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真夏の雪だるま

作者: 焼き牡蠣


ぼくは雪国で育った。

田舎で人も少なく、

年が近いのは僕と同級生の女の子のふたりだけということもあって

いつもいっしょだった。

走り回って、しゃべって、けんかして、川で泳いで、雪で遊んで・・・

そんな日常に大きな変化が訪れた。


「あのね、わたし来月引っ越すことになったんだ

 すごく遠いところなの。」 

さらりと彼女は告げた。

「向こうは暖かくて全然雪ふらないんだって

 雪がない冬ってどんな感じかな

 想像もつかないけど、なんかさみしい気がする 

 だからあと一ヶ月、たっくさん雪で遊ぼう!」


悲しむ暇もなく外へ連れ出された。

雪合戦 雪だるま かまくら

毎年やってた当たり前の遊びは

とても楽しくて、大切なものになった。


そんな時間はあっという間に過ぎ、引っ越しの日

「ずっといっしょにいて、ほんとに楽しかったよ。

 夏休みに来るから、いっぱい遊ぼうね!またね!」

いつもと変わらない笑顔で去って行った。


数日がたち、だんだん小さくなっていく雪だるまを眺めていると

あの娘との思い出までなくなっていくようでさみしかった。


来るのを楽しみに待っていたけど

夏休みにも冬休みにも彼女は遊びに来れなかった。

今年の夏休みこそと期待していたけど、また行けないと連絡があった。

仕方のないことだけど、つらい。

いつ会えるんだろう?

こうしているうちにぼくのことも忘れてしまうんじゃないか?

雪だるまがとけたときに、ぼくたちのつながりも消えてしまったんじゃないか?

そんな不安を感じていた8月、ぼく宛の荷物が届いた。


「久しぶりー元気してる? こっちは暑くてたいへん!

 冬もさ~ほんとに雪ふらないんだよ。」 

変わらないノリの手紙と

白くて丸い、綿とフェルトでできたぬいぐるみ

「雪がなくてもつくれるんだよ。すごいでしょ!」

得意げな様子が目に浮かぶ。

「なかなか遊びに行けないけど、ぜったい行くからそれまで待ってて。

 この子と約束ね!」


会えなくても、遊べなくても 

思い出はなくならない、お互いを忘れないと伝えてくれた。

それは溶けない、なくならない


真夏の雪だるま。

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