第五話~中編~
第五話⸜(๑⃙⃘'ᵕ'๑⃙⃘)⸝⋆︎*
ソフィアが10歳になった頃の事。
ソフィアは国王一家との茶会に招かれていた。
たまたま、王太子は都合がつかず同席は出来なかったが、ソフィアは国王と王妃とサロンで近況報告を行なっていた。談笑している最中に、ふと国王は、季節柄頭を抱えるある問題について、賢いソフィアであれば何か思いつくことがあることがあるかもしれないと思い問いかけてみた。ほんの軽い気持ちで。
「ソフィア、この季節王国のある地域では雨が大量に降ることは知ってるかい?」
「はい、西部の王室の直轄領ですね。存じております。」
「一部の集落では大雨が降り、川が氾濫するのだ。川が氾濫すると、その周辺に住む者たちの家が流され、作物がダメになる。ただ、太陽の光と水に恵まれた土地であるため、氾濫が起きなければ作物や果物なども豊かに育つとても良い土地なのだ。」
「はい。その通りでございます。」
「毎年雨の季節になると、例年は袋に入れた土を川の周囲に置いて対策をしているんだ。ただ大雨が降ると崩れてしまい、水を塞ぐこれといった手立てがない状況だ。」
「なるほど…」
「水を防ぎ、民と民の生活を守る方法を考えたいのだが
、この話を聞いて何か思いついたことがあれば教えてくれないか?」
「……」
しばらく考え込むソフィアを見て国王は、10歳の女の子には難しすぎる質問をしてしまったかもしれないと思った。話題を変えようかと口を開きかけたところ、ソフィアが声を出した。
「恐れながら申し上げます。」
「うむ」
「その地域の詳しい地図を見ることはできますか?特に地形と川の形がわかる物が有れば嬉しいのですが。」
「地図か…侍従長、西部の地図を持ってこい。」
「かしこまりました。」
侍従長が地図を持ってくると、ソフィアは真剣に地図を見ている。地図であれば幾度となく国王自身も見たが解決につながりそうな手がかりはなかった。
数分考えた後ソフィアが驚くべき提案をした。
「川の幅を広げるというのはいかがでしょうか?」
「何?」これまでに一度も聞いたことのない策であった。
「川の幅を広げ、川の流れを緩やかにするのです。川幅が狭く水量が多いと、どうしても川は溢れます。周りに土を積んだとしても、土は水を吸い崩れてしますのです。地図を見るとちょうど集落の上流の川は曲がりくねっています。曲がりくねった川では、水が川岸にぶつかり流れにくくなるのです。その川を出来るだけまっすぐになるよう川の幅を広げ整備を行うのです。」
「…」
国王であるヨーゼフは、ソフィアの言っていることが一度聞いただけで理解できず、言葉が出てこない。
ソフィアは何か察したのか、ニコッと笑って言った。
「よろしければ再現いたします。1時間ほどお時間をいただけますか?ここに持ち込むと部屋が汚れてしまうため、王城の庭の一角を借り再現したいのです。人手もお借りしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「侍従長、全面的に協力するように。」
「かしこまりました。」
一時間後、準備ができたとの報告があり外へ出ると、土で川の流れが再現されていた。
実際にソフィアが水を流して説明をする。
「こちらが現在の川の流れを模したものでございます。これに水を流すと、曲がりくねっているところは水の流れが遅く、水の量が増えるとすぐに溢れてしまいます。今氾濫が起きているのは、この川の形が原因なのです。」
「なるほど…」
「川の形を広げ出来るだけ真っ直ぐにしたものがこちらでございます。」
「…」
「水を流しても、岸にぶつかることなく真っ直ぐに流れるため、流れる水の量を増やしたとしても、先ほどのように溢れることはありません。」
「…」
国王は言葉が出てこなかった。
重臣と議論するも策が見つからず、先の国王の時代からずっと悩まされていたことに対して、10歳の女の子が解決策を提案してきたのだ。それも最善と思われる策を。
それからの国王の行動は早かった。
国王はソフィアの意見を取り入れ、川の整備を行った。
効果は抜群だった。
その年から川が氾濫することがなくなったのだ。
民は役人からの話で、次期王太子妃の発案により川が整備されたことを知った。これまで雨に財産を流され、作物を流され、涙を流しながら、必死に土地を守ってきた民は、こんなに素晴らしい王太子妃様をお迎えするのであれば、この国は安泰だと誰もが思った。
その後もソフィアが国の民を救う出来事が起こる。
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