第六十四話 「逃亡者」
「……くっ!」
砦の門が開かれた事により、砦内に大量に押し寄せる蛇国兵。
そして襲いかかる九人の"剣竜"の前に、流石にたった三人だけでは為す術もなく苦戦に追い込まれる刹那達。
──!?
「士龍!気を付けろ、後ろだ!!」
「……え?」
──ヒュッ。
士龍が気が付いた時には、既に遅かった。"剣竜"の放つ高速の斬撃が、士龍の首を捉えていた。
──ガキィン!!
「甘ぇよ!」
間一髪の所で黄牙が、その刃を弾き返す。
「黄牙!」
「黄牙さんっ!」
──ザッ。
黄牙の登場で"剣竜"達の表情が変わる。……黄牙を強敵と認識しているのだろう。
"剣竜"達は九人で黄牙を囲み、一斉に襲いかかった。
「不味いっ!」
幾ら黄牙が強いとは言え、同時に九人もの"剣竜"を相手にするのは無理があると刹那は急いで走りだし黄牙の救援に向かう。
──ザシュ!
しかし、そんな刹那の心配など黄牙には必要無かった。黄牙は瞬く間に二人の"剣竜"を斬り裂き、次々と襲いかかる"剣竜"達を斬り伏せていく。
「おら、どうした?……もう終わりか?」
余裕の表情を見せ、剣で肩をトントンと叩く黄牙。
黄牙が五人斬った所で"剣竜"達の足が止まる。
「ば……。馬鹿な、我等"剣竜"を容易く倒すとは……。」
黄牙は開け放たれた砦の門から、大量に押し寄せる蛇国兵達を見る。
「あっちの方が、ヤバそうだな……。残りの四人は、お前らに任せたぜ!」
そう言って、黄牙は単身で蛇国軍の騎馬隊に斬り込んで行った。
「刹那ー!」
慌てて砦の上から兵士を引き連れ、刹那の元に駆け寄ってくる優駿。
「刹那、大丈夫!?」
「ああ……。黄牙の、お陰で何とかな。ほんと化け物だよな、あいつ。」
「……刹那。」
「ここは俺達に任せて、お前は門の方を頼むぜ!」
「……うん、分かったよ刹那。気を付けてね。」
優駿は刹那を心配しながら、西門へと走って行った。
「……さてと、殺るか。」
九人居る"剣竜"の内、既に五人を黄牙が倒し残る"剣竜"の数は四人……。
張翼、士龍、そして刹那の三人は剣を構え、伝説の暗殺者一族"剣竜"に挑む。
「オラァ!!」
──ガキィン!
刹那は自らの剣に全身の力を込め、その刃を"剣竜"に打ち付けた。
「頑張ってるねぇ……皆。」
刹那達が必死に苦戦しながらも戦う中、司馬晋はのんびりと歩いていた。
「やっぱり凄いね、黄牙さんは……。これで西門は暫くは持ちそうだね。でも、それも時間の問題なんだよねぇ。果たして、何時まで持つ事やら……。フフフ……。」
「……そろそろ、潮時だね。」
そう言って、司馬晋はニヤリと笑っていた。
──ザシュ!!
「何だ、こいつは!?」
「化け物かっ!?」
凄まじい勢いで、次々と敵を斬り裂いていく黄牙。その圧倒的強さの前に、蛇国兵の足が止まり始める。
黄牙の活躍により、何とか西門の守備を持ち直す優駿達。優駿は兵を集め、黄牙を先頭に円陣を組み防御に徹していた。
しかし相手は二万七千の大軍である。たとえ、こちらに黄牙が居ると言っても為す術がなく、苦戦へと追い込まれるのは誰の目にも明らかだった。
この砦での防衛戦は、門が突破された時点で既に勝敗は決している様な物である。
この様な防衛戦に於いて、守備の要である門が突破されてしまえば、後は何の戦略も無い数の暴力と化してしまう事だろう。
流石に何の打開策も浮かばず、顔を顰める優駿。
蛇国兵の数は約二万七千。それに対し、こちらの兵力は五千しか残されてはいなかった。
蛇国兵二万七千の内、既に約四千もの兵の侵入を許してしまっている。その四千の兵士は必然的に、もう一つの門である東門目掛け駆け出して行く。
東門が突破されてしまえば、最後。両門から押し寄せる大量の蛇国兵に挟まれ、優駿達の敗北が決定的な物となってしまう事だろう。
言わば東門が、優駿達の最後の生命線となっていた。……絶対に死守しなくてはならない。
その為、優駿は砦の上に千の兵を残し、東門の守りに二千の兵を向かわせた。
しかし、その所為で肝心の西門の守りがたった二千と、かなり手薄になってしまい苦戦へと追い込まれる優駿達。
何とか必死に、打開策を練る優駿だが……。やはり門を突破され、蛇国兵の侵入を許した時点で為す術が無かった。……何とか耐え凌ぐしか、方法は残されてはいなかった。
──ドドドドドドド!!
「たっ、大変です!!」
そんな中、慌てて東門から味方の騎兵達が優駿の元に駆け込んでくる。
まさか、もう東門が突破されたと言うのだろうか?まさか───。
さーっと青ざめ、血の気が引く優駿。
……しかし騎兵達の口から出た言葉は、優駿の耳を疑う物だった。
「司馬晋が、東門を開けて逃亡致しました!……既に東門からは、大量の蛇国兵が雪崩れ込んで来ております!!」
「……え?」
優駿は自分の耳を疑った。……司馬晋が裏切った事実を、優駿は受け入れたくは無かった。
「晋、どうして……。」
優駿は絶望に駆られ、その場に座り込んだ。
武将紹介
「優駿」
武力 47
知力 87
主人公 オーラがあまり無い。
一応これでも主人公。
亡き国、優国の王子。
生き別れの妹を探している。
祖国の復讐の為、蛇国と戦う決意をすが。諦めて物乞いや盗みを働いている。
頭は悪く無いのだが、使い方を知らない。
こんな治安の悪い、しかも圧政に苦しむ翔国に来た事を少し後悔している。
「刹那」
武力 89
知力 54
髪型 95 かなり気合い入れてる。
村の自警団の一員。
剣の腕は相当な物で、盗賊百人を平気で蹴散らす実力を持つ。この大陸でも屈指の実力を誇ると言えるだろう……。
でも頭の方は、お察し。
綺麗な長髪の黒髪が特徴。毎朝一体何時間掛けているんだ?って位に気合いが入っている。
「公孫翔」
武力 92
知力 99
髪型 98 美容院通ってるの!?
朧の団の若きリーダー。義賊。これでもかって程、髪型に気合いを入れている。え?毎日、美容院通ってる?ってレベルに気合いが入っている。後、仲の良い妹が一人居る。
「黄牙」
武力 96
知力 77
自称 最強剣士。
公孫翔の相棒。非常に腕の立つ剣士。最強を自負しているのだが、実際は……。
「劉士元」
武力 97
知力 67
暗殺 最強の一族
大陸最強の暗殺者一族、"剣竜"。
「張翼」
武力 94
知力 87
自分 大好き
翔国、臥龍配下の部隊長。その実力から、将来を有望視される人物。野心家で、自信過剰な所がある。
「士龍」
武力 85
知力 64
努力 家
志願兵の一人。刹那にその実力が認められ、一隊を任せられる。槍の使い手で、実力はそこそこ。割と勘が冴える事もある。
「司馬晋」
武力 79
知力 91
糸目 開眼しないタイプの糸目。
掴み所の無い、何考えて居るのか良く分からない糸目。……その糸目が、開眼する事は無い。




