第六話 「盗賊の男」
『朧の団』
優駿がこの国に訪れた当時は、他の盗賊団同様に悪事を働く名も無き盗賊団の一つに過ぎなかった。しかし四年前に頭目が交代してからはその活動内容が一変し、義賊としてその名を轟かせた。
十二ある国の内二つが滅び、今この大陸は十の国に分かれている。優駿達が居るこの国、翔国はその中でも一、二を争う程治安が酷く。民達はその圧政に苦しみ、飢えでの垂れ死ぬ人の割合が特に多い国だった。特に盗賊団の多さでは、間違い無くこの翔国が一番多いだろう。
そして、この翔国の東に位置するここの領主はかなりの暴虐さで有名でり、盗賊団よりも更に忌み嫌われる存在であった。
その民から奪った富や財を奪い返し、民達にばら蒔く朧の団の姿をを民達は英雄の様に称えていた。
この翔国で、朧の団の名前を知らない者が居ないのはその為である。
──パチパチ。
「……話は終わりだ、俺は寝る。」
優駿の話に耳を貸さない刹那。刹那はそう言いながら、焚き火の火を消し横になった。
…………。
刹那を説得出来なかった事に悔やむ優駿。しかしよくよく考えてみると、何故自分はこの様に酷い国に来てしまったのだろう。と、自分の愚かさを嘆く優駿であった。
翌朝、刹那は朧の団の根城に向かう為、急ぎ足を進めるていた。それを置いていかれまいと、必死に走り続けている優駿。
──ガサッ。
「……あれか。」
刹那は崖の上から、朧の団の根城を眺め確認する。入口、見張りの数、脱出経路そしてどう攻めるか……。等を、それぞれ一つずつ落ち着いて確認していく。
──たたたたたたたたっ。
「はぁ、はぁ。ぜぇぜぇ……。やっ、やっと追い付いたぁ。」
刹那は息を切らし、へばっている優駿の姿をちらりと見る。
「帰れつったろ。」
「…………。」
刹那はもう一度朧の団の根城を確認し、崖から飛び降り一気に滑り降りた。
「お前はそこでじっとしていろ、間違っても来るんじゃねぇぞ。」
──ズザァ。
言われた通り、その場で大人しく見守る優駿。
──たたたたたたたっ。
刹那は素早い動きで、瞬時に見張りの盗賊達の前へと飛び上がり剣を突き付ける。
「なっ、なんだお前は!?」
驚く盗賊三人は慌てて槍を構え、刹那に向かって槍を突き付ける。
「……俺達の村を襲ったのは、お前らか?」
刹那の問いに対し、きょろきょろとお互いの顔を見合わす盗賊達。
「……へっ。」
「おいおい、お前。ここを他の盗賊団と間違えていないか?俺達は朧の団だぜ?義賊だ。……つまり、俺達が狙うのはこの国の悪人共。この国の領主だけだ。」
「…………。」
刹那は少し考えていた。やはり刹那もこの話は何処か少しおかしいと、疑問に思う所があるのだろう。朧の団が悪事を働く事が無い、義賊と知っている筈なのだ。……そして、昨夜の優駿の言葉が刹那の頭を過る。
──かりかり。
「ちっ。とりあえずてめーらの親玉に会わせやがれ、話はそれからだ。」
「……はぁ?」
「おいおい、何を言っているんだ?こいつは。」
──ギリッ。
刹那は怒り、盗賊達の首元に刃をぴたりとくっ付ける。
「今この場で斬り殺してもいいんだぜ?剣で斬られりゃ、少しは考えが変わるか?てめーら。」
「……ぐっ。」
刹那の気迫が伝わったのか、それとも殺気に当てられたのか盗賊達に緊張が走る。
「おっ、おい……。急いで誰かを呼んで来い。」
刹那は剣を構え、じっと盗賊達に睨みを効かせた。
…………。
「……何の騒ぎだ?」
建物の中から盗賊が二人現れ、ゆっくりと歩きながら刹那の方に近付いて来る。
「おお、二人共いい所に……。」
「こいつ、いきなりやって来て先程から訳の分からない事を……。」
その盗賊の男は、刹那の顔を見て不敵に笑っていた。
「……ほぅ。」
剣を構え殺気立つ刹那を気にせず、躊躇する事無く近付いてくる二人の盗賊に、刹那は奇妙な違和感を覚えた。明らかに他の盗賊達とは違う、底知れぬ恐ろしい何かを、刹那は肌で感じていた。
「俺がやろうか?」
後方に居たもう一人の男が、そう先頭の男に話しかける。
「……いや、いい。この程度なら、お前が出るまでもない。」
「ああっ!?」
……この程度だと?
「……フフッ。」
にやにやと笑いながらこの程度と一蹴され、刹那は怒りを顕にした。
「やはり、俺達の村を襲ったのはてめーらか!?」
…………。
盗賊の男は刹那の問いに笑いながら見下し、こう言い放った。
「だとしたら?」
──!?
「てめぇ!!」
刹那の怒りが頂点に達す。
「ぶっ殺す!!」
刹那は怒り、盗賊の男目掛け勢いよく剣で斬り付けた。
武将紹介
「優駿」
武力 ?? かなり低い
知力 ?? 今の所ぽんこつ
運 ?? かなり悪い。
一応これでも主人公。
亡き国、優国の王子。
生き別れの妹を探している。
祖国の復讐の為、蛇国と戦う決意をすが。諦めて物乞いや盗みを働いている。
頭は悪く無いのだが、使い方を知らない。
こんな治安の悪い、しかも圧政に苦しむ翔国に来た事を少し後悔している。
「刹那」
武力 ?? かなり強い。
知力 ?? ちょっと低め。
髪型 95 かなり気合い入れてる。
村の自警団の一員。
剣の腕は相当な物で、盗賊百人を平気で蹴散らす実力を持つ。この大陸でも屈指の実力を誇ると言えるだろう……。
でも頭の方は、お察し。
綺麗な長髪の黒髪が特徴。毎朝一体何時間掛けているんだ?って位に気合いが入っている。




