第十三話 「有志」
優駿は牢獄の中で一人、気を失い倒れていた。それをまるで、塵芥でも見るかの様に優駿を見下ろす領主達。
「朝迄に殺して門の前に吊るしておけ、この俺に逆らうとどうなるか……。いい見せしめになるだろうよ。ハーハッハッハッハ!!」
……そんな牢獄の中に囚われた優駿の姿を、領主の娘は遠くから心配そうに見つめていた。
────────。
刹那なある建物の一室で目が覚める。意識はかなりぼんやりとぼやけ、何も考えずにただ上の空で天井を見上げていた。次第に記憶がはっきりとし始め、激痛と共に起き上がる。
「ゆ、優駿!……ぐあっ!」
起き上がったものの、激痛に襲われ声を上げる刹那。そして傷口に手を当てた時に、自分の体に包帯が巻かれており、傷の手当てが施されている事に気が付いた。
「……一体誰が?」
そして、自分が寝所に寝かされて居た事にも気が付く。
いや今はそんな事よりも優駿を、一刻も早く優駿を助けに行かなければ……。
……しかし、刹那は気が付く。
一体、どうやって助け出すと言うのか。今の自分では到底、太刀打ち出来ない強敵が二人。しかもこちらは自分一人な上、体は既にぼろぼろの状態なのである。
「……はぁはぁ、畜生!」
──ぎりっ。
刹那は、その悔しさに歯軋りをした。
「目が覚めたか?」
──!?
誰だっ!?と、警戒し手探りで自分の剣を探す刹那。……しかし刹那は、その顔に見覚えがあった。
あの盗賊の男の、後ろに立っていた人物だとすぐに気が付く。
「もう少し寝てろ、すぐに翔を呼んでくる。」
……翔?
どうやら、自分は朧の団に助けられたのだと刹那は理解した。
「……くっ。」
刹那は悔しかった。村の仇は一人で取ると……。自分のこの手で討つと決めたのにも関わらず、強敵の前に無様に敗れ去り。朧の団に助けられた事に、そして自分の弱さに腹を立てていた。
「くそっ!」
──ドガッ!
刹那は、人物の弱さが悔しかった。自らの未熟さが……。
自分がもう少し強ければ……。奴よりも強ければ、領主を討ち取り村の仇を討つ事が出来たのだ。……もっと自分が強ければ、優駿も救えた筈なのだ。
刹那は、何よりも自分の弱さが悔しかった。そしてもっと、強くなりたいと拳を強く握り締た。
「……おいおい、壊さないでくれよ。家は、ぼろいからな。」
「お前は……。」
扉からは先程の男ともう一人、あの盗賊の男が入って来た。やはり、この男が朧の団の頭目なのだろう……。
二人は椅子に座り、刹那に話し掛ける。
「……そうだな、先ずは名前を聞こうか。」
「…………。」
刹那は助けて貰った恩がある事だしと、素直に名乗る事にした。
「……刹那だ。」
「…………。」
盗賊の男は、にやにやと笑いながら刹那にこう話し始める。
「刹那か……。全く、困った事をしてくれた物だ。お前が夜襲をかけてくれた陰で、こちらはいい迷惑だ。領主は怯えて、更に護衛を増やす事だろうよ。そうなれば必然、明日の俺達の戦いに影響が出る。そして、より多くの戦死者が出る事は間違い無いだろう。それに、もう一人はどうした?姿が見えないが……。まあ大方見当が付くがな。」
「……くっ。」
刹那は何も言い返せなかった。何一つ言い返せず悔しさに拳を握り締め、唇を噛み締めた。
「……何が言いてぇ?」
「察しが良くて助かる。」
盗賊の男は、にやにやと笑いながらこう言った。
「お前、朧の団に入れ。」
──!?
「…………。」
刹那は少し俯き考える。
「両者の利害は一致していると思うがな?俺は仲間の戦死者を減らしたい、お前は村の仇も討てもう一人の仇も取れる。」
──!?
「優駿は死んじゃいねぇ!!」
刹那は怒りを覚え、そう叫ぶのだが……。血を流して倒れていた優駿の姿を思いだし、肩をがっくりと落とす。
「……まだ、死んじゃいねえ。」
「そうか、それは良かったな。……では、尚更助け出さないとな。」
刹那は悔しかった、何も出来ない自分自身が……。自分の、その弱さが何よりも悔しかった。
「……分かった、入ってやるぜ朧の団に。」
刹那は意を決し、力強くそう答える。今は自分の意見よりも優駿の救出を、優先するべきだろう。
優駿を救う為に……。友を救う為に刹那は、ここは一先ず朧の団に協力を仰ぐべきだと判断した。
「そうか、腕の立つ奴なら大歓迎だ。よろしく頼むぜ、期待の新人君。」
「……ああ。」
「俺の名前は公孫翔、この朧の団の頭目をやっている。で、こいつの名は黄牙。……俺の相棒だ。それと刹那、後で黄牙に礼を言っておけよ。瀕死のお前を奴等に囲まれた、あの中から救い出したのはこいつだからな。」
刹那は、あの時の状況を思い出して黄牙の方を見る。
「そうか、お前が……。助かったぜ、礼を言う。」
「ふっ……。礼等必要無い、お前がその分働いてくれるならな。」
「もう少し体を休めて置け。日が昇り次第、領主を討つ。」
「……ああ。」
そう言って、二人は部屋を後にした。
刹那は横になり自分の手を見つめる。そして、その手を強く握り締めた。
「……待ってろよ、優駿。」
武将紹介
「優駿」
武力 45 かなり低い。
知力 75 割りと賢い。
主人公オーラ 50 あまり無い。
一応これでも主人公。
亡き国、優国の王子。
生き別れの妹を探している。
祖国の復讐の為、蛇国と戦う決意をすが。諦めて物乞いや盗みを働いている。
頭は悪く無いのだが、使い方を知らない。
こんな治安の悪い、しかも圧政に苦しむ翔国に来た事を少し後悔している。
「刹那」
武力 89 かなり強い。
知力 54 ちょっと低め。
髪型 95 かなり気合い入れてる。
村の自警団の一員。
剣の腕は相当な物で、盗賊百人を平気で蹴散らす実力を持つ。この大陸でも屈指の実力を誇ると言えるだろう……。
でも頭の方は、お察し。
綺麗な長髪の黒髪が特徴。毎朝一体何時間掛けているんだ?って位に気合いが入っている。
「公孫翔」
武力 刹那より強い
知力 高い筈
髪型 98 美容院通ってるの!?
朧の団の若きリーダー。義賊。これでもかって程、髪型に気合いを入れている。え?毎日、美容院通ってる?ってレベルに気合いが入っている。後、仲の良い妹が一人居る。
「黄牙」
武力 かなり高いらしい。
知力 そこそこ高いらしい。
キザ ちょっとキザ。
公孫翔の相棒。
非常に腕の立つ剣士。




