第十四話 「突撃」
──翌朝。
朧の団一行は、領主の館へと向かっていた。刹那の傷は、ほとんど癒えてはいない。だが、そんな事は言っていられなかった。……優駿を、助けなければならない。
刹那は優駿を助ける為、馬を走らせた。
刹那は先頭を走る朧の団頭目、公孫翔をちらりと見る。
「…………。」
刹那の頭には、一つの疑問が浮かんでいた。
……何故、朝に攻めるのか?
兵力が寡兵であるならば、夜襲の方が効率が良いだろう。それは刹那が昨夜の戦いで、良く分かった事だった。
「…………。」
刹那は、馬を急がせ先頭を走る公孫翔に会いに行った。
「……なぁ?」
「ん?どうした刹那。」
「どうして、朝に攻めるんだ?攻めるなら夜とかの方が、効率がいいんじゃねぇのか?」
「そうだな、夜の方がやり易いな。……色々とな。」
「あ?なら、何で夜襲にしないんだよ?」
「……ま。こっちにも、色々あるって訳さ。」
公孫翔は笑いながらそう言い、それ以上は語らなかった。
領主邸付近に到着し、公孫翔は部下一人一人に丁寧に指示を始める。
「以上だ、各自持ち場に着いてくれ。……皆、死ぬなよ。」
「…………。」
剣を手に、刹那は領主邸を睨み付ける。……明らかに、昨夜よりも警備が厚い。
昨夜、刹那が領主を襲い。まだ刹那の首を取れていない事を考えると、当然だろう。
領主も刹那が、領主の命を狙う事は分かっているのだから……。
三つに分けられた隊の配置に着き、刹那は剣を持つ手に力が入る。
「……待ってろよ、優駿。」
刹那は静かに目を閉じ、優駿の無事を祈った。
「よう、今日はよろしく頼むぜ?期待の新人君。」
「あんたは……。確か名前は、えーと。」
昨夜、公孫翔の隣に居た人物だ。名前は確か……。
「黄牙だ。……おいおい、頼むぜ?しっかりしてくれよ。一応、この隊の隊長なんだからさ。」
──隊長?
……刹那はその言葉に、一つ引っ掛かる所があった。……隊長。この男、黄牙はこの部隊の隊長だと言った。三つに分けられた部隊の、隊長の一人だと……。
そして、公孫翔のあの言葉が刹那の頭を過る。
『俺は別に、朧の団で一番強いと言う訳では無い。この団には俺より強い奴が居る。……それも、一人では無い。』
つまりこの朧の団には、公孫翔よりも強い男が二人以上居る事になる。刹那を軽くあしらう程の、公孫翔よりも強い男が……。
そしてその男は確実に、三つに分けられた部隊の隊長を任されているに違いない。
「…………。」
つまり、この男が。……黄牙が。
……いや、そもそも黄牙は。朧の団頭目である公孫翔が、"相棒"と呼んだ人物なのである。相当な実力者と、考えるべきだろう……。
「どうした?」
「……いや、何でもねぇ。」
にやりと笑う黄牙の問いに、刹那はぶっきらぼうに返す。
黄牙率いる、この部隊の人数は五十五人。先ず朧の団体頭目公孫翔率いる本隊が突撃をし、敵をある程度引き付け。そしてその間に、残り二つの部隊が館を目指し、突撃をする手筈となっている。
公孫翔は、領主の護衛部隊の数は約千五百と言っていた。しかし昨夜の一件で、その数を増やしている可能性が高い。
──ドドドドドド!
朧の団の姿を確認した領主が、館の守りを固める為に、護衛兵の全軍を投入し始めた。……その数は、およそ二千弱。
それに対し、公孫翔率いる本隊は二百程度しかいない。
「…………。」
刹那はそれに対し、少し疑問を感じていた。
……この戦力差で、奇襲すらかけない公孫翔の戦い方に。二千弱を相手に、たった二百程度の兵力で。……何故真正面から馬鹿正直に、正々堂々と勝負を挑むのか。
刹那は、疑問を感じずにはいられなかった。
隊長らしき人物が号令を発し、騎兵の一団が朧の団本隊に突撃を開始する。
「突撃!!」
──ドドドドドド!!
二百程度しかいない、寡兵の朧の団本隊に。領主の騎兵一団は、約半分の千で襲いかかる。約五倍と言う兵力差もあり、誰の目にも朧の団が不利な状況に映るは明らかだった。
それは刹那の目にも同様に映り、刹那の頭に不安が過る。
──ドドドドドド!!
迫り来る一団に、公孫翔は不敵な笑みを浮かべる。
「……やれやれ、俺も舐められた物だ。たった千で、この首を取れると思われているとはな……。誘き寄せて撹乱するつもりだったが……。気が変わった、殲滅するぞ。」
「オオオオオオオオ!!」
公孫翔は高々と剣を掲げ、味方兵を鼓舞し突撃を開始した。
武将紹介
「優駿」
武力 45 かなり低い。
知力 75 割りと賢い。
主人公オーラ 50 あまり無い。
一応これでも主人公。
亡き国、優国の王子。
生き別れの妹を探している。
祖国の復讐の為、蛇国と戦う決意をすが。諦めて物乞いや盗みを働いている。
頭は悪く無いのだが、使い方を知らない。
こんな治安の悪い、しかも圧政に苦しむ翔国に来た事を少し後悔している。
「刹那」
武力 89 かなり強い。
知力 54 ちょっと低め。
髪型 95 かなり気合い入れてる。
村の自警団の一員。
剣の腕は相当な物で、盗賊百人を平気で蹴散らす実力を持つ。この大陸でも屈指の実力を誇ると言えるだろう……。
でも頭の方は、お察し。
綺麗な長髪の黒髪が特徴。毎朝一体何時間掛けているんだ?って位に気合いが入っている。
「公孫翔」
武力 刹那より強い
知力 高い筈
髪型 98 美容院通ってるの!?
朧の団の若きリーダー。義賊。これでもかって程、髪型に気合いを入れている。え?毎日、美容院通ってる?ってレベルに気合いが入っている。後、仲の良い妹が一人居る。
「黄牙」
武力 かなり高いらしい。
知力 そこそこ高いらしい。
キザ ちょっとキザ。
公孫翔の相棒。
非常に腕の立つ剣士。




