第五十七話 「難攻不落の砦」
国境を抜け蛇国領に入ると、自然と皆の緊張が高まり始める。その国境から少し進むと、元葉国最初の砦が優駿達を待ち構えていた。
この砦は長年の間、翔国からの侵攻を防ぎ続け"天覇十傑"の将軍ですら落とせなかった、難攻不落の砦である。
……今現在は蛇国の手に落ち、蛇国兵がその守りを固めている事だろう。
「…………。」
慎重に事を進める、優駿達だが……。砦の様子が、少しおかしい事に気が付く。
「何だか、様子がおかしいぜ?優駿。」
「…………。」
こちらは、一応二万の大軍である。その二万と言う大軍を前にすれば、目撃した蛇国兵が慌てそうな気がするのだが……。砦の様子が少し、静か過ぎるのである。
「……人、居ねえんじゃねぇのか?」
「いや、そんな筈は無いよ刹那。この砦は長年翔国からの侵攻を防ぎ続けた、要とも言える重要な拠点の一つなんだ。……それを蛇国が見逃すなんて、幾らなんでも考えられないよ。こんな貴重な砦を放置するなんて、余程の理由が無い限り───。」
「ちょっと、中の様子を見てくる。」
「えっ!?ちょっと待ってよ、刹那!危ないよ!」
話を遮り、一人で砦に向かう刹那。制止する優駿の声を聞かず、刹那は馬で駆け出して行く。
「どっ、どうしよう……。流石に一人だと危険だよ。……どうしよう、誰か。」
心配する優駿を余所に、周りの者達は皆、何時もの事だと笑っていた。
暫く待っていると、何事も無く一人で戻ってくる刹那の姿が見える。……一応、後方を確認する優駿だが、どうやら蛇国の追っ手は居ない様だ。
「中には、誰も居なかったぜ。」
「……え?中に入れたの?いや、そんな筈は……。こんな重要な砦を放棄するなんて、普通なら考えられないよ。何か、余程の理由が無いと……。うーん、李葉との戦いで砦に手を回す余裕が無い程、疲弊しているのかなぁ……。」
何時もの様に、一人で何やらブツブツと考え始める優駿。
「とりあえず、砦の中を確認しなきゃね。」
司馬晋の言葉で皆が動き、一斉に砦の中を隈なく探索していく優駿達。
「優駿、やはり誰も居ねーぞ。」
一応念の為、砦の内部を全て探索し終えたのだが……。やはり砦の中には、一人も居なかった。
「…………。」
砦に蛇国兵の姿が見えない事に、何か違和感を覚える優駿。
葉国が蛇国と戦った時、一番西に位置しているこの砦では、一切戦闘は無かったのだろうか……。
特にこれと言った破損箇所は見当たらず、砦としての機能は保たれたままであった。
「……特に、何も無さそうだな。それじゃあ、次に行こうぜ。」
砦の中には誰も居らず、特に役立ちそうな物も無かったので、次の目的地を目指そうとする刹那だが……。
刹那以外の五人の幹部達は皆、この砦の様子に違和感を覚え何やら考え込んでいた。
「……どうしたんだ?お前ら。」
刹那は疑問に思い、優駿に聞いてみる。
「蛇国が、これだけの砦を放置する理由が分からなくて……。蛇国が次に狙うのは、必然的に僕達の居る翔国になる筈なんだ。だから攻める為にも、必ずこの砦の確保は必要な筈なんだけど……。」
優駿は、チラリと司馬晋の方を見る。
「ねえ、司馬晋と張翼はどう思う?」
「んー、余程李葉に苦戦して、それ所じゃないのか……。この辺りの地理に疎くて、この砦の存在を知らなかったとかじゃないかな?……もしくは、この砦自体が必要無かったとかね。」
「うーん。」
次に優駿は、張翼の顔を見る。
「俺は、あまりそーゆーのは気にしねーんだ。そーゆーのは、お前らに任せるぜ。」
「えっ、あっそうなの?……分かったよ。」
「……要は、あれだろ?蛇国が俺達に対して、何か策を仕掛けてくるかって事だろ?それは、もう少し進めば分かる事だぜ。とりあえずこの砦からは、何の策の臭いも感じねぇ。」
張翼の言う通りなのかも知れない。これ以上、この砦で考えても答えが出る事は無いだろう。
優駿達は答えが見付からないまま、慎重に次の目的である東へと目指して行った。
武将紹介
「優駿」
武力 47
知力 87
主人公 オーラがあまり無い。
一応これでも主人公。
亡き国、優国の王子。
生き別れの妹を探している。
祖国の復讐の為、蛇国と戦う決意をすが。諦めて物乞いや盗みを働いている。
頭は悪く無いのだが、使い方を知らない。
こんな治安の悪い、しかも圧政に苦しむ翔国に来た事を少し後悔している。
「刹那」
武力 89
知力 54
髪型 95 かなり気合い入れてる。
村の自警団の一員。
剣の腕は相当な物で、盗賊百人を平気で蹴散らす実力を持つ。この大陸でも屈指の実力を誇ると言えるだろう……。
でも頭の方は、お察し。
綺麗な長髪の黒髪が特徴。毎朝一体何時間掛けているんだ?って位に気合いが入っている。
「公孫翔」
武力 92
知力 99
髪型 98 美容院通ってるの!?
朧の団の若きリーダー。義賊。これでもかって程、髪型に気合いを入れている。え?毎日、美容院通ってる?ってレベルに気合いが入っている。後、仲の良い妹が一人居る。
「黄牙」
武力 96
知力 77
自称 最強剣士。
公孫翔の相棒。非常に腕の立つ剣士。最強を自負しているのだが、実際は……。
「劉士元」
武力 97
知力 67
暗殺 最強の一族
大陸最強の暗殺者一族、"剣竜"。
「張翼」
武力 94
知力 87
自分 大好き
翔国、臥龍配下の部隊長。その実力から、将来を有望視される人物。野心家で、自信過剰な所がある。
「士龍」
武力 85
知力 64
努力 家
志願兵の一人。刹那にその実力が認められ、一隊を任せられる。槍の使い手で、実力はそこそこ。割と勘が冴える事もある。
「司馬晋」
武力 79
知力 91
糸目 開眼しないタイプの糸目。
掴み所の無い、何考えて居るのか良く分からない糸目。……その糸目が、開眼する事は無い。




