一話 「誓い」
……空腹でもう動けない。僕はこのまま死ぬのだろうか?
あれから九年……。僕は住む家も無く、自堕落な物乞いの日々を送っていた。でもそれも、もう終わるだろう。
……僕は何も出来なかった。復讐も、妹に会う事も。何も……。
人の行き交う道の端で、僕はその命が尽きるのをただ待っていた。
……僕は、何もかもを諦めた。
──ガラガラガラ。
道を歩く人々も、道を走る馬車も。皆、道端で倒れてる僕を気にする者は一人もいなかった。行き倒れ何てのは、この国では何ら珍しくも無いのだから。……特にこの国では。
…………。
僕はこのまま死ぬのだろう。
……どうでも良かった。しかし、最後に妹には会いたかったなぁ。
…………。
──ガラガラガラ。
彼の名は優駿。復讐を誓う、亡国の王子。
そんな優駿は、この国を。いや、この大陸全土を巻き込んだ戦いに挑む、熱き七人の男達と出会う事になる。
そして、彼らはこの世界を変える。
──九年前。
轟々と燃え盛る城の中、僕は妹の手を握り締め必死に逃げ出していた。
ここ優国は隣国である蛇国の侵攻を受け、そして敗れ去った。父と母は子供達だけでも逃がそうと、信頼している世話係の者に任せ裏口から僕達を逃がす。
「さあ、こちらですじゃ。」
僕達は必死に走る。しかし、既に城も街も全て蛇国に占領されており、僕達はすぐに見つかり敵兵に捕らえられた。
僕達は引き裂かれ、妹は連れて行かれた。
その後、将軍周衛率いる味方の部隊に助けられ一命を取り止めるが。
……僕はその時、将軍に酷い言葉を言ってしまったのを、今でも後悔している。
「お前は、優国最強の将軍なんだろ?どうしてお前が居るのに、父と母は……。お前せいだ、父と母を……。妹を返せっ!」
……周衛将軍は、何も言わなかった。
その後、蛇国の大軍に囲まれ、僕達は散り散りになる。
「王子、必ず御迎えに上がります。それまで、どうか……。どうか生き延びて下され!」
僕は走った、必死に走り続けた。
しかし、隣国に向かう途中の砂漠で力尽き倒れ込んでしまう優駿。
「死ぬものか。……こんな所で。」
僕は歯を食い縛り、力強く砂漠の砂を握り締める。
「……必ず滅ぼしてやる、蛇国を。必ず滅ぼしてやる、僕のこの手で!」
……敵国蛇国に復讐を誓う少年、優駿。父と母、そして祖国の復讐の為。少年は立ち上がる。