれるのなら安心だな。」
「任せたぞ、蓋亞殿!!」
蛇国で十五人居る将軍の中の一人、蓋亞将軍。その中でも蓋亞は一、二を争う猛将であった。
使い込まれた矛と、その猛々しい巨躯を見れば誰であろうと、その強さが理解出来る事だろう。
「我は、蛇国将軍蓋亞!いざ参る!!」
蓋亞は司馬晋の首に狙いを定め、その巨大な矛で斬り付ける。
──ザシュ!
「……え?将軍だったの?」
一瞬で、その首を斬り裂く司馬晋。……そして司馬晋は、残りの二人の顔を見てニヤリと笑う。
「じゃあ、後二人かな?」
そう言って司馬晋は二刀を構え、二人の将軍目掛けて斬りかかって行く。
──!?
「ばっ、馬鹿な!?蓋亞がやられただと!?」
「おのれ、こうなったら俺達が相手だ!行くぞ、松朱!!」
「おうよ、雄流手我!!」
──ザシュ!
司馬晋は迫り来る二将の間を掻い潜り、それと同時に二将の首を斬り裂いていた。
「…………。」
──ドサリ。
どさりと地面に崩れ落ちる二将……。
一瞬にして三将を斬り捨て、司馬晋は高らかに剣を掲げた。
「思ったより楽勝だったね。弱い将軍で助かったよ……。じゃあ皆ー、勝鬨を上げるよ。」
「オオオオオオオオー!!」
当然ながら数は、まだ蛇国軍が圧倒していた。その為、戸惑いを覚える兵は居るものの……。
たった五百人程度の声では気にも留めず、攻撃の手を緩める蛇国兵は少なかった。
その雄叫びに、同じ味方である優駿でさえも戸惑いを覚えるのだが……。その雄叫びの意味の意味を理解した優駿は、すぐに味方の兵達に勝鬨を上げさせた。
「オオオオオオオオー!!」
これは間違いなく味方の歓声である。優駿は、これを本国から来た公孫翔の援軍の声だと勘違いをしていた。
……しかし翔国軍は、その数を幾らかは減らしているものの、まだ四千以上の兵が残っているのだ。
四千人もの上げる雄叫びに、流石に動揺し戸惑いを見せる蛇国兵達。
……戦況を確認しようにも、その指揮官級のほとんどが既に張翼に討たれていた為、指揮系統は麻痺し混乱を極めていた。
指揮官級が既に討たれているのが功を奏し、蛇国軍の動きは一斉に止まる事となる。
「な、何だ……。」
「……一体、何が起こっているんだ?」
混乱し、酷く慌てふためく蛇国兵達。漸く三人の将軍が討たれている事に気が付き、蛇国軍は一斉に撤退を始めた。
「奴ら、撤退していくぞ……。」
「……勝ったの?」
蛇国軍が去り、確認の為に西門へと向かう優駿。
──ドガラッ!
「はーい、お疲れ様。皆無事かな?何とか持ちこたえれたかな?」
「え……。晋!?」
公孫翔ではなく、司馬晋の登場に酷く驚く優駿。
一度は逃げたと思っていた優駿だが……。その司馬晋や周りの騎兵達の姿を見れば、優駿にも司馬晋達が命を賭して戦っていた事が理解出来た。
……だが優駿には、何故自分達が勝利したのかが理解出来なかった。
「黙って出ていって悪かったね、優駿。ここに敵兵を引き付けている間に、蛇国の将軍を討ちに行ってたんだよ。相手は油断していたし数も少なかったから、何とか倒せたよ。」
司馬晋の言葉に驚きが隠せない優駿。……いや、本国からの公孫翔の応援ではなかったのだ。ならば必然的に、蛇国の将軍を討ったのは司馬晋と言う事になる。
「それにしても、一言相談してくれたって……。」
「敵を騙すには、先ず味方からって言うでしょ?味方の兵士に知られて、安心して顔に出ちゃうと策が成り立たなくなる恐れがあったからね。……それに、あの時は時間が無かったんだよ。」
「…………。」
優駿は何も言えなかった。今回の戦の勝利はは、完全に司馬晋の手柄なのだ。
司馬晋の機転が無ければ、もっと苦戦し窮地にに追いやられていたのかも知れない。
そして優駿は何よりも、司馬晋の知略に驚かされていた。
この敵だけでなく、味方すら欺く型破りな発想力。……そして知略を以て困難な戦況を覆す、この卓越した戦術眼は───。
優駿の目には、公孫翔の様に映し出されていた。
武将紹介
「優駿」
武力 47
知力 87
主人公 オーラがあまり無い。
一応これでも主人公。
亡き国、優国の王子。
生き別れの妹を探している。
祖国の復讐の為、蛇国と戦う決意をすが。諦めて物乞いや盗みを働いている。
頭は悪く無いのだが、使い方を知らない。
こんな治安の悪い、しかも圧政に苦しむ翔国に来た事を少し後悔している。
「刹那」
武力 89
知力 54
髪型 95 かなり気合い入れてる。
村の自警団の一員。
剣の腕は相当な物で、盗賊百人を平気で蹴散らす実力を持つ。この大陸でも屈指の実力を誇ると言えるだろう……。
でも頭の方は、お察し。
綺麗な長髪の黒髪が特徴。毎朝一体何時間掛けているんだ?って位に気合いが入っている。
「公孫翔」
武力 92
知力 99
髪型 98 美容院通ってるの!?
朧の団の若きリーダー。義賊。これでもかって程、髪型に気合いを入れている。え?毎日、美容院通ってる?ってレベルに気合いが入っている。後、仲の良い妹が一人居る。
「黄牙」
武力 96
知力 77
自称 最強剣士。
公孫翔の相棒。非常に腕の立つ剣士。最強を自負しているのだが、実際は……。
「劉士元」
武力 97
知力 67
暗殺 最強の一族
大陸最強の暗殺者一族、"剣竜"。
「張翼」
武力 94
知力 87
自分 大好き
翔国、臥龍配下の部隊長。その実力から、将来を有望視される人物。野心家で、自信過剰な所がある。
「士龍」
武力 87
知力 65
努力 家
志願兵の一人。刹那にその実力が認められ、一隊を任せられる。槍の使い手で、実力はそこそこ。割と勘が冴える所もある。
「司馬晋」
武力 89
知力 93
糸目 開眼しないタイプの糸目。
掴み所の無い、何考えて居るのか良く分からない糸目。……その糸目が、開眼する事は無い。
「蓋亞」
武力 92
知力 64
蛇国 三連星
蛇国三連星の一人。三人揃えば必殺技、乱気流攻撃が可能。蛇国で一、二を争う猛将である。
「雄流手我」
武力 90
知力 46
蛇国 三連星
蛇国三連星の一人。三人揃えば必殺技、乱気流攻撃が可能。趣味は犬のエサやり。
「松朱」
武力 88
知力 72
蛇国 三連星
蛇国三連星の一人。三人揃えば必殺技、乱気流攻撃が可能。焼き芋大好き。




