第十一話 「闇夜に駆ける」
──ザシュ!
「ぎゃあ!」
「ぐはぁっ!」
暗闇に紛れながら、刹那は次々と領主の館を衛る兵士を斬り裂いて行く。衛兵達は皆、暗闇の中忍び寄る刹那の動きに全く対応出来ず。姿の見えない襲撃者の影に怯え、その聞こえてくる味方の悲鳴に恐怖を感じていた。
──ざざざっ。
刹那は暗闇に紛れ、極力戦闘を避け一気に門迄駆け抜ける。館にある門を飛び越え、刹那は領主の館の敷地内に侵入する。そこには灯りが灯されており、刹那は十数人の衛兵に見つかってしまった。
「何者だっ、貴様ぁ!!」
──ザシュ!!
刹那に襲い掛かる衛兵数人を斬り捨て、横目で扉の位置を確認する。
「…………。」
目的は領主の首である。いちいち衛兵に構っている暇は無い。時間を費やせばその分、騒ぎに気付いた衛兵達が集まって来るだけなのだ。
──ドガッ!!
刹那は衛兵を斬り付け、そのまま勢い良く駆け出し扉を蹴破った。
──!?
館の中に入ると、すぐに刹那は衛兵に囲まれる。……数は、四十。
「確か、領主の部屋は二階って話だったな。……あれか。」
前方に四十、そして後方からは先程の衛兵達十数人が戻り刹那は挟まれる形となる。二階への階段を見つけた刹那は、そのまま階段へと突き進み、迫る敵兵を斬り裂き素早く階段を駆け上った。
二階へと上がった刹那は、二階に居る敵兵の数を確認する。……兵の数は、二十程度。
「思ったより少ねぇな、行けるぜ!!」
夜襲が成功したのか、予想より少ない衛兵の数に刹那は少し安堵する。しかし衛兵の数は少ないものの、既に刹那が倒した衛兵の数はゆうに百を超えていた。
──ザシュ!
「ひぃ……。」
一瞬で十数人の衛兵を倒す、その刹那の強さに怖れ。残りの兵士達は皆、逃げ出し始める。
「……へっ。」
思ったより手応えの無い衛兵達に、刹那は剣を払いすたすたと領主の部屋に向かい歩き出す。
「……ここか。」
優駿から聞いていた領主の部屋の前に立ち、刹那は剣を強く握り締める。
──ゾクッ。
刹那は、背後に恐ろい殺気を感じとり慌てて振り返る。
「領主の部屋はそこじゃねぇ、その一つ隣の部屋だ。……まあ、今は居ないだろうがな。」
刹那が振り向くと、そこには男が一人立っていた。いや正確には剣も抜かず、背を壁にしてもたれ掛かり余裕の表情を見せていた。その男を前に刹那の背筋に強烈な悪寒が走り、刹那の脳裏にあの盗賊の男の姿が過る。
「があっ!!」
──ガキィン!!
刹那はその怖れを振り払うかの様に、全力でその男に斬り掛かる。だがその男は刹那の放つ凄まじい速さの剣を全て難無く自身の剣で捌いていた。
──ざざっ。
刹那はその男が放つ恐ろしい殺気に怯み、一旦離れて間合いを取る。
……刹那はこの男に、あの盗賊の男同様に徒ならぬ恐ろしさを感じ取っていた。
刹那は驚愕した。刹那の放つ渾身の一撃を難無く防ぎ、そして何時剣を抜いたのかさえ理解出来ない、その抜き身の速さに……。
「……どうした?もう、終わりか?」
不敵に笑うその男に、刹那は拭いきれない何かを感じ取り呼吸を荒げていた。
──ガキィン!!
そして、刹那は何度もその男に剣を叩き付ける。
「何なんだよ!てめぇらは!!」
ガキン!ガキィン!!
……十回、二十回。刹那の放つその攻撃の全てを、その男は難無く払いのける。
「があっ!!」
怒りに任せ闇雲にその剣を叩き込む刹那だが、その男の放つ蹴りを喰らい刹那は、下の階へと蹴り落とされた。
「ぐはぁ!」
──ドガッ、ドガシャーン!
「……つっ、つつ。」
刹那は慌てて立ち上がり、周囲を警戒する。
「後は任せたぜ……大将。」
──!?
背後から迫る恐ろしい殺気に気が付き、刹那は慌てて後ろを振り返る。
「……何なんだよ、この化け物は。」
──ドガッ!!
……それは一瞬の出来事だった。刹那が気が付いた時には既に、その者が放った戦斧の直撃を喰らい、吹き飛ばされて壁に激突し……。
刹那は、そのまま意識をを失ってしまった。
武将紹介
「優駿」
武力 ?? かなり低い
知力 ?? 意外とあるかも?
主人公オーラ 50 あまり無い。
一応これでも主人公。
亡き国、優国の王子。
生き別れの妹を探している。
祖国の復讐の為、蛇国と戦う決意をすが。諦めて物乞いや盗みを働いている。
頭は悪く無いのだが、使い方を知らない。
こんな治安の悪い、しかも圧政に苦しむ翔国に来た事を少し後悔している。
「刹那」
武力 89 かなり強い。
知力 54 ちょっと低め。
髪型 95 かなり気合い入れてる。
村の自警団の一員。
剣の腕は相当な物で、盗賊百人を平気で蹴散らす実力を持つ。この大陸でも屈指の実力を誇ると言えるだろう……。
でも頭の方は、お察し。
綺麗な長髪の黒髪が特徴。毎朝一体何時間掛けているんだ?って位に気合いが入っている。




