小学校入学
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タオタオ町立カマエラ小学校
タオタオ町には、小学校が1個、中学校が1個、高等学校が1個存在する。
そんなに過疎化しているのかと思うかもしれないけど、実際はそれぞれ1個しかないだけでマンモス校。
それぞれの学校は別々に有るけど、殆どの生徒は同じ小中高に行くから、実質一貫らしい。
今日は小学校の入学式。
僕達を出迎えたのは、生徒席以外が見事に埋まった大講堂。
新入生が900人ぐらいと聞いてるから、それぞれの親が来てると考えると、これぐらいの数には妥当っちゃ妥当だけど……圧巻と言うか、プレッシャー半端ないよね。
おまけに貴賓席なんて物も並べられている。
座るとしたら、この町の町長と、あとタオタオ町が属しているコーピオ領の領主とかかな。
どうやら今年は、両者のお子さんがこの学校に入学するらしいし、流石に見に来てるとは思う。
入学式は恙無く終了した。
僕が昔通っていた小学校では、入学式の時に新入生の名前を1人1人呼んでいたから、今回も約900人の名前ラッシュ耐えるぞ!と意気込んでいたけど、流石に無かったみたい。
唯一呼ばれたのは、新入生代表と呼ばれていた町長の息子、名前はプライと言うらしい。小1にしては随分と立派にスピーチをしていたから印象に残った。
印象に残った事と言えば、校長先生の話が想像以上に短かった。
「新入生の諸君、本校への入学、心から歓迎する。我らの学舎の校訓は『競争』だ。是非互いの能力を伸ばし、競い合って欲しい。以上だ」
終わり。
短過ぎて、みんなが拍手し始めたタイミングで話が終わった事を脳が知覚したよ。
いや、何故だか分からないけど、異世界って感じがするよね、うん。僕の昔の学校の校長達に見せて欲しいよ本当に。何をとは言わないけど。
さて、場所は変わり、ここは30組のクラスルーム。
入学式に出席する前に、各々の所属クラスが書かれた貼り紙を見て、驚いた。
なんと、僕とタクトとフィナーラとラントカイ、全員が30組所属だった。
こんな偶然有り得る?
確率としては、30の4乗分の1?……有り得ないね。
そんな疑問を抱きながら入学式を終えて、クラスルームに行くと、自然と理解させられた。
――既にスキルを持っている子供だけ集まっている。
30組は、どうやらスキル持ちの子供の集団らしい。
学校側が隔離したくなる理由は、分からなくもない。
スキルを持って生まれた子供、所謂特技子は100人の中で1人居れば良いぐらいの確率だし、後天的にスキルを獲得するとなると、小学1年生は時期が些か早い。
多くの人達は、大体10歳前後でスキルが芽生えるらしい。特技子を除いて、それ以前にスキルを獲得する子供は滅多にいないと言われている。
……ただ、タクトとフィナーラには発現してしまったんだよね、城作ってたら。
難しい事に挑戦する事は、スキル獲得への第一歩なのかもしれない。byシアト
まぁ、それを踏まえて、隔離する理由として考えられるのは、主に授業面での事だと思う。
これからこの学校で、スキルを持たない子供達は、高学年になってスキルを手に入れた時に備えて、スキルについての知識や注意点を3年程かけて学んでいくだろう。
でも、既にスキルを持っている子供に、余分に3年を使わせる必要は無い。確かにスキルについて学ぶ事は必要だが、それよりもスキル強化に重点を置いた授業が展開されるべきだろう。
そう考えると、スキル持ちが数多のクラスに散らばっていると、都合が悪いに決まってるよね。
クラスルームに入ると、10人程居た子供達の中で、身形の良い2人が目に入った。
2人の内1人は、先程スピーチをしていたプライくん。
もう1人は知らないけど、おそらく領主の娘さんだろうね。銀色の髪が非常に映えていて、綺麗。
身分高めの2人もこのクラスに居ると言う事は、何かスキルを持っていると言う事だろうね。
両者とも教室に入ってきた僕をじっと見ている。
何か見られる理由でも有るのかな?角とかは見えてないと思うし、桃色の髪も……珍しいっちゃ珍しいけど、このクラスの中だとそれも無い。やっぱりこのオッドアイかな?ふっふっふっ、君達見る目が有るじゃないか。
「……シアト、ほら突っ立ってないで行くよ」
「う、うん」
ラントカイに急かされてしまった。
最近、ラントカイは僕の扱いが分かってきたのか、少し雑になってきた気がする。まだ小学生1年生なのに、高校生ぐらいになったら、どうなっちゃうの?
着席し、暫く待つと先生らしき人が入ってきた。
「おおぅ、皆席に着いてる。じゃあ始める。これから皆の授業を担当する、アニマーテと言う。宜しく」
アニマーテ先生だそうだ。
少し小柄でおっとりとした女の先生。表情はあまり変わってないけど、口調からなんとなく、「テンション高いんだろうな」と感じられる。
多分、良い先生だ!
「早速、皆には自己紹介してもらう。その場でも良いから順番に言っていく。最初は一番前のシアトに頼む」
一番前且つ窓際の席だったから予感はしてた。してたんだけとね、まさか本当にそうなるとは思ってなかったよ。
「先生」
「んぅ?」
「前でやっても良いですか?」
「うむ」
さて、やってやりますか!
……それにしても僕の後ろの席の子が凄い不安そうにこちらを見つめてきてるなぁ〜
ニコッ
大丈夫、しっかりやってくるから!!
教壇の上に登って、みんなの方を向いてみる。
こうして見ると、20人しか居ないのに、やっぱり髪の毛の色がカラフルでバリエーション豊富。
奇抜な髪色がスキルの存在を示していると言う僕の経験的持論はおそらく正解だろうね。
一旦深呼吸。
大丈夫、これまで練習してきた成果を出すだけ。
全ては楽しい学校生活スタートダッシュを決める為!
見せてやりますか!地球由来の黙劇ってやつを!!
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