騒々しい死と静かな生
戦闘シーンと日常で全然書き方違うような感覚。
おかしい?
◇◇◇◆◆―――――――――――
ドゴオォォォォォン!!!!!!
突然の、背後の轟音に思わず振り向く。
……いや、それっておかしくない?
だって後ろは公園じゃなくてビル群で、転門地区じゃな
「オウオウ、コッチニイキノイイオンナラガイルナ」
――――それは正に火。大型の男の形を模った炎。
偶に微かに見える人肌の色は、それが少なくとも人である事を証明している。
いきなり現れて、炎のスキルぶっ放したのこの人?!
後ろのビルを破壊したのはこの人?だよね。
……まさか、テロリスト?!
「おい、フレーム。お前アツ苦しいんだから、女の子達怖がっちゃうでしょ。もっと感じ良くやってくれない?」
「ム、ドウスレバ?」
黒いローブを着た男が一瞬にして炎人の横に現れた。
如何にも悪人ぽい。
ガリガリそうな体型とおちゃらけた口調もそうだけど、何よりあの下卑た顔。
相乗効果で何となく嫌悪感を覚えてしまう。
「あ、でも、どっちも可愛子ちゃんだ!よくやった!」
男の口角はより一層上がる。
この人達は何を考えてる?
攻撃はしてこないし、何か狙いが有るのかも。
「それじゃあ早速―」
そう男が瞬間、視界の中心に捉えていたその姿は端に移動した。
今の動き、全く分からなかった!
高階級能力者っぽい!
男の右手は素早く青髪の子の口を覆った。
抱擁するかの様に背面に回した左手はいつの間にか彼女の両手首を掴んでいた。
「――!――――――!」
「うんうん!近くで見るともっと可愛い〜!」
「ッ!アイちゃんから離れて!!」
「っと〜。ほらほら、そこから攻撃したらアイちゃんに当たっちゃうよ〜?」
何ずっと固まってるんだ僕!
そんな暇が有るなら、早く、何か何とかする方法を考えて!
……さっきから彼女達を攻撃する様子は無い、だから目的は新高校生の誘拐とかそんな所、とか?
だったらやる事は時間稼ぎに決まってる。警察が来るまでの間の数分間、とにかく時間を使わせるんだ!
青髪の子は両手から勢い良く水を放出して、抵抗している。
……いや、それはブラフだ。
放水している流水の中に芯の様な物が見える。
あれで反撃しようとしてるんだ!
放水を止めた彼女の背後に現れたのは、巨大な尾。
先端には棍棒の様な突起が付いた、かの太古の恐竜を思い出させる様な、そんな尻尾が、大きく大きく撓る。
「ッッ!?ちょっと大人しくしててね!」
ローブの男は、咄嗟に右手を引っ込めて殴りかかった。
その拳は仄かな光を放っていて、何らかのスキルを発動しているのは確か。
だから、やらせない!!
「ッ!身体が―――」
動きを止めた数瞬、男の拳の衝突を追い抜いて、水の尾は男の横腹を、擲った。
「追撃しろッッ!!!」
ほんの少し安堵した自分自身と彼女達に、叫ぶ様に伝える。
奴はまだ意識が有る。
さっきローブ男と睨み合っていた時に剣を出してた緑髪の子と言い、青髪の子と言い、僕達には防御用と呼べる手札が無い。
攻撃しないと稼げる時間も稼げない!
もう戦ってから数分経った気分だけど、実際はまだ全然経ってないかも。全く警察が来る気配が無い。
あぁぁぁとにかく警察早く来て!来てください!!
最悪警察じゃなくても良いから誰か助けに来て!!!
「――ッごふっ……クソがあぁぁァァッ!!!おいフレーム!あの男を殺れッ!!」
「アァ、ワカッタ」
吹き飛んで、遠くで蹲りながら喚くローブ男とは対照的に、炎人はこちらの直ぐ近くで了承の返事をする。
「――サラリーマンさん!私達がこの火男の相手をします!彼方の魔術師をお願いできますか?」
「あぁ!分かった!そっちは頼んだ!」
炎人は言うまでもなく火。
対して青髪の子は水を使う。相性としては有利なはず。
しかも、さっき使ったローブ男を止めた、服の動きを止めて相手を封じる方法は、炎人には使えない。
何故なら炎人は半裸だから。
ローブ男でも服を3枚固定して、何とか耐えられた様な手応えだった。
こんなガタイの良い大男の薄着1枚止めたぐらいで、動きが鈍るとか、そんな事有る訳無いよね…
とにかく、僕はできる事をやるしかない!
