第五話~後編~
第五話 後編⸜(๑⃙⃘'ᵕ'๑⃙⃘)⸝⋆︎*
ソフィアが12歳の夏のこと、王国では、原因不明の伝染病と思われる病が急拡大していた。発症した症状としては、嘔吐と下痢が主であるが、発症者は日ごとに増え、また死者も出始めていた。
最初は1日30人ほどの感染の報告から始まり、1週間で1日1000人を超すまでになっている。
厄介なのが、原因不明という点だ。人から人にうつる伝染病の可能性も捨てきれない。
役人たちは必死に調査を行ったが、ある者は食材に問題があると言い、ある者は空気に問題があると言った。さらにまたある者は動物から病がうつされたと言う。
病を患った者に聞き取り調査などを行うもこれといった原因が特定できず、調査は難航していた。
“原因が特定できない病とは、何かの祟りではないか”
“これからもっと不吉なことが起こる予兆では”
“隣国が我が国を侵略するためにウイルスをばら撒いたのでは?”
臣下の間でも、噂話がまことしやかに囁かれていた。
建国以来の危機に国王も側近も頭を抱えていた。
最初の感染報告から2週間が経過した頃、
国王のヨーゼフは朝から晩まで、過去に似た症例がないか文献を読みあさっていた。疲労の蓄積もピークに近づいて来たある日、突然宰相から謁見の申し出があった。
「グレン、珍しいな。何かあったのか?」
「はい、実はソフィアから陛下への書状を預かって参りました。少しでもお役に立てばとソフィアは申しておりました。こちらをご覧頂けますでしょうか。」
ヨーゼフは、ソフィアからの書状を見た。
そこには、簡単な挨拶と今回の病の発生源について、また症状を改善する方法について記されていた。
王国の太陽、国王陛下にご挨拶申し上げます。
この度、王国に深刻な被害をもたらしている病について、“水の汚染”が原因であると考えられます。
病の発症している地域の共通点は、王都を上流とした水路の延長上にあるということです。
民は、その水路に繋がる川の水を飲み水として生活しております。その飲み水が下水等で汚染されたことにより今回の病を引き起こしているのです。
水路の延長上の地域以外でも、病人が確認されておりましたら、それは仕事や旅などでその地を訪れた者ではないかと推察されます。
また、帝国の書物で“コレラ”という病があると書かれた書物を読んだことがあるのですが、民の症状が酷似しております。
病への対処法と対策についての記載もありました。王城の書庫にあった書物だったと記憶しております。お役に立てれば幸いです。陛下もどうぞお身体をお大事に。
ソフィア・サンセット
「グレン、君がソフィアの手紙を持ってきたということは、書かれている内容の裏どりは終わっているということだな?」
「はい。左様でございます。」
「書物はあるか?」
「はい、書庫より持って参りました。」
グレンがヨーゼフに差し出したのは帝国語の古語で書かれた書物であった。
「…これをソフィアは読めるのか?!」
「はい。私も始めは驚いたのですが…」
2人が驚くのも無理はなかった。すでに使われなくなった古語であり、12歳の女の子が読めるレベルの本ではなかったからだ。
「ソフィアにこの国は救われることになるな。女子に生まれたことが実に惜しい。男子に生まれたならば、王家に養子に迎え王の座を継がせても良いと思えるほど、素晴らしい令嬢だ。」
「過分なお言葉、恐れ入ります。」
国王はこの面会の後、すぐに行動に移した。
最大で1日3000人ほどの感染者が発生していたが、対策を講じたことにより、感染者は減少に転じ、それから2ヶ月後、国王はウイルスの終息宣言を出した。
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