はじめてのおでかけ
連投?
……書けた物から出していきたいなぁ〜
◇◇◇―――――――――――――
いつも通りの日々。
いつも通りだから、やる事は――読書読書読書……
朝起きて読書、ご飯を食べたら読書、スキルの練習したら読書、寝る前に読み聞かせ。
お陰で大体50冊読み終わる事ができた。
最初の消化ペースは速かったんだよ。
何故か
勿論、比較的薄めなのを選んで読んだからね。
でもそれは30冊ぐらいで尽きてしまったんだ。
だからこうして泣く泣く、中くらいの厚さの本を読んでいるんだよ……
「う〜ん、最近シアト、家で本読む事しかしてないし、もう1年以上経つし……シアト、」
「ん?なに、おかあさん」
貴女がそれを言いますか?
「外に散歩しに出かけよっか!」
お、やったよ!遂に外出だぁ!
あれ?思えば、外出禁止もされてないのに、何で1年間もずっと家に居たのだろうか。
あ、僕、赤ちゃんだった。
◇◇◇―――――――――――――
隣人の家の前
庫出ししたばかりのベビーカーに乗って、やって来たのは隣人宅。
「はーい。って貴女ですか。でもシアトちゃんを外で見るのは初めてですね」
「ランさん、こんにちは」
「こんにちはー」
この人はランさん。病院に居た時にお母さんと話していた謎の人物その人。
「ラン」が愛称なのは知ってるんだけど、本当の名前は聞いた事無くて、お母さんは「ラン」としか言わないから、そう呼んでる。
「あんまりシアトを引き籠らせるのも悪いと思って、今日は公園まで行く事にしたわ。ランも一緒に来ない?」
「丁度暇でしたし、行きます。と言うか、シアトちゃんは、1年間も家に閉じ込められてたんですか?貴女はもっと母親を学ぶべきですね」
相変わらず、ランさんは、何処か抜けている所の有るお母さんに対してキッパリと物事を言うよね。正直ありがたい。
「う、うぅ、ごめんなさい、シアト。1年間も外に出さなかったなんて……」
「だいじょぶ、すきるもつよくなったし」
僕としては、全く問題無いからね。
「はぁ。それで、今日は一応見張りって事で良いんですよね?どれくらい戻りましたか?」
「体感2割ぐらいかしら?ちょっとずつ戻ってきてるわ」
お母さんとランさんは少し声を潜めて、話を始めてしまった。薄ら聞こえるけど、何の話だろう?
「おかあさん」
「ん?あ、2人で話し込んじゃってごめんね。公園行こっか!」
「……うん」
聞きそびれてしまったけど、また後で聞けばいっか。
◇◇◇◆◆◆◆◆◆―――――――
キマエ公園
キマエ公園は、少しだけ大きい公園で、シーソーや滑り台、ブランコ、名前知らないロデオのやつ等々、色々な遊具が揃っている。
3、4才ぐらいの子供達が遊んでいる様子が、凄く楽しそうに見えるのは、精神も身体に合わせて縮んできたから?
「シアト〜、ほら!砂場行くよ!」
僕はベビーカーに乗っているので、羨望虚しく、されるがまま、砂場に向かって旋回。
おや?どうやら先客が居るみたい。
「こんにちは〜、オーテセトさん。病院以来ですね」
「あ、チェアさん、こんにちは。そちらがシアトちゃんですよね。こちらの方は?」
「初めまして、ランガイドと言います。チェアさ…チェアの友達みたいな者です」
オーテセトさんと言うのか。
「はじめまして」
「初めまして、シアトちゃん。ウチのタクトと同い年だから、これからもよろしくね」
そう言ったオーテセトさんの振り向いた視線の先に、砂場の盛られた山に隠れた赤ちゃんが1人。
タクトくんと言うのか。挨拶してみよ。
「こんにちは!」
「……こんにちは」
うん、おとなしい男の子だ。
「いっしょにあそんでいい?」
「……うん」
タクトくんはじっとこちらを覗いて応えてくれる。
僕の容姿をじっと観察するなんて、将来、彼は立派な厨二病患者になるだろうね。
◇◇◇◇◇◆◆◆◆―――――――
シアトとタクトくんは砂場で一緒に城を作り始めた。
良かった、シアトに同い年の友達ができて。
あ、シアトの尻尾が上に上がってる!可愛い!
これを他の人と共有できないのが残念だわ。
「ふふ、あの2人、仲良くやっていけそうね」
「そうですねぇ。それにしてもシアトちゃんて、すごく元気ですよね?本当にタクトと同じ1才ですか?」
「え?そんなに元気なんですか?私、シアトが初めて見る赤ちゃんだったので、全く知識が無くて……」
「はい。今まで見た事が有る1才の中で一番活発な子だと思います」
前から賢いとは思ってたんだけど、身体能力まで?
シアトの麒麟児っぷりには驚かされてばかりだわ……
まぁ、シアトは麒麟じゃなくて、龍人と鬼の子だけど。
シアトは遂に城を作り終えたみたい。
そりゃあ、シアトのスキルなら簡単に作れるわよね。
……持ってきたスコップとバケツ、シアトは忘れてるけど、まぁ、いっか。
本当に、本当に、ずっとこんな日々が続いてほしい。
シアトには、幸せになってほしい。
だから保険として、一刻も早く、力を取り戻さないと。
赤ん坊時代終わり