第三十九話 「獲物を狩る虎の様に」
公孫翔率いる朧の団は、領主の館を制圧した後。領主が貯えていた莫大な富を、全て街中に配っていた。
そして、その見返りに集めた物。……それは、街中から集めた大量の油だった。
馬上の為、気が付くのが遅れたのか。それとも木々に囲まれた薄暗い山中な為に、多少の地面の泥濘を気にも止めなかったのか……。
どちらにせよ討伐軍がそれに気が付いた時には、既に遅かった。
山全体に撒かれた大量の油は、地を這い一斉に山全体に燃え広がり、討伐軍を焼き付くす。
「ばっ、馬鹿なっ。火計だと!?」
「ギャアアアアアアア!!」
討伐軍を飲み込んだ炎の海は、約半分の二万の兵を飲み込み阿鼻叫喚の地獄絵図と化していた。
「…………。」
その地獄の様な光景を前にしても、顔色一つ変えず只眺めている姿の公孫翔。……いや、その目からは怒りと哀しみが満ち溢れていた。
「もし青辛将軍が生きていたなら、こんな粗末な罠に引っ掛かる事など無かっただろうよ。……恨むなら、青辛将軍の首を刎ねた愚かな王を恨むんだな。」
公孫翔は燃え行く討伐兵を睨み付けながら、そう冷たい目で言い放つ。
火計により討伐軍の大半は焼かれ、その半数を失っていた。
……兵の半数を失う。
兵の半数ならば、まだ残りの半数である一万五千程の兵が無傷な状態であると。そう考える人も多い事だろう。
しかし、兵の半分を失うと言う事は……。
──それ、即ち"壊滅状態"と言う。
一気に軍の大半を失ったのだ。残りの兵達は混乱し、正常な判断を失ってしまう事だろう。
……傷付いた仲間達を、助けに向かう兵も居る。恐怖に怯え、足が竦む兵達も居る事だろう。
それに指令係や伝令兵が動かなければ、一般兵達はどう行動して良いのか分からず、軍全体が麻痺してしまうのだ。
最早この時点で、既にこの戦の勝敗が決していると言っても過言では無かった。
例え一万五千の兵が無傷で残っていようとも、その様な状態で勝てる程公孫翔は甘くは無い。
……この機を、みすみす逃す公孫翔では無い。
「行くぞ!討伐軍を殲滅する!俺に続け!!」
「オオオオオオオオオオオ!!」
馬を走らせ突撃をかける中、公孫翔はちらりと黄牙の方へと振り向き、真剣な表情で話しかける。
「黄牙、絶対に死ぬなよ!」
「おおよ、こっちは任せろ!!」
そう言って公孫翔達は、仲間を信じ二手に分かれて行った。
公孫翔の火計で、全軍が戸惑いを覚える中。特に取り乱す様子も無く、冷静に機を窺う部隊が一つあった。
「何か企んでるとは予想していたが、まさか火計とはな……。」
「……どうしますか?」
張翼率いる張翼隊は、この策略をある程度読んでいた。……そして、それと同時に理解していたのだ。この程度で、厳狼将軍が敗れる事は、万に一つも有り得ないのだと。
「まあ待て、そろそろ奴等が出てくる頃合いだ。俺の前に、のこのこと反乱軍の頭が姿を現した所を狙い、その首を取る。」
「はっ!!」
張翼は、静かに狙いを定めていた。……じっと息を潜め、まるで獲物を狩る虎の様に。
──ダダダダダダダダッ!!
炎の中を馬で駆け込み、風の様に走り抜ける公孫翔達。火計で混乱状態である討伐軍の中に斬り込み、公孫翔隊は次々と討伐兵を殲滅して回った。
……それは、一方的だった。
討伐兵達は襲いかかる公孫翔達、反乱軍に怯え散り散りに逃げ始める。
そんな中、公孫翔達は比較的被害が少なく、まともに機能している隊に狙いを定め。次々と、討伐軍数を減らしていった。
「……思ったよりは、減らせた様だな。」
公孫翔は目を凝らし、残りの兵を確認する。
「…………。」
その数、討伐軍約一万。朧の団、三千。
「……何とか、耐えきれるか?」
──ザザザザザザッ、ガサッ!!
馬を駆け、茂みの中から公孫翔の首を取る為に。待ち構えていた張翼隊の騎兵五百が飛び出し、公孫翔の首に狙いを付ける。
──!?
不意を突かれる公孫翔達。その先頭に立つ、張翼の刃が公孫翔に襲いかかる。
「悪いがその首、貰ったぜ!!」
武将紹介
「優駿」
武力 45
知力 85
主人公 オーラがあまり無い。
一応これでも主人公。
亡き国、優国の王子。
生き別れの妹を探している。
祖国の復讐の為、蛇国と戦う決意をすが。諦めて物乞いや盗みを働いている。
頭は悪く無いのだが、使い方を知らない。
こんな治安の悪い、しかも圧政に苦しむ翔国に来た事を少し後悔している。
「刹那」
武力 89
知力 54
髪型 95 かなり気合い入れてる。
村の自警団の一員。
剣の腕は相当な物で、盗賊百人を平気で蹴散らす実力を持つ。この大陸でも屈指の実力を誇ると言えるだろう……。
でも頭の方は、お察し。
綺麗な長髪の黒髪が特徴。毎朝一体何時間掛けているんだ?って位に気合いが入っている。
「公孫翔」
武力 92
知力 99
髪型 98 美容院通ってるの!?
朧の団の若きリーダー。義賊。これでもかって程、髪型に気合いを入れている。え?毎日、美容院通ってる?ってレベルに気合いが入っている。後、仲の良い妹が一人居る。
「黄牙」
武力 96
知力 77
自称 最強剣士。
公孫翔の相棒。非常に腕の立つ剣士。最強を自負しているのだが、実際は……。
「劉士元」
武力 97
知力 67
暗殺 最強の一族
大陸最強の暗殺者一族、"剣竜"。
「臥龍」
武力 96
知力 68
体格 98
"天覇十傑"に名を連ねる、最強の将軍の一人。その実力は、剣竜とも互角に戦える程の強さを持つ。翔国が誇る、二大将軍である。
「張翼」
武力 94
知力 87
自分 大好き
翔国、臥龍配下の部隊長。その実力から、将来を有望視される人物。野心家で、自信過剰な所がある。
「青辛」
武力 74
知力 92
糸目 では無い。目を閉じているだけ。
知将。その知略は翔国一と称される人物。翔国の軍略を一手に取り仕切っている将軍である。二大将軍に隠れがちだが、非常に優秀な将軍と言える。
「呉頭」
武力 85
知力 38
悪行 96
大陸最大の盗賊団、月影団の頭目。朧の団以外で唯一、討伐隊を退ける程の武闘派集団の親玉である。かなりの怪力の持ち主。かなり悪事を働いているが、領主程嫌われてはいない。
「士龍」
武力 84
知力 58
努力 家
志願兵の一人。刹那にその実力が認められ、一隊を任せられる。槍の使い手で、実力はそこそこ。割と勘が冴える事もある。
「司馬晋」
武力 78
知力 89
糸目 開眼しないタイプの糸目。
掴み所の無い、何考えて居るのか良く分からない糸目。……その糸目が、開眼する事は無い。
「厳狼」
武力 98
知力 84
最強 お爺ちゃん
"天覇十傑"に名を連ねる将軍。翔国軍、筆頭の大将軍でもある。……そろそろ引退して、孫とゆっくりしたいお年頃。身長二メートル以上の巨体を誇っている。




