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戦後

内府ではありません

 「——というわけで、現場のミナさんと中継が繋がっていま〜す。ミナさ〜ん?」


 画面が切り替わる。画面にはタロ・ジロの墓標と、人間が一人。背後には緑深い林が広がっている。人間は半袖であるから、夏のようだ。タロの赤い墓標とジロの白い墓標が夏の日差しを浴びて凛然と輝いている。


「は〜い、ミナで〜す。今日はタロとジロの墓標の前に来ています。美味しそうですね〜!」


 人間、タロの墓標に飛びかかり、墓を抱きかかえる。まるで蔦のように深く絡み合う。そして舌が伸びて、墓標を舐め回す。前後左右、徹底的に蠢いていく。


「う〜ん、あま〜い! とっても濃厚で味わい深いです。口の中にアザラシの甘みがふわっと花咲く感じ〜。かわいいですね〜!」


 ドッ。スタジオ、爆笑。


「ミナさ〜ん、もういいですよ。次行ってくださいね〜、次」


「は〜い」


 人間はタロの墓標から舌を放す。全面にねっとりとした唾液が見える。光を浴びて乱反射する。スタジオ、クスクス。


「え〜。こわ〜い。」


 即座にジロの墓標に絡み合う。手を伸ばした途端、墓標にのめり込む。同様に足も。手足が墓標と一体化する。舌もひっつく。人間、感涙。


「え〜、しょっぱ〜い。涙の味〜。しみじみ〜。」


 一呼吸置く。スタジオ、膨らむ。


「私、嫌いです〜」


 スタジオ、何人か破裂。内臓、てらてらと輝く。


「ミナさん、好き嫌いはダメですよ!」


 口から頭蓋。


「それでは、現場からミナさんでした〜」


 人間、墓標に頭まで埋めている。スタジオ、血で湧き上がる。周囲に洪水警報。


 二つの墓標は溶けてしまっている。焼夷弾の音がどこからともなく響き渡る。


 林、赤く染まる。蝋燭が挨拶している。


「でした〜」


 暗転。


 オリオンは冷たく静かに見守っていた。

良い子は、真似しないでネ!

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