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自由と鬼胎と眼力  作者: いさら井蛙
童時代
17/20

断ち切る事は厳しい事

ちょっといつもの倍ぐらいの文量です。

◇◇◇―――――――――――――


「「ただいま」」

「あら、おかえりなさい」


 校門前で待たせていたラントカイと一緒に帰宅した。

ラントカイは隣の家に住んでるけど、子供化してからは、家事をする為に一々戻るのも面倒らしくて、一緒の家に暮らしている。

だから毎日一緒に帰る様にしてるんだけど……長い時間待たせてしまってごめんね。後で謝っておこう。


「お母さん、今日も剣、教えてもらっていい?」

「いいわよ〜。さっきまでお母さんも練習してたもの。まずは手を洗ってからね。ランはどうする?」

「私も久々に手合わせお願いします」

「分かったわ」


 あれ?今日はラントカイも参加するの?

初めて見る……どんな戦い方するんだろう?


――――――――――――――――


 989…990…991…992…993…994…995…996…997…998、999、


「せん!!っはぁはぁはぁ」

「お疲れ様シアト。1週間前と比べて結構様になってるわよ!」

「そ、れはぁ、良かった」


 学校が始まった1週間前から僕の剣術訓練は始まった。剣術と言っても、まだ初歩の段階にも立っていないから、木剣を正面に構えて振り下ろす、所謂素振りを毎日1000回繰り返している。

確かに大変だったけど、お母さんの教え方が上手で、「ここに力が入り過ぎてる」「ここの動きができてない」などなど的確にアドバイスをしてくれて、自分自身でも分かるぐらい、改善された実感が凄い。

 

「この後、お母さんはランと練習するけど、見たい?」

「……はい」

「ふふふふ、そう言うと思って、じゃじゃーん!マッサージチェア!!私と同じ『チェア』って名前が入ってるし、人気だって書いてあったから買ってみたら凄いの!この瘤が動いて気持ち良いのよ。シアトもこれに座ってみて!」

「う、うん!」


 あー、マッサージチェアなんて名前だし、絶対転生者居るな……感謝しかない!


「そう言えば、お母さんは疲れてないの?」


 いつもお母さんは、僕と同時に素振りを始めて、5分もかからずに終わっているんだよね……

疲れている様には見えないけど、何となく聞いておきたい気持ちが有る。


「全然疲れてないわよ」

「えぇ……」

「私は『鬼』なのよ?大人の鬼なら全員このくらいの運動は朝飯前よ!」


 あ、種族は鬼なんだ。なるほど、それなら角とか身体能力とかも納得だなぁ。

となると、僕は半鬼半龍人と……ふむふむ。

つまり、将来は僕もお母さんみたいな超人になるのが約束されているのか……ま、まぁ良いや。かっこいいし。


「シアト、勘違いしないで。チェア様は妖怪の中で、亡くなった方々を合わせてもトップクラスに化け物だから」

「準備運動は終わったの?ラン」

「終わりました。シアトにチェア様の力を見せつけられる様に頑張ります」

「ふふ、そう簡単にはいかないわよ?」


 ラントカイが持っているのは……木刀?博物館の展示品で見た事有る物よりも少し短い気がするから、脇差とか短刀ってやつかな?この世界にも刀が有るんだね。

対するお母さんが持っているのは、素振りの時と同様に木剣。どんな戦いになるのかな…この世界に来て戦いは初めて見るし、しっかり見ておこう。




 まず最初にラントカイが踏み込んだ。

速い。とても小学1年生とは思えないスピードでお母さんに近づいて、打ち込む……と思ったらフェイントか!外から見てるのに全然分からなかった…


 お母さんは、その動きに対応して、ラントカイの攻撃を受け流した。続く斬撃を予想していたのか、ラントカイは既にお母さんの背後に移動していて、斬りかかる。それをお母さんが打ち返して……


「あれ?何か段々速くなってない?」


 いや、確実に速くなってる。さっきは目で追えてたのに今は無理。

お母さんの周りをラントカイが高速で移動して何度も攻撃してるのは分かるんだけど、どう移動してるかがさっぱり分からない。攻撃もお母さんの動作と剣がぶつかる音で漸く理解してる。


 これを凌いでいるお母さんは凄いな。ラントカイよりもゆっくりな動きなのに、ラントカイの斬撃を受け流したり、弾いたりしている。しかもラントカイは身長が低くて攻撃が腰下に集中してるから防御しづらいだろうに、全ての攻撃を防いでいる。

何より体の動きが凄い。体の位置が流れる様に変化してると言うか……滑らかに水平移動してるみたい。


「まだまだ、この程度じゃ私の力を引き出したとは言わないわよ?」


 動きながらお母さんは、ラントカイに向けて煽り文句を放つと、ラントカイの攻撃のスピードが目に見えて動きが速くなった。いや、もう完全に目では見えないんだけどね。


 うん、もう全然分からない。何をどうやってここから学べと?お母さんの滑らか移動は参考になるけど、絶対に一朝一夕で身につく代物じゃないし。そもそも、剣術が見たいけど、打ち合ってる所全然見えないし。

超次元ってこんな感じなんだね。


「はい」

「っッ!!…はぁ、負けました」


 よく分からないまま、突然試合が終了した。

そして2人ともそんなに疲れていない。

ラントカイ、人の事言えないよ?


