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長い一日の終わりに

「まさか、お前がシスターを殺したわけじゃないだろ?」

 

 ローストチキンをガツガツ食べながらマニーナは言った。

「殺したのは我ではない。シスターはニーナちゃんを逃がそうとして必死に抵抗してくれたのじゃ。いわば命の恩人じゃ!」


「命の恩人?」


 マニーナの話だとこうだ。


 ニーナは元々特殊異端スキルが発現すると予言されていたらしい。そしてスキルが発現するまで監視役を担っていたのがシスターだった。

 ここまではよくある話だ。ニーナのような強力なスキルが発現する者は教皇庁によって管理されているという話は俺でもよく知っている。


 そして殺されたシスターは心ある人物だったようだ。


「シスターは男に引き渡す直前にニーナに逃がそうとして殺されたのじゃ!」


「殺した男とはナダエルに化けるグリッツだな?」


 マニーナは首を振った。「あいつもニーナちゃんを狙っていたが、シスターを直接殺めたのはもう一人の男じゃ」


「誰だ?」


「ニーナをグリッツという男に売り渡そうとしていた男じゃ!」


「名前は分からないのか?」


 マニーナが答える前にそれまで黙って静かに酒を飲んでいたソフィアが呟く。


「その話からして、男とはトルケマダ・スロブリン、じゃないかしら?」


「そうじゃ! そうじゃ! トルケマダという男じゃ!」


「待ってくれ! トルケマダ・スロブリンって言ったら教皇庁の異端審問官。なんで異端審問官と闇ギルドが関係を持っているんだ」


 ソフィアは平然と答えた。

「トルケマダ異端審問官が管理する特殊異端者を闇ギルドに売れば一財産築けますからね。まさか本当に異端審問官がそんなことをしているとは今知りましたけれども」


 確かに強力な能力を使う特殊異端者を闇ギルドに売り渡せば、互いの利益につながる。


 俺はため息を一つついた。

「やれやれ、次から次へと。権力中枢にまで闇ギルドが入り込んでいるというわけか」


 一聖騎士だった頃は王都がここまで腐敗していたとは気づかなかった。おそらくトルケマダ・スロブリンはマニーナのことを追っていることだろう。グリッツが最後にはいた言葉「血の報復」も厄介な問題だし、気が休まる暇がない。


 その時、来客を知らせる呼び鈴が鳴った。


「お客さんだ!」


 止める間もなくサニは受付へ向かって行った。念の為カノに尋ねた。

「カノ、何か嫌な気配は感じるか?」


「いや、来客の気配すら感じないのですが……」


 索敵スキルがあるカノが気配を感じないとなると聖術もしくは何かのスキルでも使っているのか?そう思い、マニーナに目を向けるといつの間にか魔王化が解けてニーナに戻っている。


「ニーナ、魔王はどうした?」


「魔王さん、ビビって隠れてしまった」


「魔王がビビる?」


 嫌な予感がして、席を立つ。受付に向かおうとすると、サニが戻ってきた。いつになく畏まった表情だ。


「あの、依頼したいっていう人が来てる」


「それはよかった。依頼人は誰だ?」


 俺が尋ねると珍しくサニは声を震わせた。

「せ、聖騎士団団長のセシル様。セシル様がドンに直接依頼をしたいって。セシル様、サニの頭、撫でてくれたよ!」


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