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共闘

 ナダエルは言った。

「今のはまさか王命か? そういえばお前の異端スキルについてまだ聞いてなかったな。どんな能力が発現した? まさかと思うが王のスキルが発現したんじゃないだろうな」


「お前に教える筋合いはない!」


 ナダエルは笑みを浮かべた。

「レオン・シュタイン。お前を追放し、罪人に仕立て上げたのも聖騎士団を手中に収めるため。今やお前と私は対立する理由はないのだ。私が所属する闇ギルドはミチーノファミリーなんかよりも実入りがいい。お前の能力次第では加入させてやってもいい」


「お前が所属する闇ギルドなどに入るわけがないだろ」


 ナダエルは鼻で笑った。

「みすみすうまい話を逃すのだから、異端スキルを得て能無しではなくなったものの、無脳なのには変わりはなかったか。それに、お前に王命が使えるわけもないか」


 ナダエルは植物に絡み取られるリリスに目を向けた。「さて、リリス、続きをしようか。真面目腐った聖騎士たちの純潔の契りを破り、辱めるのは何事にも代え難いものなのだ」


 俺はもう一本の短刀で草木を切り払い、拘束から逃れるが、周りにはまた植物たちが繁茂し始めた。


 草木は俺の攻撃を防ぐだけじゃなく、時折鋭利な枝が貫くようにこちらに向かってくる。何度か避けきれずに、枝が体をかすめる。少し触れただけなのに肉を裂き、鮮血が流れた。騎士たちの甲冑を貫いたのもナダエルが操る植物で間違いない。


 そして厄介なことに植物の再生速度が速い。俺は何度かスピードをあげ、リリスに絡みつく植物を切り付けるが、すぐに草木は再生してしまう。


 森に響くのは「レオン! 私に構わず逃げろ!」というリリスの指示。


 まだ息のある聖騎士たちを一人でも多く連れてこの場を離れろという意味だが、拘束されるリリスを置いていけるわけがない。


 異端者だとは分かっていたがナダエルがここまでの実力者だとは想定外だ。能力から言って闇ギルドの大幹部クラス。一瞬でも気を抜けば地面に倒れるかつての仲間たちと同じ運命を辿ることになる。


 死に戦になるかもしれない、そう覚悟を決めた時だった。


 脳裏に「ドン!」サイレントボイスが響いたのだ。


「ドン! 心配で来てしまいました! えっと、全く、状況が掴めません。とりあえず指示してください!」


 その声はまさしくカノ。どうやらスキル「シャドーウォーク」を使って姿を消してこの場に来てくれたらしい。でもカノにはこの場は荷が重すぎる。


「ここは危険だ! この場から離れろ!」


「このままだとドンの命が危ないですよ! 何かご指示を!」


 俺はちらりとリリスの方に目を向けた。植物のつるに巻きつけられたリリスにナダエルは触手をたくみに動かし、じわりじわりと屈辱を与えていた。せめてリリスだけでも救う方法はないか?


 交戦しながら策を巡らせていると、脳にもう一人の声が響いた。

「兄貴、僕にできることはない!? あんなの流石に見てられないよ!」


 今の声はセネカだ。姿は見えないがセネカもこの場にいるらしい。その時、セネカの異端スキルの能力が頭によぎる。俺はサイレントボイスを通して指示を送った。


「セネカ! 異端スキルを発動してあの女騎士リリスを拘束する草木を切断しろ!」


 そして再び脳に響くのはセネカの声。

「了解! 兄貴!」


 セネカが発現する異端スキル「光速の殺し手」は一時的に速度を数十倍にあげる能力。あの力があれば植物が再生するよりも早く斬撃を放てるかもしれない。


 そして次の瞬間、狙い通り、リリスを絡みつく蔓が物凄い速さで切り離されていった。セネカ自身の能力が向上しているからか、以前に敗者の街区でやり合った時よりも速度が強化されているようで、瞬く間にリリスを拘束する草木が斬られていく。

 

 リリスが解放された瞬間、俺は目を見張った。ものすごい力で締め付けられていたらしく、リリスの四肢が不自然に変形していて、骨が何本も砕けている。すぐにカノに指示を送った。


「カノ! リリスを抱え、聖騎士団のセシルの元に送り届けろ! 姿が消せるお前なら逃げれるはずだ!」


「了解です!」


 次の瞬間、リリスの身体が視界から消える。どうやらカノがうまくリリスを抱えてくれたようだ。


 リリスが消える一方、場に姿を現したのはセネカだ。カノが遠くに離れたためにステルス効果がなくなったらしい。


 ナダエルはなにが起きたか分からないようだ。

「な、なにが起きたんだ? リリスはどこだ? お前が何かしたのか? これからが一番面白いところだったんだぞ!」


「女の人には優しくしなきゃダメだって、娼館のお姉さんもいってたぞ!」

 セネカはそう言ってナイフを構えた。


 ナダエルは少し落ち着いたのか、にやけ顔が戻ってきた。

「お前は確か切り裂きセネカだな。今はドン・ミチーノに飼われてるそうじゃないか。いっときは闇ギルドのお偉いどもが寂しがってたぞ」


「うるさい! ドンはあいつらとは違うんだ!」


「セネカ、お前は殺さず生け捕りにすることにしよう。何かと有用に使えそうだ」


 ナダエルが手を振りかざすと、また地面から植物が芽吹き始めた。


 俺はセネカに指示を送った。

「セネカ! 植物に手足を取られないよう気をつけろよ!」


「了解! 他に僕、なにをしたらいい?」


「二人でこいつを叩き斬る! 命令はそれだけだ! このクズ野郎は殺しても構わない!」


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