「久々ってのもあると思うけど、やっぱり体格が変わった影響が大きいわね。キレがいつもより無かったし、軽かった。まぁ、すばしっこくはなったかしら?」

「そうですねー、相手の懐に潜りやすくなったと言うのは良いですけど、今後体格が異なる相手ばかりと戦うとなると少々前の方が良かった気もします。キレの方は、まだこの身体で長い間過ごしていないので、なんとも」

「そうね……シアトは見ててどうだった?」

「全然分かんなかった」

「そっか〜。でも、私達ぐらいの力量の人は結構いるから、シアトにもいずれこのレベルにはなってもらうわよ!」


 この世界、怖!


「そ、そう言えば、ラントカイが使ってる武器って…」

「あ、知らなくて当然よね。これは刀って言う剣よ。ちょっと普通の物より短いし、木製だけど。私達の故郷で流行った武器でね」


 故郷で流行る……と言うと、お母さんやラントカイの故郷には、鍛治屋とか刀マニアの転生者が居るとか?


「ほら、これが刀。ラントカイが戦う時に使う物よ」


 鞘から取り出すと、鈍色の刀身が姿を現す。

あんまり詳しくないけど、分かる。これは日本刀だ!

漫画とかで見た事が有る、あれらの刀と同じ様に、波打つ刃文が綺麗で、思わず見惚れてしまう。


「シアト?」

「お母さん、これ誰が打ったの?」


 きっと相当な刀マニアに違いない!

転生者なら会いに行きたいなぁ。



「ふふふふ、私」

「……え?」



 え?今なんて?


「私が作ったの!」

「……えっと、お母さん鍛治師だっけ?」

「いいえ、私は冒険者しかなった事無いわね」

「だよね…」


 

 え、どゆこと?


――――――――――――――――


 結局よく分からないまま、寝る時間になってしまった。

今日はよく分からないまま進む事が多かったなぁ。

しっかり寝て頭の中を整理しよう。


「シアト」

「ん?何、ラントカイ」


 ラントカイがほぼ家族の一員になってからは、僕と一緒の部屋で寝る様になったんだよね。寝る前に忘れてた事を指摘してくれるから凄く助かってる。

ん?待て。今日も何か忘れてる気が……


「学校から帰る時、長時間待たせた挙句走って帰らせた事忘れてないよね?」

「あ!!」


 そうだ、貴族の名前復習しないと!

明日の朝に覚えてなかったら、フィナーラが激怒するだろうし……もう既に1人怒らせてたわ。


「『あ』って言う事は、覚えてなかったの?」

「いやー、ちょっとだけ休憩してから勉強しようかなーって」

「とりあえず、今から直ぐ復習する。今夜は寝かせない。あと、何か言う事は?」

「ご、ごめんなさい」

「私以外にはしない方が良い。はぁ、親が親なら子も子と言うか…」


 今日言われた主要な貴族の名前を一通り復習したけど、7割ぐらいは覚えていて、正直助かったよ。このまま本当に寝付けなかったら、睡眠不足でまたラントカイを苛立たせたと思うし。

そう言えば、ラントカイとお母さんは同郷だし、剣の練習の時に聞けなかった事を聞いてみよう。そろそろラントカイの機嫌も直ってきたし、丁度良いかな。


「ラントカイ、1つ聞きたい事が有る」

「……何?」

「お母さんとラントカイの故郷ってどんな街だったの?」

「……」


 あれ?何か地雷踏んだかな……


「そうだね……。物怪村って言う村でね。この街とは文化が全然違った。森の中で暮らしてたからでもあるけど、建物は木製だし、野菜とか穀物を中心に食べて生活してた。肉類は狩猟だと量が安定しないから、柵を作って家畜として牛とか鶏を自分達で育ててたんだよ?」

「……」


 

――――追憶に耽る表情の中に、固まった悲壮感を滲ませて語っているのだから


 

 ……聞かない方が良かったのかもしれない。


 

「色々な種族が暮らしてた。村って名前だけど、人口もこの街と変わらないぐらい多かった。近隣の街は無かったけど、少し離れた街と昔から交流があって、それで鉱石とかも手に入れる事ができたから刀とかが生産されてたみたい」

「……」

「あの頃は、宮仕えしてた私にも聞こえるぐらい、広い村長宅の奥まで聞こえるぐらい毎日毎日子供達の笑い声が響いてた。偶にチェア様と一緒に家から抜け出して、市井の子供達と遊んでたりもしたんだ。懐かしいなぁ、もう、全部無くなっちゃったけどね」


 それを割り切る事は、きっと僕にはできないから。

いつも頭の中で設定考えて、寝ると忘れてしまうので、設定を思い出せる何かが欲しいですね。

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