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レオン・シュタインに関する報告 (セシル視点)

 長い一日だった。死体安置所に並べられた騎士たちに祈りを捧げてから、騎士団長室の椅子に座ると、ドッと疲労を感じた。一日を通り過ぎてみると、ルブラン公爵令息、リュカ・ルブラン子爵の捕縛未遂なんてどうでもいいことに思える。


 西の湖畔及び大森林地帯で起きたことは大惨事と言っていい。殉死者八名、リリスを含め重症を負ったもの十名。その結果、カポネの大幹部グリッツ・マーズを死亡したまま捕縛。甚大なる被害と引き換えに、近年稀に見る大物異端者を捕縛することになった。


 私は報告書に捕縛者の名前を認めた。捕縛者・元聖騎士レオン・シュタイン。現場にいた騎士の目撃情報によればレオンは大怪我を負いながら、第一聖騎士団の精鋭すら見たこともないスピードでグリッツを切り伏せたという。もしレオンがいなかったら間違いなく全滅していたとも騎士らは私に報告した。


 検死が行われ、グリッツは「宿木の戯れ」という名の異端スキルを持っていたことが判明した。騎士たちの傷痕から、聖マリアンヌ修道院のおけるシスター殺しの犯人もグリッツであることは疑いようがない。つまり、レオンはグリッツを捕縛しただけじゃなくシスター殺しの件も解決してしまったというわけだ。


 私は思わず机を拳で力一杯ドンと叩いた。


 自分の不甲斐なさにほとほと呆れてしまう。今回、多大な犠牲者を出した責任はこの計略に気づけなかった私にある。亡くなった騎士らにどう償えばいいというのだろう。

 

 グリッツが副騎士団長ナダエルを装っていたなんて気づきもしなかった。リリスの報告によればレオンは私に直接会ってナダエルが異端者であることを伝えようとしていたらしい。

 聖騎士団に闇ギルドの幹部が入り込むという前代未聞の事態を気づいていたのはレオンだけだったのだ。


 詳しく彼から話を聞きたいが、レオンがどのような状況にいるのかも掴めない。


 彼と直接対話したリリスは、レオン・シュタインは異端者ではなく、ミチーノファミリーなる闇ギルドにも所属していないと私に報告した。

 

 一方で、リリスを聖騎士団に送り届けたカノと言うエルフ、それから重傷を負った聖騎士らに治療を施したセネカはミチーノ・ファミリーに所属しているという情報がある。リリスの報告が正しいのなら、彼らとレオンの関係はなんだ?


 他にも現場にいた騎士たちからは他にも様々な報告を受けたが、グリッツが絶命する直前にレオンに向けて言った言葉が頭に引っかかってしょうがない。


「カポネの血の報復」


 この言葉を聞いて王都で震え上がらない人間はいない。カポネファミリーの結束力は闇ギルド随一。この宣告を受けたものは間違いなくカポネによって消される運命を辿る。グリッツが絶命する直前に黒い伝書鳥を見かけた騎士もいることから、知らせを受けたカポネファミリーは本気でレオンに報復することだろう。


 もちろん私たち聖騎士団も何人もの命を奪われたのだ。カポネ本体を弾圧する義務がある。

 いつかは来ると思っていたけど、王都は一時的に戦争状態に陥る。また命を落とすものも出てくるだろう。私はため息をひとつついて、ペンを置いた。


 報告書を書き終えると、私は立ち上がり、白のロングコートを羽織った。疲労など感じてる暇はない。明日から起きる事態に備えて、レオンと一秒でも早く意思の疎通を図る必要がある。聖騎士団の戦力に彼はもはや必要不可欠だ。未来の聖騎士団長として、なんとしても聖騎士団に戻ってきてもらわないといけない。レオンには可愛い女エルフなんかにうつつを抜かす暇はないのだ。


 手始めにレオンの目撃情報がある敗者の街区の酒場を訪れてみることにしよう。


 出かける準備を整えた時、ドアがノックされた。


「団長、客人です」


 こんな時間に客?誰だろうか?


「異端審問官のトルケマダ様が面会を求めております。レオン・シュタイン及びニーナ・ナイトスカイに関する情報共有がしたいとのことです」

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