とりあえずローブ男まで走って、殴る!!
「チッ、むさい男に用はねぇんだよ!――おらぁッ!」
ローブ男は土や火、水の散弾を飛ばしてくる。
そう言えば、さっき心の中で防御用の手札が無いと言ったけど、あれ嘘だった。
ふぅ〜……【眼力】【眼力】【眼力】【眼力】【眼力】【眼力】【眼力】【眼力】【眼力】――――――
「――ッな、ァっッ!」
僕が止めた物体は、速度が0になる。
非生物なら止められる。
攻撃を通すなら、勢いが少々足らないなぁぁぁ!
「はあぁぁぁぁ!」
走る勢いを上乗せして1発、続けて2発、3発!
絶対休ませるな!叩け!動け僕の身体!続けろ!
「はぁ!はっ!っ!っはぁ!!」
考えるな、殴り続けろ!
「――――――あ、しまっ」
左足に、力が入らず、よろめいてしまった。
魔術師は、ニヤリと下卑た笑いを顔に貼り付けて唱えた。
「【空間魔法】【リプレース】」
スキル名通り、魔術師は消えて、代わりに現れたのは一面の焔。
「【炎身】【焼脚】」
蹴り抜かれた一撃。
身体は激痛を浮遊感を感じながら、後方に飛ばされて行く。
「――ッガぁッ」
フェンス際に植えられた木に背中をぶつけて飛行が終わる。横たわる我が身に接近する赤色が僅かに増幅して
「【火刑】」
ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁァァ!!!!!あついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあついあつああああああぁぁぁぁぁぁぁ
………………………………………
………………………………
……………………
……………
………
…
◇◆◇
「間に合わ、なかった…まだ」
「ン?ダレダ、オマ――――――」
「【救恤】」
「――――っっはぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁあっこほっこほっこほっ」
思考が、安定しない。
視界がぼんやりしてる。
左半分に焦茶 右半分に、白?
焦茶っぽい色も有る
「回復した?」
「あ、ぁあ……なんと、か。こほっ、ぁ、りがとう」
仰向けになって休んで、
渡された水筒の水を飲んで、
何とか話せるぐらいには回復した、ぽい。
さっきのはスキル?
「ぁらた、めて、ありが…………とう」
……今、見上げた時、一瞬しか見えなかったけど。
白い彼の左半身が焼けていた。
「あぁ、見苦しい姿を見せたね」
「……それ、ぼくのでしょ?」
「そうだね」
やっぱり、そっか。
じゃあ、今見えている左目もそう言う事になるのか。
「なんで、そこまでしてくれたの?」
「…貴方が『助けて』と呼んだから。私の役目だから。純粋な天使ならそう言ってたかもしれない。……けれど僕は、違うから。そうだね、僕なりに贖罪がしたかった。そう受け取っておいて」
「しょく、ざい…か。あの子たちは」
「あの人達も怪我と疲労が酷かった。そこに寝かせてる」
ああ、それなら良かった、本当に。
時間稼ぎが無駄にならずに済んで良かった。
結局彼に全部助けられたけど、そこまで繋げる事ができたのは間違いなく僕自身のお陰、なんだ。
それにみんなを助けたのだから贖罪なんて考えなくて良いのに。僕は十分過ぎるお釣りを貰ったし。
「そう、治した時に、貴方の記憶が少し入ってきて」
……それはこっちのセリフだよ。僕の記憶のメッキも剥がれてきたし。
何で今の記憶が無いの?とか
どうしてそんなに平然としてられるの?とか
彼のだけでも沢山。もの凄く気になる。色々聞きたい。
気になるけど、
それを今話さないって事は話してほしくないんだろうな。
「どう?やってみない?異世界転生」
「…………へ?」
え?異世界転生?
段々慣れてきました。